2023年03月15日号
次回4月3日更新予定

artscapeレビュー

artscape編集部のレビュー/プレビュー

カタログ&ブックス | 2022年4月1日号[テーマ:Chim↑Pomが「時代に呼応」し続けてきた記録としての5冊]

注目の展覧会を訪れる前後にぜひ読みたい、鑑賞体験をより掘り下げ、新たな角度からの示唆を与えてくれる関連書籍やカタログを、artscape編集部が紹介します。
震災、都市、原発などさまざまな社会問題に呼応しては介入を試みるアーティストコレクティブ・Chim↑Pomの過去最大規模の回顧展「ハッピースプリング」(森美術館にて2022年2-5月開催)。2005年から活動を続ける彼らの問題意識と、発想を定着させる瞬発力・行動力にひたすら圧倒される本展。その秘密に迫る5冊を選びました。


今月のテーマ:
Chim↑Pomが「時代に呼応」し続けてきた記録としての5冊

※本記事の選書は「hontoブックツリー」でもご覧いただけます。
※紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。
協力:森美術館


1冊目:We Don't Know God: Chim↑Pom 2005–2019

著者:Chim↑Pom
発行:ユナイテッドヴァガボンズ
発売日:2019年6月4日
サイズ:292ページ

Point

それまでのChim↑Pom作品を一挙にまとめた、2019年の刊行時点での決定版的作品集。その後に続くコロナ禍や東京五輪の開催など、この数年間の社会の激動ぶりと、それに呼応して新たな作品を続々と発表しているChim↑Pomの活動の旺盛さに目が回るような思い。会田誠、椹木野衣などによる論考も豊富に掲載。


2冊目:都市は人なり SukurappuandoBirudoプロジェクト全記録

著者:Chim↑Pom
発行:LIXIL出版
発売日:2017年8月18日
サイズ:20×23cm、227ページ

Point

五輪の開催が2013年に決定して以降、都市開発の名の下に急速な変貌を遂げてきた東京。本書は、取り壊しを控えた歌舞伎町のビルでの展覧会「また明日も観てくれるかな?」を中心としたプロジェクトの克明な記録集。初期より路上からの視点を一貫して持ち続けてきたChim↑Pomの《ビルバーガー》はやはり圧巻。


3冊目:はい、こんにちは ─Chim↑Pomエリイの生活と意見─

著者:エリイ
発行:新潮社
発売日:2022年1月31日
サイズ:20cm、174ページ

Point

「ハッピースプリング」展の後半に彼女に焦点を当てたパートがあることからもわかる通り、Chim↑Pomのパフォーマンスに不可欠なのがエリイの存在。そんな彼女が人工授精からの出産を経て上梓したドキュメント。いわゆる出産エッセイとは一線を画する、エッセイと小説の中間のような独自の文体が脳裏に焼き付くよう。



4冊目:公の時代──官民による巨大プロジェクトが相次ぎ、炎上やポリコレが広がる新時代。社会にアートが拡大するにつれ埋没してゆく「アーティスト」と、その先に消えゆく「個」の居場所を、二人の美術家がラディカルに語り合う。

著者:卯城竜太、松田修
発行:朝日出版社
発売日:2019年9月30日
サイズ:19cm、322ページ

Point

Chim↑Pomのメンバー卯城竜太と美術家の松田修による二人の対話で淡々と綴られていくのは、地域芸術祭などを通して公共に「配置」される存在となりかけているアーティストや、現代日本における個人の感覚の変化に対する問題。近年頻繁に起こる、表現活動と炎上の関係性などを考えたい人にも勧めたい一冊です。



5冊目:乙女の絵画案内 「かわいい」を見つけると名画がもっとわかる(PHP新書)

著者:和田彩花
発行:PHP研究所
発売日:2014年6月20日

Point

大学院でも美術史を専攻した和田彩花(元アンジュルム)が古今東西の名画の見どころを綴った、アート鑑賞入門としても読みやすく自由な視点がもらえる一冊。彼女が現代美術の面白さに開眼したのは、3.11に関連したChim↑Pomの展示「Don’t Follow The Wind」(2015)がきっかけだそう。







Chim↑Pom展:ハッピースプリング

会期:2022年2月18日(金)~5月29日(日)
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F)
公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/chimpom/index.html


「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」展覧会図録

出版社:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、美術出版社書籍編集部
発行:森美術館
発行日:2022年3月31日
サイズ:37.5×37.5cm、48ページ+大型ポスター
言語:日英バイリンガル

