2023年09月15日号
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artscapeレビュー

artscape編集部のレビュー/プレビュー

カタログ&ブックス | 2021年1月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます





『余の光/Light of My World』展覧会カタログ

発行者:堤拓也
編集:堤拓也、慶野結香、平野 春菜
執筆者:堤拓也、慶野結香、石黒健一、小笠原周、小宮太郎、木村舜、本田大起、村上美樹、若林亮、耕三寺功三、𠮷田勝信
グラフィックデザイン:𠮷田勝信
発行日:2021年10月15日
サイズ:29.7x 32cm、26ページ

「京都府域展開アートフェスティバル ALTERNATIVE KYOTO in 福知山」の一環として、2021年10月8日〜11月7日まで旧銀鈴ビルにて開催された展覧会「余の光/Light of My World」の公式カタログです。


イメージかモノか 日本現代美術のアポリア

著者:高島直之
発行:武蔵野美術大学出版局
発行日:2021年11月5日
サイズ:A5判、256ページ

1960年代の「反芸術」から戦後日本美術の重要な美術動向である「もの派」へ、そして、ハイレッド・センターによる山手線事件、赤瀬川原平の作品を発端に社会現象にまでなった模型千円札裁判。1960年代から70年にかけての日本現代美術の事象を、当時の批評家や作家の実践を通して読み解く。イメージかモノかという困難で切実な問題に、当時の美術の最前線にいた作家や批評家はどう対峙したか—。



フェルメールとそのライバルたち 絵画市場と画家の戦略

著者: 小林頼子
発行:KADOKAWA
発行日:2021年11月17日
サイズ:四六判、480ページ

ライバル画家2000人、流通した絵画500万点。 繁栄と恐慌、戦争、感染症──。 不朽の名画を生んだ絵画の黄金時代は、 空前の競争市場〈レッドオーシャン〉だった! 17世紀オランダの絵画市場と 画家の生き残り戦略に迫る、美術史研究の最前線。



ぺらぺらの彫刻

編著:戸田裕介
著者:石崎 尚・伊藤 誠・鞍掛純一・田中修二・戸田裕介・袴田京太朗・藤井 匡・松本 隆・森 啓輔
発行:武蔵野美術大学出版局
発行日:2021年11月30日
サイズ:A5判、320ページ

「構造を被覆する表面によって成立する彫刻の系譜を確認する」という共同研究に、彫刻家、美術史家、学芸員9名が集結。お堅い命題に頭を抱えて議論百出。ついに満場一致で「ぺらぺらの彫刻」として追究開始。道成寺の鐘の内側は、内なのか外なのか? 禅問答に悩むごとく、ある者は触覚から、ある者は空洞から、ある者はピカピカから、ある者は時代の空気から…横山裕一に章扉を描かせ、溢れる彫刻愛は「読む彫刻」を生み出した!


KAZUYO SEJIMA RYUE NISHIZAWA SANAA 1987-2005 Vol. 1 / 2005-2015 Vol. 2 / 2014-2021 Vol. 3

著者:妹島和世、西沢立衛
発行:TOTO出版
発行日:2021年12月
サイズ:A4判変型、672ページ

世界で活躍する建築家、妹島和世、西沢立衛の各個人事務所と、両氏が主宰するSANAAの、1987年から2021年までの活動を年代順に紹介する3巻セットの作品集。建築、都市マスタープラン、家具、プロダクト、書籍に至るまで、その30余年の活動と思考の軌跡を総覧できる。この作品集をひとつの建築と考え、建築設計に近いやり方でつくったという、妹島、西沢のクリエーションへのこだわりが詰まったブックデザインにも注目。




〈問い〉から始めるアート思考

著者:吉井仁実
発行:光文社
発行日:2021年12月15日
サイズ:新書判

古来、アーティストは見えないものを見えるようにするような役割を社会の中で担ってきました。(中略)アーティストたちは、その時代や社会の中で、見たくても見えないものを描き出してきたと言えると私は思っています。(中略)アーティストたちに共通しているのは、未来についての「問い」を私たちに投げかけながら、常識を揺さぶったり、今までにない経験をさせたりするところです。(中略)観賞者がアーティストたちの作り出す未来の可能性を明確に感じることができれば、それはきっとビジネスでも役立つし、これからどうやって生きていくかを考えるときにも役立つはずだと私は思います。

(第一章「アートは未来を提示する」より)


八束はじめインタビュー 建築的思想の遍歴

編著:八束はじめ
発行:鹿島出版会
発行日:2021年12月
サイズ:A5判、168ページ

本書は著者が学生時代から大学を定年退職するまでの活動を振り返ったインタビュー集であり、現代建築の半世紀を語っている。「修業と師事」「設計と批評」「研究と教育」の3部構成で自らの足跡とその時代を振り返る。そこに通底するのは「思想」であり、著者が何を考えてそれが成立しているかを明らかにする。多才なモダニストが語る現代建築の半世紀。



