artscapeレビュー
カタログ&ブックス | 2023年11月15日号[近刊編]
2023年11月15日号
展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
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革命と住宅
革命は「家」を否定する──社会主義の理念を実体化すべく生み出された、ソビエト/ロシアの建築の数々。しかしその実態は当初の計画からかけ離れ、狭小で劣悪な住宅環境と、建てられることのない紙上の「亡霊建築」に分離していく。理想と現実に引き裂かれた建築から見える、大国ロシアが抱える矛盾とはなにか。そしてそこで生きる人びとの姿はどのようなものだったのか。
地衣類、ミニマルな抵抗
「地衣類は科学者のみならず、「共生」──ないし「寄生」──について考えるためのさまざまなきっかけを思想家たちに提供してきた。本書はそうした過去の言説にも立脚しつつ、人新世の時代における共生の問題をあらためて俎上に載せた、詩情豊かなエッセイである。」(星野太)
関連レビュー
Vincent Zonca, Lichens. Pour une résistance minimale |星野太:artscapeレビュー(2021年10月15日号)
ユニバーサル・ミュージアムへのいざない──思考と実践のフィールドから
近年、各地のミュージアムで「さわる鑑賞プログラム」が実施されている。それは、ミュージアムを「目で見る」施設から、「全身の感覚でみる」体験の場に変えていく試みでもある。「ユニバーサル」とは、単なる障害者支援ではない。「健常/障害」という二項対立の垣根を取り払い、「誰もが楽しめる」ユニバーサル・ミュージアムを創ることで、触感豊かな共生社会の未来像を提示できるだろう。
バロック美術──西洋文化の爛熟
西洋文化の頂点、バロック様式。17世紀を中心に花開いたバロックの建築・彫刻・絵画は、ルネサンス期の端正で調和のとれた古典主義に対し、豪華絢爛で躍動感あふれる表現を特徴とする。本書は、カラヴァッジョ、ルーベンス、ベルニーニ、ベラスケス、レンブラント、フェルメールらの代表的名作を網羅。美術史上の位置づけ、聖俗の権力がせめぎ合う時代背景など、バロック美術の本質を読み解く。
New Habitations from North to East: 11 years after 3.11
アーティストで詩人の瀬尾夏美は、東日本大震災以降、岩手県陸前高田市をはじめ、近年増え続ける自然災害の被災地を訪ね、土地の人びとのことばと風景の記録を考えながら絵を描き文章を書いています。2022年、彼女はこれまで飛び石的に訪れていた被災各地を歩き直した軌跡を一冊の本にまとめることにしました。そして、写真家のトヤマタクロウが、2022年秋から2023年春にかけて岩手県北部から茨城県中部までを点と点を結ぶように辿り、各地の今の風景を収めました。
ここちよい近さがまちを変える──ケアとデジタルによる近接のデザイン
「Livable proximity=ここちよい近さ(近接)」。イタリアのデザイン研究者でありソーシャルイノベーションとサスティナビリティデザインに関する第一人者エツィオ・マンズィーニが著してくれるこの視点は、国のボーダーを超えてこれからの時代の“まち、地域、都市、ケア、コミュニティ、デジタル、経済、デザイン”への見方を変えてゆくと考えてやみません。本書は彼が記した「Livable proximity -- ideas for the city that cares」の翻訳書として、ポストコロナにこそ意味を放つこの視点・考え方・アプローチを我が国に広く伝えることを目的に、日本版オリジナルコンテンツとして当文脈における意義深い日本の事例や解説も追加されています。
沖縄画──8人の美術家による、現代沖縄の美術の諸相
沖縄という地縁だけを手掛かりに、ユニークな作品を展開する新進気鋭の美術家8名を紹介した展覧会「沖縄画―8人の美術家による、現代沖縄の美術の諸相」。同展の出品作品のほか、土屋誠一らによる「沖縄画」を巡る論考や、「東北画は可能か?」でも知られる三瀬夏之介を招いたシンポジウムを収録した記録集。
小杉武久 音の世界 新しい夏1996
今回の書籍は、芦屋市立美術博物館で1996年5月18日~7月7日に開催された「小杉武久 音の世界 新しい夏」展の図録の改訂版として出版されました。A6版 変形だった判型をB5版にし、新たに英文翻訳、図版、注釈を加えました。
スターハウス 戦後昭和の団地遺産
三角形の階段室にY字型平面をもつユニークな星形住宅(スターハウス)。板状住棟が並ぶ団地景観に変化を与え、戦後団地を象徴する建物として、1970年半ばまで日本各地で建設された建築遺産の記録。
フランク・ロイド・ライト──世界を結ぶ建築
帝国ホテル二代目本館100周年記念展覧会「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」展公式カタログ。華麗な装飾、自然との調和、独自の存在感を放つ造形、素材と構法の革新、未来的なヴィジョンの数々。近年のF.L.ライトの調査研究の成果を基にした、四半世紀ぶりに日本で開催される待望の展覧会。
モニュメント原論──思想的課題としての彫刻
彫刻を「思想的課題」と自らに任じ、日本近現代の政治・歴史・教育・芸術そしてジェンダーを再審に付す。問い質されるは、社会の「共同想起」としての彫像。公共空間に立つ為政者の銅像が、なぜ革命・政変時に民衆の手で引き倒される無残な運命に出遭うのか――。画期的かつ根源的な思索の書。
この国(近代日本)の芸術──〈日本美術史〉を脱帝国主義化する
気鋭の作家/キュレーター/研究者22人よる論考とインタビューによって、帝国主義が隠蔽してきた〈芸術〉、そして〈日本美術史〉なるフィクションを解体=再編し、読みかえを迫る出色の論集。
とるにたらない美術──ラッセン、心霊写真、レンダリング・ポルノ
誰もが知っているにもかかわらず、「とるにたらない」と決めつけられることによって、誰もが直視してこなかった美術の死角。それを敢えて見つめることによって、盲点の側から「美術」の自画像を浮かび上がらせることができるのではないか──(「はじめに」より)
2023/11/14(火)(artscape編集部)