artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

JIA東北住宅大賞2014 第2次審査《家カフェBio/遊佐の家》

会期:2015/03/09~2015/03/11

[山形県]

今年もJIA東北住宅大賞の審査が始まる。鳥海山の麓にて、渋谷達郎が設計した《家カフェBio/遊佐》の家を訪れる。企業の研修施設を住まい兼自然食のカフェにリノベーションしたもの。家型の外観は変えず、ワンルームだった1階を個室群に、寝室群だった2階を山と海を望むカフェに変更している。強風や眺めなどの環境が家に反映する。

2015/03/09(月)(五十嵐太郎)

PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015

会期:2015/03/07~2015/05/10

京都市美術館、京都府京都文化博物館 別館、京都芸術センター、大垣書店烏丸三条店ショーウインドー、堀川団地、鴨川デルタ(出町柳)、河原町塩小路周辺[京都府]

今年春の関西美術界で最注目の国際現代芸術祭。京都市美術館、京都文化博物館など、京都市内中心部の8カ所を舞台に国内外約40組のアーティストが展示を行なっている。芸術監督の河本信治は、あえて統一的なテーマを設定せず、現場から自律的に生成されるクリエイティビティを優先した。これは、昨今流行している地域アートやアートフェア、ほかの国際展に対するアンチテーゼの一種とみなすことができるだろう。それはイベント名が「para(別の、逆の、対抗的な)」+「sophia(叡智)」であることからも明らかだ。一方、統一テーマがないことでイベントの全体像が把握しにくいこともまた事実である。展示は全体の約8割方が主会場の京都市美術館に集中しており、そのうち約半数は映像もしくは映像を用いたインスタレーションである。ほかの会場は1~3名程度が出品しており、サイトスペシフィックな展示が行なわれた。筆者が注目したのは、鴨川デルタ(出町柳)でサウンドアート作品を披露したスーザン・フィリップス、堀川団地の一室で美しい映像インスタレーションを構築したピピロッティ・リスト、河原町塩小路周辺のフェンスに囲まれた空き地で、廃物を利用したブリコラージュの立体作品を発表したヘフナー/ザックス、京都市美術館でのワークショップと館の歴史を重層的に組み合わせた田中功起、一人の女性の生涯を複数の映像とオブジェ、迷路のような会場構成でエンタテインメント性豊かに表現した石橋義正、自身のDIY精神あふれる行動をドキュメント風に映像化したヨースト・コナイン、音楽のジャムセッションの様子を約6時間にわたり捉えたスタン・ダグラスといったところであろうか。ほかの国際展に比べて規模は大きくない「PARASOPHIA」だが、映像系が多いこともあって、鑑賞には時間がかかる。まず、会場で配布されているガイドブックを入手して、作品概要やコース取りなどを事前にチェックすることをおすすめする。

2015/03/06(金)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00029861.json s 10108834

せんだいデザインリーグ2015 卒業設計日本一決定戦 公開審査

会期:2015/03/01

東北大学百周年記念会館川内萩ホール[宮城県]

毎年恒例の卒業設計日本一決定戦/SDLだったが、個人的に10年審査に関わってきて、もっとも達成感がなかった。ほかの案よりはマシという消極的な理由で日本一を決めてしまったからである。審査を通じて、観衆を含めて全体が納得しながら、上位を決めるプロセスこそが、SDLというイベントの醍醐味だが、全体的に会話がまず成立しなかった。ベタしかなくて、メタ的な視点がない。建築的な説明を求めても、それを答えない、あるいはそもそもそうした言語をもっていないのか。したがって、審査員のバトルになる手前に留まり、皆で協力してファイナリストから聞き出すのに時間を使い切った。もちろん、彼らを選んでしまった審査員として責任を感じる。ファイナリストが決まった時点で少し不安を感じていた。通常はセミファイナルでの得票点数の上位と、ファイナルの審査員の一推しが、ほどよく混ざるのだが、場の流れで、そのいずれでもない感じの布陣になってしまった。それでも類い稀な学生が入っていれば盛り上がったのだが、その奇跡も起きなかった。数百の案から、短時間で10人を選ぶのは、陸上でタイムを計るのとは違い、どうやっても無理がある。これはこういう形式のイベントだと割り切るしかない。が、そのなかでもどうやったら、より多くの議論ができるか、観衆も満足度が上がるかは、デザイン可能である。今回の失敗が、その方法を見直す機会になればと思う。

2015/03/01(日)(五十嵐太郎)

第2回 3.11映画祭 藤井光×五十嵐太郎トークショー「ASAHIZA 人間は、どこへ行く」

会期:2015/02/28

アーツ千代田 3331[東京都]

アーツ千代田3331にて、映画「ASAHIZA」の監督の藤井光とトークを行なう。実は3.11映画祭で上映する作品とは思えないほど、直接的な被災の話やシーンは少ない。が、現在、日本全国で起きている疲弊していく地域の話であり、映画という20世紀の共有知を使うことで、3.11に関する特殊な映画に限定されず、射程が広くなり、普遍性をもっている。それにしても、映画館のドアを閉じるところから始まり、画面にこちらを向く観客が映し出されることで、実空間とシンメトリーの構図を生み出し、われわれが映画を見ているのでなく、映画館がこちらを見ているような冒頭だ。

2015/02/28(土)(五十嵐太郎)

新生美術館 設計者選定プロポーザル第二次審査公開プレゼンテーション

会期:2015/02/27

ピアザ淡海2階ピアザホール[滋賀県]

1983年に開館した滋賀県立美術館は、従来の収集方針(日本美術院を中心とした近代日本画、滋賀県ゆかりの美術、戦後日本とアメリカを中心とした現代美術)に、「神と仏の美術」と「アール・ブリュット」を加えた新美術館へと生まれ変わることが決定。建物等の改修工事の設計者を公募した。全国から13者からの応募があり、第1次審査で5者まで絞った後、第2次審査として行なわれたのが、この公開プレゼンテーションである(同時に県民アンケートも実施された)。審査に挑んだのは、株式会社青木淳建築計画事務所、株式会社隈研吾建築都市設計事務所、株式会社山本理顕設計工場、有限会社SANAA事務所、株式会社日建設計 大阪オフィスの5組。1組20分の持ち時間が設定され、舞台の上で画像や映像を用いながらそれぞれのプラン説明が行なわれた。また、プレゼン後には選定委員会によるヒアリングも実施された。観客は300名以上でほぼ満員。予約受付後すぐに定員に達したことからも、県民の関心の高さが窺える。筆者はこの手のイベントに参加したのは初めてだが、建築のプレゼンがこれほど面白いものだとは知らなかった。世界に名だたる建築家たちがみずからマイクを握り、自分のプランを説明するのである。そのスタイルは、淡々と語る者、熱弁する者、舞台の前まで乗り出してくる者などさまざまで、図像や図面だけでは伝わらないたくさんの情報を得ることができた。県民や美術ファンの関心を高める意味でも、公開プレゼンは正解だったと思う。滋賀県には今後も情報を逐次公開して、新美術館が作られていく過程を可視化してほしい。なお、第2次審査の結果、有限会社SANAA事務所が最優秀提案者に選ばれたことを報告しておく(次点は株式会社青木淳建築計画事務所)。

2015/02/27(金)(小吹隆文)