artscapeレビュー
SYNKのレビュー/プレビュー
住まいをデザインする顔──関西30代の仕事
会期:2013/06/01~2013/06/30
大阪くらしの今昔館[大阪府]
関西に縁のある建築家やプロダクトデザイナー、特に30代の若手の仕事を紹介する展覧会。関西を代表する建築家、木原千利や竹原義二らの選定委員が選んだ20組が紹介されていた。正直なところ他の地域との違いは見受けられなかったが、若いクリエーターたちに披露の場を与えたことにせめてもの意義があるのではないかと思った。[金相美]
2013/06/06(木)(SYNK)
大阪市立東洋陶磁美術館「森と湖の国──フィンランド・デザイン」展
会期:2013/04/20~2013/07/28
国立国際美術館[大阪府]
本展は、フィンランドの18世紀後半から現代にかけてのガラス・陶磁器約150点を展示したもの。フィンランドはアイスランドと並んで、世界でもっとも北に位置する国のひとつ。南部と西部の海域には多くの島々が点在し、大小6万を超える湖があり、森林全体の面積は国土の7割を超える。厳しいながらも豊かな自然環境は、人々のあいだに自然に対する畏敬の念と親近性を育んできた。これは、本展の出展作の多くに自然のモチーフが用いられていることからも首肯されよう。フィンランド・デザインの特徴とは、ひとつに「手仕事を基礎とするものづくり」の伝統、もうひとつが「機能性」。アルヴァ・アールト(1898-1976)のデザインで現在も生産されている、湖の形状の花瓶《アールトの花瓶 9750/3030》や、入れ子状に配置することで花のように見える《アールト・フラワー 3034A-D》のように、芸術性と機能性を兼ね備えたプロダクト・デザインが1930年代以降伝統となっていく。ガラスのみならず陶芸、銀細工、木工、またグラフィック等の多くの分野で活躍、47年からはカルフラ・イッタラ社に所属したタピオ・ヴィルッカラ(1915-85)のデザイン、《カンタレッリ(アンズタケ)3280》。フィンランドの深い森のイメージを強く喚起するこの花瓶には、有機的な形態に繊細な彫りが入ることで、生き生きとした生命感を感じさせる。また、「フィンランド・デザインの良心」と呼ばれた、カイ・フランク(1911-89)の食器シリーズ《キルタ》などは、盛り付けや保存、器同士の組合せや片付けの用にまで配慮がなされた好例。こうした機能追及の背景には、デザイナーたちが伝統を踏まえつつ、使用者の視点を重視する進取の気質が感じられる。初夏の季節にガラスの涼やかさが目に心地良く、フィンランドの豊かな生活文化を感じ取れる展覧会である。[竹内有子]
2013/06/05(水)(SYNK)
若林剛之『伝統の続きをデザインする──SOU・SOUの仕事』
「SOU・SOU(そうそう)」は、京都を中心に地下足袋など和装を製造販売するデザインユニット。本書はその代表を務める若林剛之がSOU・SOUというオリジナルブランドを立ち上げるまでの経緯と、日本の伝統文化や技術について語ったものである。SOU・SOUの公式サイトに書かれていた「SOU・SOUへの道」という文章を加筆したもののようで非常に読みやすい。日本の伝統文化と技術にこだわりながらも、ポップなスタイルで国内外において根強い人気を得ているSOU・SOUの話と、著者・若林剛之のブランディング経験が内容の中心となっているが、読み進めていると日本の伝統文化の良さや真のグローバル化とはなにかについて考えさせられるところも多い。[金相美]
2013/05/31(金)(SYNK)
幸之助と伝統工芸
会期:2013/04/13~2013/08/25
パナソニック汐留ミュージアム[東京都]
「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助(1894-1989)は、伝統工芸の支援者でもあった。1960年には日本工芸会近畿支部支部長に就任。1977年には日本工芸会の名誉会長に就任している。個人としてばかりではなく、企業としても松下電器産業(現・パナソニック)は日本伝統工芸展において1992年より「パナソニック賞」(2007年度までは「松下賞」)を提供してきた。インターネット上の「伝統工芸ミュージアム」づくりにも協力してきたという。パナソニック汐留ミュージアムの開館10周年を記念して開催されている本展は、松下幸之助と伝統工芸との知られざる関わりを、彼のことばや蒐集品、関わりのあった工芸家の作品を通じて振り返る展覧会である。
幸之助は40歳を過ぎたころから茶道に関心を持つようになった。そして茶道に携わるなかで、茶道具を制作する工芸家たちにも関心を寄せるようになり、工芸家の団体である日本工芸会を知るようになったという。展覧会第1章は「素直な心」と題して、幸之助と茶道との関わりを見る。彼は楽一入(1640-96)、楽宗入(1664-1716)の黒楽茶碗を好んで用いたというが、三輪休和(1895-1981)、荒川豊蔵(1894-1985)ら、同時代の作家たちの作品も蒐集していた。そして茶道具からはじまった工芸家との関わりは、その他の伝統工芸品に拡大する。第2章「ものづくりの心」では、陶芸、染織、漆芸、金工など、幸之助と関わりの深い工芸家たちの作品が紹介される。1979年に当時の松下電器産業本社で撮影された写真には、森口華弘(友禅作家、1909-2008)、黒田辰秋(木工・漆芸作家、1904-1982)、角谷一圭(金工作家、1904-1999)、羽田登喜男(友禅作家、1911-2008)の姿を見ることができる。展覧会のコピーに「伝統工芸は日本のものづくりの原点である」というあるように、彼は電球ソケットから始まった自身のものづくりと、伝統工芸の精神を重ねてみていたに違いない。だからこそ、彼はただ美を愛で作品を求めるばかりではなく、ものをつくる人との関わりを大切にし、ものづくりの精神を支援してきたのであろう。[新川徳彦]
2013/05/24(金)(SYNK)
ヨーロピアン・モード2013/特集:華やかな人々
会期:2013/04/12~2013/06/08
文化学園服飾博物館[東京都]
2階は毎年恒例のファッション通史。18世紀ロココの時代から1970年代の若者たちによる多様なスタイルの出現まで、200年にわたるモードの変遷を追う。同時代の社会的経済的背景や風俗などを解説するパネルもわかりやすく、ファッションが個々人の好みではなく、政治的、経済的、社会的な要因と密接に関わり合って変化してきたことが示されている。1階展示では「華やかな人々」が特集されている。オードリー・ヘプバーンが「ローマの休日」(1953)で着用したドレス、ロシア・ロマノフ家のマリア・ニコラエヴナのイヴニング・ドレス(1840頃)、ダイアナ元英国皇太子妃のイヴニング・ドレス(1988)、越路吹雪の舞台衣裳など、女優、歌手、王室、セレブらの衣裳を、誰がどのような場面で着用したのかという解説とともに示している。ファッションはつねに時代や社会とともにありながらも、個々人のアイデンティティの発露でもあるというふたつの側面が奇しくも現われた構成になっている。[新川徳彦]
2013/05/22(水)(SYNK)