artscapeレビュー

せんだいデザインリーグ2015 卒業設計日本一決定戦 公開審査

2015年04月15日号

会期:2015/03/01

東北大学百周年記念会館川内萩ホール[宮城県]

毎年恒例の卒業設計日本一決定戦/SDLだったが、個人的に10年審査に関わってきて、もっとも達成感がなかった。ほかの案よりはマシという消極的な理由で日本一を決めてしまったからである。審査を通じて、観衆を含めて全体が納得しながら、上位を決めるプロセスこそが、SDLというイベントの醍醐味だが、全体的に会話がまず成立しなかった。ベタしかなくて、メタ的な視点がない。建築的な説明を求めても、それを答えない、あるいはそもそもそうした言語をもっていないのか。したがって、審査員のバトルになる手前に留まり、皆で協力してファイナリストから聞き出すのに時間を使い切った。もちろん、彼らを選んでしまった審査員として責任を感じる。ファイナリストが決まった時点で少し不安を感じていた。通常はセミファイナルでの得票点数の上位と、ファイナルの審査員の一推しが、ほどよく混ざるのだが、場の流れで、そのいずれでもない感じの布陣になってしまった。それでも類い稀な学生が入っていれば盛り上がったのだが、その奇跡も起きなかった。数百の案から、短時間で10人を選ぶのは、陸上でタイムを計るのとは違い、どうやっても無理がある。これはこういう形式のイベントだと割り切るしかない。が、そのなかでもどうやったら、より多くの議論ができるか、観衆も満足度が上がるかは、デザイン可能である。今回の失敗が、その方法を見直す機会になればと思う。

2015/03/01(日)(五十嵐太郎)

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