『美学のプラクティス』

著者:星野太
発行:水声社
発行日:2021年12月24日
サイズ:四六判、232ページ

たえず懐疑的な視線にさらされ、「居心地の悪さ」を指摘されてきた学問領域、美学……。「崇高」「関係」「生命」という3つのテーマをめぐって、抽象と具体のあいだで宙吊りにされてきた美学の営為を問い直す、ひとつの実践の記録。美・芸術・感性を越境する批判的思考のきらめきが、いまここに。






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2022/01/14(金)(artscape編集部)

カタログ&ブックス | 2021年12月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
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モダン建築の京都100 展覧会オフィシャルブック

編著:石田潤一郎、前田尚武(京都市京セラ美術館・本展企画者)
発行:Echelle-1
発行日:2021年9月25日
サイズ:A5判、319ページ

2021年9月25日〜2021年12月26日まで京都市京セラ美術館で開催されている展覧会「モダン建築の京都」のオフィシャルブック。



EXPO’70 大阪万博の記憶とアート

編著:橋爪節也、宮久保圭祐
著者:永田靖、岡田加津子、佐谷記世、DIKDIK SAHAHDIKUMULLAH、竹嶋康平、加藤瑞穂、正木喜勝、乾健一、岡上敏彦、長井誠、五月女賢司
発行:大阪大学出版会
発行日:2021年10月25日
サイズ:A4判、120ページ

「人類の進歩と調和」をテーマに開催された1970年大阪万博。今でも入場者の耳によみがえるパビリオンの仕掛ける轟音やイベントの音楽。斬新、奇抜な印象を強く残した建造物、映像や催しの数々のデザインは明らかにこの国の輝かしい未来を人々に印象付けた。その記憶には50年を経て、同じ熱狂を持って語られない記憶も現れて加わり、蘇るアートに見えるもの、万博そのものや、開催地周辺にその後与えた影響など、新たにそそられる興味深さが見いだせる。



近代を彫刻/超克する

著者:小田原のどか
発行:講談社
発行日:2021年10月29日
サイズ:四六判、146ページ

〈思想的課題〉としての彫刻を語りたい。 
街角の彫像から見えてくる、もう一つの日本近現代史、ジェンダーの問題、公共というもの……。 都市に建立され続け、時に破壊され引き倒される中で、彫刻は何を映すのか。
注目の彫刻家・批評家が放つ画期的な論考。



上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー

執筆:池田裕子(京都国立近代美術館学芸課長)、アンネ・カトリン・ロスベルク(MAK─オーストリア応用芸術博物館学芸員)、阿佐美淑子(三菱一号館美術館主任学芸員)、本橋仁(京都国立近代美術館特定研究員)、宮川智美(京都国立近代美術館研究員)
発行:朝日新聞社
デザイン:西岡勉
サイズ:B5判変型、339ページ
発行日:2021年11月15日

世界で初めての、上野リチ・リックスの包括的な回顧展にふさわしい、決定版の図録です。図版は全ページカラーで紹介。作品所蔵先、展覧会開催館の研究者らによる論文も掲載しています。



映像が動き出すとき

著者:トム・ガニング
編訳:長谷正人
訳者:松谷容作、菊池哲彦、三輪健太朗、川﨑佳哉、木原圭翔、増田展大、前川修、望月由紀
発行:みすず書房
発行日:2021年11月16日
サイズ:A5判、368ページ

「アトラクションの映画」の概念で、映画という枠組みを超え映像文化研究に大きなインパクトをもたらした初期映画研究・メディア史研究の泰斗ガニング。その思考はさらに深化して、鮮やかな〈動き〉の視覚文化論を展開し、写真・映画・アニメーションにわたる映像文化圏全体を見晴らす。


ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる? 

編:公益財団法人ポーラ美術振興財団ポーラ美術館
発行:平凡社
発行日:2021年11月26日
サイズ:A4変形判、 216ページ

写真、ガラスの彫刻、ドローイングなど多様なメディアでコンセプチュアルな作品を制作し続けてきたニューヨーク在住のロニ・ホーン。40年の実践を紹介する国内初の展覧会図録。



だれでもデザイン 未来をつくる教室

著者:山中俊治
発行:朝日出版社
発行日:2021年11月27日
サイズ:四六判、360ページ

偶然の出会いを大切に、隣の人の脳みそも借りて。スケッチして、観察して、アイデアを伝え合う。Suicaの改札機、美しい義足。人間と新しい技術の関係を考えつづけてきたデザイナーが中高生に語る、物づくりの根幹とこれから。



