artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
カタログ&ブックス│2014年9月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
磯崎新Interviews 磯崎新1954-2014 建築-芸術 - 批評をめぐる闘争と展開 -
建築家として第一線にありながら、また傑出した建築理論家として、戦後建築に圧倒的な足跡を残す磯崎新。磯崎が建築家として出発した1954年から現在までの活動を、気鋭の建築家、日埜直彦が詳細に追跡したインタヴュー集。このインタヴューは磯崎の時々の作品と言説をテーマ、トピックス別、クロノロジカルに整理しつつ、また時に逸脱もしながら2003年からほぼ10年をかけて行なわれた。戦後建築史のみならず、現代建築と隣接するアート領域でのムーヴメントを語る上でも貴重な証言となっている。[LIXIL出版サイトより]
必然的にばらばらなものが生まれてくる
ヴェネチア・ビエンナーレのコラボレーション(協働作業)とコレクティヴ・アクト(集団行為)から1998 年の初期の映像作品まで、現在から過去へ年代順に遡り、27 のテーマに分けて「作品」と「制作行為」を具体的に論じた書き下ろしテキストを収録。 また展覧会カタログや美術雑誌への寄稿のほか、2000 年に野比千々美名義で発表した評論を再録。東京国立近代美術館キュレーターの蔵屋美香、美術家の藤井光、評論家の林卓行との対話も収録し、アーティスト田中功起の真髄に迫る。[武蔵野美術大学出版局サイトより]
Under 35 Architects exhibition
9月4日から10月4日まで、 大阪・南港 ATC ODPギャラリーで開催されている同展(「35歳以下の新人建築家7組による建築の展覧会」)の展覧会カタログ。ゲスト建築家の伊東豊雄へのインタヴュー、五十嵐淳、五十嵐太郎、石上純也、平沼孝啓、藤本壮介、吉村靖孝による寄稿、倉方俊輔による出展者へのインタビューなどを展覧会記録とともに掲載。
NATURAL ARCHITECTURE NOW ナチュラル アーキテクチャーの現在
2006年(日本語版は2008年)に出版された『ナチュラル アーキテクチュア』の第二巻。24組のアーティストによる現地調達できる低コストの自然素材と簡単な技術で構築したパビリオン、展望台、シェルター等を豊富な写真やスケッチで紹介。環境、景観、コミュニティの課題をテーマにした、建築やインスタレーションの実験的な取り組みの実録。
Switch別冊 札幌国際芸術祭 2014 OFFICIAL GUIDEBOOK
7月19日から9月28日まで、札幌市内各所で開催されている「札幌国際芸術祭 2014 都市と自然」の公式ガイドブック。ゲストディレクター坂本龍一によるイントロダクションと出品作家へのインタビュー、作品紹介、D&DEPARTMENT HOKKAIDO by 3KGの編集による観光グルメ案内「札幌の観光をデザインの視点で考える」の頁等によって構成。
2014/09/16(火)(artscape編集部)
Under 35 Architects exhibition 2014
会期:2014/09/04~2014/10/04
ITM棟10階大阪デザイン振興プラザギャラリー[大阪府]
大阪ATCのU-35(「Under 35 Architects exhibition 2014 35歳以下の新人建築家7組による建築展覧会」)展へ。平沼孝啓が企画に関わり、これで5回目になるが、今年からU-30を35に引き上げ、石上純也が審査員をつとめて、7組を選ぶ。年上になった分、最初の実施プロジェクトが増え、やや堅実な案が増えたが、なかでも海外組のプレゼンがユニークだった。筆者が司会を担当したシンポジウムでは、五十嵐淳をはじめとする年長組からのダメだしよりも、20代のときから知り合いだった藤本壮介×平田晃久のトークが白熱する。今回参加したU-35のメンバーたちも、将来こういう関係になるといいだろう。
2014/09/13(土)(五十嵐太郎)
建築の皮膚と体温―イタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの世界―展