展覧会カタログ + 大型ポスター + LPレコード
本展を企画した森美術館キュレーター(近藤健一)による論考や、セクション解説、作品解説、作品図版、作家によるイラストなどを掲載。LPレコードには、展覧会会場用オーディオガイド音声の抜粋とアーティスト涌井智仁によるリミックスを収録。
※LPレコードの音源はパソコンのみでダウンロードできます(期間限定回数制限あり)。詳細は商品に同封される説明書をご確認ください。


◎展示会場、森美術館オンラインショップで販売中。


2022/04/01(金)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2022年3月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます





TOKYO POPから始まる 日本現代美術1996‐2021

著者:小松崎拓男
発行:平凡社
発行日:2022年2月18日
サイズ:四六判、304ページ

現代美術の現場を並走してきた著者が語る、日本のアート・シーンの四半世紀。村上隆から奈良美智まで、日本現代美術の貴重な記録。



建築から世界史を読む方法(KAWADE夢新書)

著者:祝田秀全
発行:河出書房新社
発行日:2022年2月21日
サイズ:新書判、240ページ

ギリシャ、ロマネスク、ゴシックなど建築様式の変遷と世界史は連動している。著名な建築物が「なぜそこに」「なぜその意匠で」造られたのかを追究すると、歴史の意外な事実が見えてくる!






日本文学大全集 1901-1925

著者:指田菜穂子
解説:ロバート キャンベル
発行:ART DIVER
発行日:2022年2月22日
サイズ:B5判、152ページ

「絵で百科事典をつくる」という発想のもと、言葉から連想されるあらゆる事象を一枚の画面に緻密に描き込む芸術家・指田菜穂子。その1冊目となる作品集です。



ゴッホを考えるヒント 小林秀雄『ゴッホの手紙』にならって

著者:佐藤公一
発行:アーツアンドクラフツ
発行日:2022年2月24日
サイズ:四六判、112ページ

印象派を超えようとした絵画制作と、いわば「文豪の手紙」とも見まがう書簡文学を表わしたゴッホ。その太陽のように輝く存在であるゴッホの真実を、一枚の《自画像》をからめつつ、ゴッホの全生涯の歩みをたどる。



アート&デザイン表現史 1800s-2000s

著者:松田行正
発行:左右社
発行日:2022年2月25日
サイズ:A5判、440ページ

グラフィック・デザイン、絵画、写真、建築、映画、音楽etc. 1807年〜2019年までに生まれた革新的な表現法。 その中心となる作品と、そこから派生、影響を受けた作品や似た作品をビジュアルとともに解説する。アートとデザインの歴史が概観できる「デザインの歴史探偵」松田行正による渾身の一冊!



春はまた巡る デイヴィッド・ホックニー 芸術と人生とこれからを語る

著者:デイヴィッド・ホックニー/マーティン・ゲイフォード
翻訳者:藤村奈緒美
発行:青幻舎
発行日:2022年2月25日
サイズ:B5判変型、280ページ

デイヴィッド・ホックニー×マーティン・ゲイフォード ロングセラー『絵画の歴史』コンビによる コロナ禍、ノルマンディーからの最新エッセイ!



中銀カプセルタワービル 最後の記録

編:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト
発行:草思社
発行日:2022年3月1日
サイズ:A4判変型、204ページ

1972年の竣工から50年のときを経て解体される、日本屈指の名建築の最後の姿を記録する決定版。114カプセル、写真400以上に、実測図面と論考を収録。



和辻哲郎 建築と風土(ちくま新書)

著者:三嶋輝夫
発行:筑摩書房
発行日:2022年3月8日
サイズ:新書判、256ページ

唐招提寺、薬師寺、法隆寺から、世界の名建築を経めぐり、そして桂離宮へ――。知られざる和辻倫理学のもうひとつの思想的源泉!






新・今日の作家展2021 日常の輪郭

対談:田代一倫×百瀬文、百瀬文×清水知子、田代一倫×倉石信乃
編集:大塚真弓(横浜市民ギャラリー学芸員)
デザイン:川村格夫(ten pieces)
撮影:加藤健
発行:横浜市民ギャラリー
サイズ:B5判、34ページ

2021年9月18日(土) ~ 10月10日(日)に行われた「新・今日の作家展2021 日常の輪郭」の展示風景と、関連イベントの文字起こしを収めた記録集。






※「honto」は書店と本の通販ストア、電子書籍ストアがひとつになって生まれたまったく新しい本のサービスです
https://honto.jp/

2022/03/14(月)(artscape編集部)

カタログ&ブックス | 2022年3月1日号[テーマ:「文字を作る」ことを通して世界を眺める/世界とつながる5冊]