Paul Cox Box

著者:ポール・コックス
発行:ブルーシープ
発行日:2021年11月29日
サイズ:A4変形、64ページ

フランス人アーティストのポール・コックス(Paul Cox, 1959-)は、絵画、グラフィックデザイン、舞台美術をはじめ、多くの分野に才能を発揮し、日本でも広告や絵本などの仕事を通して幅広いファンを得ています。『Paul Cox Box』は、今年11月から板橋区立美術館などで開催する展覧会「つくる・つながる・ポール・コックス展」をそのまま持ち帰るコンセプトでつくられた本です。段ボールでできた箱の中には、ポスター、テキスト、ゲーム、写真、さらにはポール手描きのプレゼントが収められ、作家のこれまでと最新作までを、テキストや図版、フランスでの様子、貴重な資料などで伝えます。知的でユーモラスなポールのたくらみが詰まった特別なアートブックです。



建築家・坂倉準三「輝く都市」をめざして

著:松隈洋
発行:青幻舎
発行日:2021年12月3日
サイズ:A5判変型、152ページ

モダニズム建築の巨匠ル・コルビュジエに師事した建築家・坂倉準三。彼の活動を通して、戦後復興の建築・都市の歴史と、髙島屋をはじめとする百貨店建築を通して試みた、建築が人流を都市へと誘導する都市インフラデザインについて紹介する。



危機の時代を生き延びるアートプロジェクト

編著:橋本誠・影山裕樹
著:石神夏希・中嶋希実・はがみちこ・橋爪亜衣子・南裕子・谷津智里
発行:千十一編集室
発行日:2021年12月5日
サイズ:四六判、244ページ

東日本大震災から10年。全国に広がるアートプロジェクトの取り組みから、社会×アートの未来を展望する。災害や感染症、分断や不寛容が広がる中“アートは社会の役に立つ”のか? それとも“今改めて自分を見つめなおすために”アートが必要なのか? 各地の事例から見えてくる、プロセスを重視するアートプロジェクトの可能性。ウェブマガジン「EDIT LOCAL」による、地域と文化について考えるシリーズ「EDIT LOCAL BOOKS」第一弾。



BAUHAUS HUNDRED 1919−2019 バウハウス百年百図譜

著:伊藤俊治
ブックデザイン:松田行正
発行:牛若丸
発行日:2021年12月8日
サイズ:A5判変型、264ページ

美術史家、伊藤俊治が所蔵するバウハウス関連書100 冊の表紙と中頁を掲載。その100 年の歴史を紐解きながら、及ぼした影響について考察した保存版。






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2021/12/14(火)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2021年12月1日号[テーマ:妖怪]

テーマに沿って、アートやデザインにまつわる書籍の購買冊数ランキングをartscape編集部が紹介します。今回のテーマは、豊田市美術館で開催中の「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」にちなんで「妖怪」。このキーワードに関連する、書籍の購買冊数ランキングをお楽しみください。
ハイブリッド型総合書店honto調べ。書籍の詳細情報はhontoサイトより転載。
※本ランキングで紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。

「妖怪」関連書籍 購買冊数トップ10

1位:シネマスクエア vol.128
平野紫耀『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜ファイナル』 北山宏光/橋本良亮/重岡大毅/岸優太 (HINODE MOOK)

編集・発行:日之出出版
発売日:2021年7月1日
サイズ:30cm、114ページ

『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ ファイナル』平野紫耀/河合勇人 監督
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』赤楚衛二
『サマーフィルムにのって』金子大地
ほか掲載


2位:まんが訳 稲生物怪録(ちくま新書)

監修:大塚英志
編集:山本忠宏
発行:筑摩書房
発売日:2021年10月7日
サイズ:18cm、222ページ

絵巻物がまんがで読める! 大好評第二弾は、妖怪ファン垂涎の江戸怪談の名作。化物屋敷で夜な夜な妖怪と遭遇する、平太郎少年の運命は──。木場貴俊解説。
時は江戸、寛延二年。備後国三次の武家の子息で、一六歳の稲生平太郎は、肝試しのため比熊山に入った。その山にある「天狗杉」に触れると、物怪の祟りがあるという。果たして山を下りた平太郎の住む屋敷を、一カ月にわたって様々な怪異が襲う──。じわりと怖い、でもどこかユーモラス。江戸時代に実話として流布し、泉鏡花や水木しげるも愛した怪談「稲生物怪録(いのうもののけろく)」を、まんがで楽しむ。


3位:鳥山石燕 画図百鬼夜行 全画集(角川ソフィア文庫 Kwai books)

著者:鳥山石燕
発行:角川書店
発売日:2005年7月23日
サイズ:15cm、260ページ

かまいたち、火車、姑獲鳥(うぶめ)、ぬらりひょん──。あふれる想像力と類まれなる画力で、さまざまな妖怪の姿を伝えた江戸の絵師・鳥山石燕。その妖怪画集全点を、コンパクトに収録した必見の一冊!