会期:2014/09/04~2014/11/22
LIXILギャラリー[東京都]
イタリアモダンデザインの父とも呼ばれたジオ・ポンティを紹介する展示。導入部に「建築は、外に対して厳しく、内に対して優しくなければならない」みたいなことが書かれていたが、この「堅牢」かつ「快適」という両立しにくい命題を、タイルという素材とデザインによって解決しようとしたのがジオ・ポンティだった。彼の建築に感じられる「皮膚感覚」は、モダニストでありながらモダニズムを超えたところに生まれてきたものだということがわかる。
2014/09/12(金)(村田真)
2014年度日本建築学会大会[近畿]
会期:2014/09/12~2014/09/14
神戸大学国際文化学部(鶴甲第1キャンパス)ほか[兵庫県]
建築学会の大会で、神戸大学に訪れる。今年は研究室から6名が発表した。また学生コンペで、1名が公開審査に進む。空き時間に、坂を上りながら、神戸大学の《本館》(文部省営繕設計/1932)、《講堂》(文部省営繕設計/1935)、《図書館》(文部省営繕設計/1933)、《兼松記念館》(文部省営繕設計/1934)、《武道館》(文部省営繕設計/1935)を見学した。1930年代の建築がよく残り、周辺の現代建築も、当時の外壁のテイストをあわせている。これだけ建築関係者が全国から集まりながら、意外にここを見る人がいないことは気になった。
学会の後、学生とともに、久しぶりに大阪の中崎町へ。山崎亮に連れていってもらい、初めてこの場所を訪れ、アジアならともかく、日本でもこんな場所が成立するのかと感心したのが、10年くらい前だったと思う。住宅地とリノベーションによる小さな店舗が混在し、独特のコミュニティをつくる界隈である。以前から減ったお店もあるし、増えたお店もあり、やはり変化しているようだ。
2014/09/12(金)(五十嵐太郎)
東北大学五十嵐研究室ゼミ旅行(2日目)
会期:2014/09/10~2014/09/11
[兵庫県]
まわりが何も見えない夜に着いたため、朝起きて初めて、《TOTOシーウインド淡路》から海の絶景を堪能する。そして海に向かうプールやテラス(これを眺めながら朝食をとる)。ロビーでは、お得意の大階段と大本棚が出迎える。安藤のドローイングが飾られた各部屋も広く、ベネッセハウスに近い経験を味わえるが、ここは割安な感じで楽しめるので、ここのホテルはおすすめである。
久しぶりに訪れた大塚国際美術館(徳島県鳴門市/1998年3月開館)にて、約3時間の名画鑑賞を行う。世界の有名美術館のコレクションを集めたベスト・オブ・ベストである。すべて複製の陶板画とはいえ、額縁付きで1/1のスケールで展示され、システィナ礼拝堂の天井画など、モノによっては空間ごと再現しているのが良い。小さく縮小された本の図版ではわからない細部も確認できるからだ。今回、研究室では美術と建築の本に関わるので、美術史のおさらいするために訪れた。ところで、国際美術館の向かいに、琵琶湖ホテルとよく似た大塚製薬の迎賓館がある。これも1930年代の国策による国際観光ホテルかと思いきや、職員にたずねると、1980年代頃につくったという。そうだとすれば、建築もコピーである。
遠藤秀平による福良港の《淡路人形座》(2012)と《うずまる》(2010)を見学する。いずれも津波を想定した建物だ。途中、瓦の素材で一面が覆われた《甍公園》(エイトコンサルト設計/2001)に立ち寄り、畑に点在するネギ小屋、遠景で丹下健三の《戦没学徒記念若人の広場》(1967)を眺めた。福良港の水門ほか、淡路島では瓦の使用率が高いが、これらと比較すると、改めて遠藤や安藤は外観のデザインに使わない選択をしたことがわかる。ゼミ合宿の最後は、いるか設計集団が手がけた《岩屋中学校》(1993)へ。ていねいに各部屋を案内していただく。屋根が傾斜することで、どこにいても屋根を意識させる空間、瓦屋根の集落的な風景、にぎやかな装飾的な細部は、象設計集団による沖縄の建築やポストモダンの時代を想起させる。ちなみに、少子化の影響で在校生が減少し、当初に比べて、空間の使い方はいろいろ変化したという。
2014/09/11(木)(五十嵐太郎)