注目の展覧会を訪れる前後にぜひ読みたい、鑑賞体験をより掘り下げ、新たな角度からの示唆を与えてくれる関連書籍やカタログを、artscape編集部が紹介します。
今回ピックアップするのは、書体設計士・鳥海修さんの展覧会「鳥海修 もじのうみ:水のような、空気のような活字」(京都dddギャラリーにて1月15日~3月19日開催)。「ヒラギノフォント」や「游明朝体」など、インフラのような書体の数々を手がけられてきた鳥海さん。文字を作る行為は、世界のどんな部分に波及し息づくのか。そんな想像が膨らむ5冊を選びました。


今月のテーマ:
「文字を作る」ことを通して世界を眺める/世界とつながる5冊

※本記事の選書は「hontoブックツリー」でもご覧いただけます。
※紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。
協力:堤拓也(鳥海修「もじのうみ:水のような、空気のような活字」キュレーター)


1冊目:文字を作る仕事

著者:鳥海修
発行:晶文社
発売日:2016年7月9日
サイズ:20cm、235ページ

Point

鳥海自ら書体設計の仕事について綴ったエッセイ。今回の展覧会タイトルにもある「水のような、空気のような」という言葉は、鳥海が書体設計士を志すきっかけとなったタイポグラファー・小塚昌彦によるもので、2016年刊行の本書にも登場します。黒子としての書体設計士の美意識をより深く知られる一冊。


2冊目:グーテンベルクの銀河系 活字人間の形成

著者:マーシャル・マクルーハン
翻訳:森常治
発行:みすず書房
発売日:1986年2月
サイズ:22cm、486+24ページ

Point

グーテンベルクの印刷文化がいかに個人主義を生んだのかを語る、マクルーハンの論説集。本展キュレーターの堤拓也さん曰く「鳥海の書体設計の仕事もこの延長にある」そう。「『水のような、空気のような活字』とはすなわち、均質かつ画一的な紙面空間を作るという西洋近代社会の要請だったのです」と両者を結びつけます。


3冊目:日本語活字ものがたり 草創期の人と書体(文字と組版ライブラリ)

著者:小宮山博史
発行:誠文堂新光社
発売日:2009年1月
サイズ:21cm、268ページ

Point

日本の近代活字の草創期、ひらがな/カタカナ/漢字といった複数種の文字が混在する日本語を活字にするゆえの格闘を伝える貴重な一冊。「極東に位置する日本においても、キリスト教と活字文化というものが切っても切れないということがわかります」(堤)。鳥海と、さらに上の世代の書体設計のあり方を比較しても興味深い。



4冊目:本をつくる 書体設計、活版印刷、手製本─職人が手でつくる谷川俊太郎詩集

著者:鳥海修、高岡昌生、美篶堂、永岡綾
発行:河出書房新社
発売日:2019年2月18日
サイズ:21cm、225ページ

Point

本づくりのプロたちが谷川俊太郎詩集『私たちの文字』を作る過程を捉えた記録集。鳥海による、谷川の詩のためのかなフォント「朝靄」の制作風景だけでなく、それが活版で組まれ、印刷、手製本されるまでの職人たちの手仕事が丹念に綴られた一冊。「朝靄」完成までの資料とともに、実際の特装本が本展でも展示されています。



5冊目:銃・病原菌・鉄 上巻

著者:ジャレド・ダイアモンド
翻訳:倉骨彰
発行:草思社
発売日:2015年11月25日

Point

かつて貧しかった欧州の国々が、いかに世界で覇権を握っていくことになるのか。生物学や言語学、宗教学など多様な視点から社会の転換を読み解くことで、人類史の見方が塗り替えられる一冊。「世界三大発明の『火薬』『羅針盤』『活版印刷術』とともに『活字』が世界史に与えた影響を間接的に想像するとより面白い」(堤)。







鳥海修「もじのうみ:水のような、空気のような活字」

会期:2022年1月15日(土)~3月19日(土)
会場:京都dddギャラリー(京都府京都市右京区太秦上刑部町10)
公式サイト:https://dnpfcp.jp/gallery/ddd/jp/00000784


2022/03/01(火)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2022年2月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます





世界を一枚の紙の上に 歴史を変えたダイアグラムと主題地図の誕生

著者:大田暁雄
発行:オーム社
発行日:2021年12月17日
サイズ:B5判、272ページ

デザイン史を揺さぶるこのグラフィックは、なぜ、制作されたのか。「世界を描く」という不可能に挑戦した人たちの知られざる科学的グラフィズム150年の軌跡。 雑誌『アイデア』の好評連載を待望の書籍化。アレクサンダー・フォン・フンボルトからオットー・ノイラートまでの科学的グラフィズムの壮大な物語。