4位:あやしの繪姿 九鬼匡規画集(TH ART SERIES)

著者:九鬼匡規
文:大和愛
発行:アトリエサード
発売日:2020年12月21日
サイズ:21cm、63ページ

妖艶なるファム・ファタールから、コケティッシュな愛らしい少女まで、怪異や妖怪を女性像で描いた初画集。「おさん狐」「飛頭蛮(ろくろくび)」「つらら女」などを収録。



5位:1日3分読むだけで一生語れるモンスター図鑑

著者:山北篤
発行:すばる舎
発売日:2020年10月23日
サイズ:21cm、255ページ

誰もが知っている定番キャラから、各地でひっそりと言い伝えられる妖怪まで、世界中から100体以上のモンスターを集めて図鑑にしました! 雑魚級からラスボス級までの6段階に分けて、十人十色のモンスターを誕生の経緯から生い立ち、その宿命などエピソードを交えて紹介! 全ての冒険を終えたころには、あなたも立派な英雄に!?






6位:武蔵野樹林 vol.7(2021)
大特集 妖怪大戦争ガーディアンズ〜映画の聖地所沢〜(ウォーカームック)

編集・発行:角川文化振興財団
発売日:2021年7月15日
サイズ:28cm、95ページ

旧石器・縄文時代から文化的生活が営まれていた武蔵野の、文化探検から始める生き方マガジン。vol.7は、武蔵野台地が舞台になる2021年8月公開映画「妖怪大戦争ガーディアンズ」を大特集し、その見所等を紹介する。



7位:妖怪草紙 くずし字入門(シリーズ日本人の手習い)

著者:アダム・カバット
発行:柏書房
発売日:2001年7月1日
サイズ:21cm、222ページ

江戸の草双紙に登場する愉快な妖怪たちがナヴィゲーターのユニークなくずし字入門書。著者秘伝の「ステップアップ」で基本文字150を確実に習得。練習問題、コラムも充実。



8位:妖怪萬画 vol.1 妖怪たちの競演

アートディレクション:祖父江慎
発行:青幻舎
発売日:2012年2月
サイズ:15cm、286ページ

「百鬼夜行絵巻」をはじめ、平安時代から明治初期にかけて描かれた妖怪画(絵巻物)を豊富に掲載。大衆性や戯画的表現から、妖怪画の祖型をたどり、その系譜を読み解く。辻惟雄と板倉聖哲の対談も収録。




9位:妖怪

著者:湯本豪一
発行:パイインターナショナル
発売日:2021年7月28日
サイズ:31cm、509ページ

史上初! 妖怪絵を圧巻の拡大図とボリュームでみせる豪華画集
日本ではじめての妖怪専門のミュージアム、湯本豪一記念日本妖怪博物館〈三次もののけミュージアム〉のコレクション60点超を、圧巻のボリュームとディテールで紹介! モノノケを描く絵師たちの技量の極みをご堪能ください。
収録作品例:お化け絵巻 百鬼夜行絵巻 狂歌百鬼夜興 後鳥羽法皇の夢中に現われたる妖怪図 鳴屋図 化物歌合せ絵巻 異形河童図 百鬼図 大石兵六 大津絵狐図 化け狐図絵馬 大津絵源頼光図 虁図 阿磨比古 怪奇伝承図誌 水虎図説 左甚五郎と河童図 病現之図絵巻 幻獣尽くし絵巻 亀女 豊年魚 土州奇獣之図并説 尾州の人面蛇 鵺退治図 和漢百物語 信濃国大鷹退治 土蜘蛛襲来図 相馬旧御所 昔噺舌切雀 新形三十六怪撰おもいつづら 道化百物かたり 神農鬼が島退治絵巻 百物語化絵絵巻 化物づくし絵巻 百物語絵巻 肉筆 怪談模模夢字彙 稲亭物怪録 大時代唐土化物 化物和本草 狐団扇絵 本所七ふしぎ納札 化物の嫁入 百鬼夜行納札 など



10位:和ファンタジーのかわいい女の子が描ける本

著者:キッカイキ
発行:宝島社
発売日:2020年7月14日
サイズ:26cm、143ページ

和ファンタジーというテーマでキャラクターデザインの方法を解説。和風デザインの基礎知識をはじめ、妖怪・行事・道具・地名をモチーフにしたデザインを紹介。表紙イラストのメイキングも掲載する。



10位:妖怪萬画 vol.2 絵師たちの競演

アートディレクション:祖父江慎
発行:青幻舎
発売日:2012年3月29日
サイズ:15cm、245ページ

戯画的表現に富み、諷刺がきいた妖怪画は、江戸時代の大衆に圧倒的な支持を得た。文化が熟爛した江戸中期から激動期の幕末、明治初期まで、葛飾北斎や歌川国芳、河鍋暁斎を筆頭に人気絵師が描いた妖怪画約150点を収録する。



10位:ギルガメシュ王の物語 新装版

画:司 修
翻訳:月本昭男
発行:ぷねうま舎
発売日:2019年8月6日
サイズ:17cm、278ページ

ギルガメシュ王と荒野のエンキドゥ、森の守り手・妖怪フンババ退治、女神イシュタルの誘惑、エンキドゥの死、大洪水と生命の草、地獄めぐり…。楔形文字で粘土板に刻まれた叙事詩の原文を生かした邦訳。





artscape編集部のランキング解説

あいちトリエンナーレ2019での《旅館アポリア》や、YCAM[山口情報芸術センター]とKYOTO EXPERIMENTで今年展示された《ヴォイス・オブ・ヴォイド─虚無の声》が記憶に新しい、シンガポール出身の作家ホー・ツーニェンによる個展「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」が、2022年1月23日(日)まで豊田市美術館で開催中です。展示タイトルにもなっている「百鬼夜行」のとおり、今作中で登場するのは闇を練り歩く奇怪かつ滑稽な100の妖怪たち。「ゲゲゲの鬼太郎」に始まり、フィクションでもたびたび描かれる「妖怪」「物の怪」は、日本人にとってはすっかり身近でユーモラスに感じられる存在のようですが、「芸術・アート」ジャンルの書籍ではどのようなものが人気を集めているのでしょうか。
ランキングを見ると、今年の夏に公開された映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』を特集する雑誌・ムック(1位、6位)とともに、「妖怪が(絵として/物語のなかで)どのように描かれてきたか」を知る一端となる書籍が大半を占めていました。新書・文庫判といったコンパクトなサイズに妖怪の図版がぎゅっと詰まっている本が複数見受けられたのも(2、3、8、10位)、ランキングとしては特徴的です。
古来から《百鬼夜行絵巻》《付喪神絵巻》といった絵巻物に登場するイメージの強い妖怪ですが、2位の『まんが訳 稲生物怪録』はなんと、江戸時代中期に実在した武士の子息・稲生正令(幼名:平太郎)が16歳のときに体験したさまざまな妖怪との遭遇を描いた絵巻物《稲生物怪録(いのうもののけろく)》を、サンプリング/カットアップ/リミックスするかたちで、漫画として再構築。コミカライズではなく、高解像度で再撮影した絵巻物をそのまま使うアイデアと、一枚絵として描かれていたものとは思えないコマ割りの演出力に驚かされます。《稲生物怪録》そのものの面白さだけでなく、漫画文化が培ってきた凄みまで感じられるおすすめの一冊。
妖怪が登場する「草双紙(くさぞうし/江戸時代に出版された絵入りの版本)」を事例としながら、現代の日本人にとっても判読の難しい「くずし字」の読み方を学ぶことができる『妖怪草紙 くずし字入門』(7位)も、非常にユニークな一冊。アメリカ人の日本文学研究者である著者アダム・カバット氏が妖怪草紙に触れ、「絵の周りに書かれている文章には、もっと面白いストーリーが書かれているに違いない」とくずし字を習得する過程での発見や想いを綴ったコラムも面白く、時代とともに大きなうねりを持って変化する日本語についても改めて考えさせられます。
『鳥山石燕 画図百鬼夜行 全画集』(3位)や『妖怪萬画』(8、10位)などを眺めると、「妖怪草紙」とひと口に言っても、たくさんの絵師がそのモチーフに向かい、多種多様なスタイルやバリエーションがあることに気付かされますが、その再解釈の営みは現代まで連綿と続いており(4、10位)。この先の未来にも描かれるであろう妖怪像が楽しみになるランキングでした。




ハイブリッド型総合書店honto(hontoサイトの本の通販ストア・電子書籍ストアと、丸善、ジュンク堂書店、文教堂など)でジャンル「芸術・アート」キーワード「妖怪」の書籍の全性別・全年齢における購買冊数のランキングを抽出。〈集計期間:2020年11月24日~2021年11月23日〉

2021/12/01(水)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2021年11月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
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ベンヤミン メディア・芸術論集

著者:ヴァルター・ベンヤミン
訳者:山口裕之
発行:河出書房新社
発行日:2021年11月8日
サイズ:15cm、416ページ

いまなお新しい思想家の芸術・メディア論の重要テクストを第一人者が新訳。映画論、写真論、シュルレアリスム論等を網羅。すべての批評の始まりはここにある。「ベンヤミン・アンソロジー」に続く決定版。(河出文庫)