花裂ける、廃絵逆めぐり 福山知佐子画集

著者:福山知佐子、ジョルジョ・アガンベン、水沢勉、鵜飼哲、鈴木創士
発行:水声社
発行日:2021年12月27日
サイズ:B5判、192ページ

枯れゆくチューリップ、しなだれ、衰微するアネモネ…。枯れながら命を終えてゆく植物たち、そしてそこに潜む生命の循環を描いた、鉛筆による素描、水彩、銀箔膠絵。20年以上にわたり、花開き、枯れ、朽ちはてる草花を描き続けた画家の集大成。



都市を上映せよ  ソ連映画が築いたスターリニズムの建築空間

著者:本田晃子
発行:東京大学出版会
発行日:2022年1月21日
サイズ:四六判、304ページ

ソ連時代、建築の理想や夢を映し出す一大メディアとなった映画は、社会主義都市のイメージを大衆に浸透させることに成功し、現在にいたるまで人々の「ソ連」のイメージと結びついてきた。映画は首都モスクワをいかに神話化し、解体したのか、スクリーン上の建築物が饒舌に語り始める。



僕とデザイン

著者:仲條正義
発行:アルテスパブリッシング
発行日:2022年1月25日
サイズ:四六判変型、210ページ

資生堂のPR誌『花椿』のアートディレクターを40年以上務めたほか、 同パーラーのロゴとパッケージデザイン、 銀座松屋や東京都現代美術館、カゴメなど数多くのロゴをはじめ、 斬新で粋なデザインを世に送り続けてきた仲條正義が、 キャリアを振り返りながら、デザインとはなにか? を自ら語ります。


ラディカント グローバリゼーションの美学に向けて

著者:ニコラ・ブリオー
訳者:武田宙也
発行:フィルムアート社
発行日:2022年1月26日
サイズ:四六判、296ページ

1998年、『関係性の美学(原題:Esthétique relationnelle)』で美術の新たなパラダイムを切り拓いたブリオーが、21世紀の今日的状況を考察するため、旅人としてのアーティストたちの実践を通して新しい時代のしなやかな美学を描き出した、文化や想像力の標準化に抗するための挑戦的一冊。



環境が芸術になるとき 肌理の芸術論

著者:高橋憲人
発行:春秋社
発行日:2022年1月28日
サイズ:四六判、240ページ

環境と人間との関係性から芸術創造のあり方を捉えなおし、 肌理 きめ から生み出される新たな芸術実践のあり方を探求する気鋭の論考。ドローイングアーティスト・鈴木ヒラク氏へのインタビューを収録。


現代建築宣言文集[1960-2020]

編者:五十嵐太郎+菊地尊也
発行:彰国社
発行日:2022年1月
サイズ:四六判、432ページ

本書は、1960年のメタボリズムから2020年まで、現代の建築概念を揺るがしてきた建築家や批評家による50の言説を再録・解読するアンソロジーである。 各言説には、五十嵐太郎、菊地尊也ほか東北大学五十嵐研究室による解説文も掲載。 約半世紀にわたる言説の蓄積を振り返ることで、現代の位置を確かめ、未来につなぐ。



サーキュラーデザイン 持続可能な社会をつくる製品・サービス・ビジネス

著者:水野大二郎・津田和俊
発行:学芸出版社
発行日:2022年2月1日
サイズ:A5判、240ページ

地球環境の持続可能性が危機にある現在、経済活動のあらゆる段階でモノやエネルギー消費を低減する「新しい物質循環」の構築が急がれる。本書は1)サーキュラーデザイン理論に至る歴史的変遷2)衣食住が抱える課題と取組み・認証・基準3)実践例4)実践の為のガイドとツールを紹介する。個人・企業・組織が行動に移るための手引書


ケアとアートの教室

編著者:東京藝術大学 Diversity on the Arts プロジェクト
発行:左右社
発行日:2022年2月4日
サイズ:四六判、256ページ

介護、障害、貧困、LGBTQ+、そしてアート。様々な分野で活躍する人々と、東京藝術大学 Diversity on the Arts プロジェクト(通称DOOR)の受講生がともに学び、考える。 そこから見えてきたのは、福祉と芸術が「人間とは何かを問う」という点でつながっているということ。 ケアとアートの境界を行く17項!