KUSAMA

著者:エリーザ・マチェッラーリ
訳者:栗原俊秀
発行:花伝社
発行日:2021年10月25日
サイズ:A5判、144ページ

比類なき成功を収めた「女性芸術家」、その光と影──前衛の女王・草間彌生の「闘い」を鮮やかに描いたイタリア発のグラフィック・ノベル

千夜千冊エディション 全然アート(角川ソフィア文庫)

著者:松岡正剛
発行:KADOKAWA
発行日:2021年10月21日
サイズ:文庫判、560ページ

アルタミラの洞窟画、ルネサンスの遠近法、印象派の革命、そしてコンセプチュアルアートへ。絵画も日本画も現代アートも、松岡正剛が内外のアートを巡り惚れこんだ作品をすべて詰め込んだ特別編。図版多数。

映画論の冒険者たち

編集:堀潤之、木原圭翔
発行:東京大学出版会
発行日:2021年10月28日
サイズ:A5判、312ページ

映画についての百花斉放百家争鳴.クラカウアー,バザン,蓮實,メッツ,マルヴィ,ボードウェル,ガニング、カヴェル,ドゥルーズ, ランシエール…….彼ら/彼女らが映画に関して紡いだ思考のエッセンスを浮かび上がらせる.第一線で活躍する映画研究者が執筆する映画論を知り学ぶための最強テキスト



生きていること 動く、知る、記述する

著者:ティム・インゴルド
訳者:柴田崇、野中哲士、佐古仁志、原島大輔、青山慶、柳澤田実
発行:左右社
発行日:2021年11月10日
サイズ:四六判、604ページ

《人類が生きることを取り戻すために》ひとが生きるということ、それはこの世界の終わりなき流動のなかに身を置き、世界を変えながら自らも変わり続けてゆくことだ。芸術・哲学・建築などのジャンルと人類学の交わるところに、未知の学問領域を切り拓いてきたインゴルド。その探究を凝縮する主著、待望の邦訳!



音と耳から考える 歴史・身体・テクノロジー

編著:細川周平
発行:アルテスパブリッシング
発行日:2021年10月25日
サイズ:A5判、640ページ

音楽学者・細川周平が国際日本文化研究センターで主宰した研究プロジェクトの成果を刊行。「音楽」にとどまらず、自然や人、機械などが発するありとあらゆる音を対象に、音を受ける聴覚器官(耳)から発想しながら、音と耳の文化・歴史を問い直す意欲的な論集です。


彫刻の歴史

著者:アントニー・ゴームリー マーティン・ゲイフォード
訳者:石崎尚、林卓行
発行:東京書籍
発行日:2021年10月22日
サイズ:A4変形、392ページ

彫刻界の巨人アントニー・ゴームリーと気鋭の美術批評家マーティン・ゲイフォードが、ストーン・ヘンジから鎌倉大仏まで、ラオコーンからダミアン・ハーストまで、古今東西の「彫刻」の流れを、18のテーマ・論点で語り尽くす。


TOKAS-EMERGING 2021

編集:トーキョーアーツアンドスペース
翻訳:アンドレアス・シュトゥールマン
参加アーティスト:水上愛美、宮川知宙、都賀めぐみ、久木田 茜、GengoRaw (石橋友也+新倉健人)、辻󠄀 梨絵子
発行:公益財団法人 東京都歴史文化財団 東京現代美術館トーキョーアーツアンドスペース
発行日:2021年10月30日
サイズ:A5判

2021年4月3日〜5月5日(第一期)、5月15日〜6月13日(第二期)まで、トーキョーアーツアンドスペース本郷で開催されていたTOKAS-Emerging 2021のカタログ。




林智子「虹の再織」展覧会カタログ

著者:林智子、平芳幸浩、芦田彩葵、田儀佑介
翻訳:ベンジャー桂、芦田彩葵、林智子、Linda Schaefer,Foster Mickley、田儀佑介
発行:公益財団法人 西枝財団
発行日:2021年10月20日
サイズ:A4判変形、64ページ

2021年5月1日〜5月30日まで、瑞雲庵(京都)で開催されていたアーティスト 林 智子氏「虹の再織」展のカタログ。






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2021/11/12(金)(artscape編集部)

カタログ&ブックス | 2021年11月1日号[テーマ:リアリズム]

テーマに沿って、アートやデザインにまつわる書籍の購買冊数ランキングをartscape編集部が紹介します。今回のテーマは、茨城県近代美術館で開催中の「上田薫とリアルな絵画」にちなんで「リアリズム」。このキーワードに関連する、書籍の購買冊数ランキングをお楽しみください。
ハイブリッド型総合書店honto調べ。書籍の詳細情報はhontoサイトより転載。
※本ランキングで紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。

「リアリズム」関連書籍 購買冊数トップ10

1位:アンドリュー・ワイエス作品集

画:アンドリュー・ワイエス
監修・著者:高橋秀治
発行:東京美術
発売日:2017年8月22日
サイズ:30cm、199ページ

20世紀アメリカを代表するリアリズムの巨匠ワイエスの画集。生涯、生地ペンシルヴェニアと夏の避暑地メイン州2つの地を拠点に、風景や親しい人々を描き続けた孤高の画家の傑作を収録する。


2位:フランシス・ベイコン・インタヴュー(ちくま学芸文庫)

著者:デイヴィッド・シルヴェスター(述:フランシス・ベイコン)
翻訳:小林等
発行:筑摩書房
発売日:2018年6月8日
サイズ:15cm、308ページ

自然主義的リアリズムを否定し、神経組織に直接伝わるようなまったく新しいリアリティーを創造し、現代絵画に多大な影響を与えたベイコンのインタビュー集。ベイコンに関する論考では必ず引用されてきた重要な書を文庫化。〔「肉への慈悲」(1996年刊)の改題改訳〕


3位:さまよえる絵筆 東京・京都戦時下の前衛画家たち

編著:弘中智子、清水智世
発行:みすず書房
発売日:2021年2月27日
サイズ:26cm、215ページ

戦時下の東京、そして京都に暮らした前衛画家たちは、それぞれのリアリズムを追求した。絵画作品と資料から、前衛絵画の一断面を明らかにする。板橋区立美術館・京都府京都文化博物館で開催される同名展覧会の公式図録。



4位:林亮太の超リアル色鉛筆入門 身近な静物から始める

著者:林亮太
発行:マール社
発売日:2016年8月8日
サイズ:26cm、111ページ

「えっ、これ、写真じゃないの?」と思わず驚く金属やガラスのリアリズム。ものの質感は色鉛筆の「色数を重ねて塗り込む」という技法で表現できます。本書では、バナナやガラスのコップなどシンプルなモチーフでその技法を説明。文房具としては身近な色鉛筆を使って、本格的な静物画を描いてみませんか?



5位:平壌美術 朝鮮画の正体

著者:文凡綱
翻訳:白凛
発行:青土社
発売日:2021年2月13日
サイズ:27cm、319ページ

絵画の中の朝鮮。2018年に開催された光州ビエンナーレでひときわ異彩を放った作品群が、朝鮮民主主義人民共和国のトップクラスの画家が集まって描く「朝鮮画」の展示であった。そのキュレーションをしたムン・ボンガンが、アーティストのアトリエ訪問やインタビュー、集められた資料を駆使し、平壌美術の最も核心的な部分であるこの絵画について6年をかけて執筆したものが本書である。社会主義リアリズムの芸術の典型的な形態でありつつも、独自の表現方法を追求してきた「朝鮮画」。朝鮮半島に平和が訪れることを願う著者が、芸術家としての視点と学術的な研究の両面を踏まえてプロパガンダとアートの境界線上に存在する平壌美術の現在を描く。






6位:もっと知りたいカラヴァッジョ 生涯と作品(アート・ビギナーズ・コレクション)

著者:宮下規久朗
発行:東京美術
発売日:2009年12月
サイズ:26cm、95ページ

劇的な明暗表現と革新的リアリズムによって、バロック絵画の扉を開き、その後の巨匠たちに大きな影響を与えた美術界の革命児・カラヴァッジョ。その鮮烈な魅力を、ついには殺人を犯してしまう破滅的生涯とともにたどる。



7位:写実絵画のミューズたち(別冊太陽 日本のこころ)

編集:別冊太陽編集部
発行:平凡社
発売日:2017年11月27日
サイズ:29cm、159ページ

身近な存在である女性たちをモチーフに繰り広げられる美の競演──。写実というリアリズムの手法で、世界を切り取ろうとする画家たちの作品を紹介する。諏訪敦×宮下規久朗の対談も収録。折り込みページあり。



8位:画家とモデル 宿命の出会い

著者:中野京子
発行:新潮社
発売日:2020年3月25日
サイズ:20cm、190ページ

密かに紡がれた愛情、過酷な運命の少女への温かな眼差し。名画に刻印された知られざる関係と画家の想いを読み解く! 生涯独身を貫いた画家サージェントによる黒人青年のヌード。身分違いの女公爵への愛のメッセージを絵のなかに潜ませたゴヤ。遺伝的疾患のために「半人半獣」と呼ばれ差別された少女を情愛をもって描いたフォンターナ。リアリズムの巨匠ワイエスが15年にわたり密会し描いた近隣の人妻。絵に画家が刻み込んだ、モデルとの深淵なる関係。