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2022/02/14(月)(artscape編集部)

カタログ&ブックス | 2022年2月1日号[テーマ:フェミニズム、反芸術、ドゥルーズ──田部光子の世界をもっと深く知る5冊]

注目の展覧会を訪れる前後にぜひ読みたい、鑑賞体験をより掘り下げ、新たな角度からの示唆を与えてくれる関連書籍やカタログを、artscape編集部が紹介します。
今回ピックアップするのは、福岡市美術館の企画展、田部光子展「希望を捨てるわけにはいかない」(2022年1月5日~3月21日開催)。国内でも早期からフェミニズムの視点を持って制作を続けてきた女性作家、田部光子(たべ・みつこ/1933-)。本展を出発点に、日本美術における女性作家の立ち位置の変遷や、「反芸術」の流れにおけるパフォーマンスの歴史など、彼女を取り巻くトピックを広くそして深く知るための5冊を、本展の展覧会図録とともにご紹介します。


今月のテーマ:
田部光子の世界をもっと深く知る5冊

※本記事の選書は「hontoブックツリー」でもご覧いただけます。
※紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。


1冊目:女性画家たちの戦争(平凡社新書)

著者:吉良智子
発行:平凡社
発売日:2015年7月17日
サイズ:18cm、215ページ

Point

大正末期から戦前、戦中にかけて、女性画家たちはどのような環境で作家活動をしてきたのか、そして戦争にどう関わったのか──。国内の画壇における女性画家たちの立ち位置とともに、どのような目線で戦争の時代を捉えていたのかを俯瞰できる一冊。田部が生きた時代の前日譚として。


2冊目:アンチ・アクション 日本戦後絵画と女性画家

著者:中嶋泉
発行:ブリュッケ
発売日:2019年9月5日
サイズ:22cm、362ページ

Point

田部とほぼ同時代を生きてきた女性画家たち──草間彌生、田中敦子、福島秀子の3人の視点から見つめ直す戦後美術史。アクション・ペインティングが隆盛した1950〜60年代、それらに男性性を見出す美術界のムードの中で埋もれてしまった女性画家たちの思考をすくい上げる、野心的な研究書。


3冊目:肉体のアナーキズム 1960年代・日本美術におけるパフォーマンスの地下水脈

著者:黒ダライ児
発行:grambooks
発売日:2010年9月1日
サイズ:22cm、632+135ページ

Point

1957年から70年までの日本の前衛美術家の活動のうち特に「反芸術」のなかで生まれたパフォーマンスに着目し、同時代の社会状況を踏まえ詳細に紹介・分析した、日本のパフォーマンス史における重要書。今回の展覧会ポスターのメインビジュアルを飾る田部のパフォーマンスについても言及あり。佇まいも含め重厚な一冊。



4冊目:フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学

著者:ベル・フックス
翻訳:堀田碧
発行:エトセトラブックス
発売日:2020年8月12日
サイズ:19cm、188ページ

Point

日々耳にしている「フェミニズム」がそもそも何を目指したどんな考え方なのか、正直ちゃんと説明できない…。そんな人におすすめしたい本。女性だけでなく誰にでも関係のあるトピックとして、現代的な目線でフェミニズムを捉え直せる入門書。田部が活動初期から抱えていた問題意識の先見性にも改めて驚かされるはず。



5冊目:ドゥルーズの哲学 生命・自然・未来のために(講談社学術文庫)

著者:小泉義之
発行:講談社
発売日:2015年10月10日
サイズ:15cm、245ページ

Point

今回の展覧会のタイトルにもなった「希望を捨てるわけにはいかない」という力強い言葉は、2000年頃に田部氏が本書(2000年刊行の講談社現代新書版)で出会ったもの。一見難解な「差異」に着目したドゥルーズの思想を、時には迂回しながら著者と読み込んでいくことで、世界の捉え方に少し希望が湧いてくる一冊。







田部光子展「希望を捨てるわけにはいかない」

会期:2022年1月5日(水)~3月21日(月・祝)
会場:福岡市美術館(福岡県福岡市中央区大濠公園1-6)
公式サイト:https://www.fukuoka-art-museum.jp/exhibition/tabemitsuko/


田部光子展「希望を捨てるわけにはいかない」展覧会図録

編集・執筆:正路佐知子(福岡市美術館)
発行:福岡市美術館
発行日:2022年1月5日
サイズ:H250×W220mm、160ページ

福岡を拠点とする美術家・田部光子の活動を回顧する展覧会、田部光子展「希望を捨てるわけにはいかない」の図録。出品作を含む作品画像や資料・写真を数多く掲載し、田部光子による文章も多数再録。担当学芸員の論考、詳細な文献リストと年表、出品リストを収録(一部日英)。

◎展示会場、福岡市美術館オンラインショップで販売中。



2022/02/01(火)(artscape編集部)

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