8位:アンドレ・バザン 映画を信じた男

著者:野崎歓
発行:春風社
発売日:2015年6月25日
サイズ:20cm、220+7ページ

映画批評の金字塔「映画とは何か」を著したアンドレ・バザン。没後半世紀を超えた今、彼の遺したテキストは、現代アジア映画、宮崎アニメにも通じるのか。リアリズム失効の現代に問う、来るべき映画のための論考集。



10位:土門拳 鬼が撮った日本(別冊太陽)

監修:藤森武
発行:平凡社
発売日:2009年2月13日
サイズ:29cm、183ページ

日本を代表する写真家、土門拳。戦前戦後にかけて社会の様相をリアリズム写真で追究し、また、恐るべき執念と不屈の闘志で芸術写真に第一級の仕事を成し遂げた、究極の写真の世界と巨匠の全貌に迫る。生誕100年記念。



10位:ヘッダ・ガブラー(近代古典劇翻訳〈注釈付〉シリーズ)

著者:ヘンリック・イプセン
翻訳:毛利三彌
発行:論創社
発売日:2021年4月13日
サイズ:19cm、211ページ

世紀末閉塞社会の女性心理を描いた近代リアリズム演劇の白眉。「人形の家」の登場人物と互いに対応し、パロディとも言われるイプセンの傑作「ヘッダ・ガブラー」を新たに訳し、詳細な註釈を付す。





artscape編集部のランキング解説

茨城県近代美術館で今年の12月12日(日)まで開催されている「上田薫とリアルな絵画」展。1960〜70年代に台頭した「スーパーリアリズム」における主要な日本人作家として紹介されることの多い上田ですが、その写真と見紛うほど解像度の高い精密な描写は、日常のなかで私たちが何気なく行なっている「見る」行為の不完全さ、つまり現実だと捉えているものは実はデフォルメされたものだという“見えていなさ”を逆説的に提示してくれているような気もします。
美術における「リアリズム」については、現代美術用語辞典ver.2.0ではこう解説されています。「〈現実〉の現象を直感し、理想化を避けてそれを表出することに価値を置く表現のこと」。ただしその後には「そもそも対象とされる〈現実〉が、内感に基づくものなのか、それとも客体を志向するものなのか、あるいはその両者の超克を目指すものなのか、といったさまざまな問題設定によって大きな振り幅を持たざるをえない」とも続いており、その定義の難しさ/複雑さが窺えます。
今回のランキングで1位に輝いたのは、アメリカのリアリズム絵画の巨匠アンドリュー・ワイエス(1917-2009)の作品集。日本でも高い人気を誇る作家でありながら、国内では展覧会図録を除いてワイエスの画集はこの本までほとんど出版されてこなかったそう。作品の図版だけでなく、編者の高橋秀治氏によるサイドストーリーの解説やコラムも充実しており、作家の生きたアメリカ東部の土地や時代、家族や絵のモデルになった人物との人間関係まで、ワイエスという人物像が自然と浮かび上がってくるような丁寧な編集がなされた一冊です。
『怖い絵』シリーズなどで知られる中野京子氏による『画家とモデル 宿命の出会い』(8位)でも、その最終章でスポットが当てられているのはワイエス。同書の表紙でもある《編んだ髪》(1979)など240点以上の作品でモデルを務めたドイツ移民の女性ヘルガ・テストルフとワイエスが長年築いた、お互いの配偶者にも秘匿されていた関係性にはいまでも多くの謎が漂いますが、その複雑さを肯定しつつの著者の筆致は鮮やか。ワイエス以外にもレンブラントやシャガール、モディリアーニなど、さまざまな時代・地域のアーティストとモデルのストーリーから、いわゆる芸術家とファム・ファタルといった古典的なイメージに留まらず、人の数だけオリジナルの関係性があること、そしてそれらを知ったうえで鑑賞する作品の味わい深さを思い知らされます。
そのほか、「社会主義リアリズム」(社会主義国で公式とされた芸術様式)の影響関係から朝鮮の絵画を論じ直す『平壌美術 朝鮮画の正体』(5位)や、脈々と続く写実絵画の現代作家を取材したムック(7位)、あるいは演劇におけるリアリズムの潮流を語るうえで欠かせないイプセン作品の新訳本(10位)など、「リアリズム」を通した近年の人々の関心が見て取れるランキングになりました。




ハイブリッド型総合書店honto(hontoサイトの本の通販ストア・電子書籍ストアと、丸善、ジュンク堂書店、文教堂など)でジャンル「総合」キーワード「リアリズム」の書籍の全性別・全年齢における購買冊数のランキングを抽出。〈集計期間:2020年10月27日~2021年10月26日〉

2021/11/01(月)(artscape編集部)

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