artscapeレビュー
《大宮前体育館》
2014年04月15日号
[東京都]
荻窪にて、青木淳が設計した《杉並区大宮前体育館》を見学する。これも住宅地に囲まれているが、驚くべきは家よりも低い体育館とプールのヴォリュームだ。コンペでも、もっとも低い案だったらしい(槇文彦の案よりも)。低いが、広い屋上からの風景は意外に見たことがない。ザハの新国立競技場案とは対照的な考えだ。大宮前体育館の外周はSANAA的な曲線ではなく、分節したガラス面の連続で周囲のスケールと調整する。内部に入ると、深く掘られた地下から直方体のコンクリートのヴォリュームが入れ子状に立ち上がり、印象が変わる。この巨大な壁も近づくと、全体が生き物のようにゆるやかに波うち、また驚く。体育館の床の色彩やかわいいプールも印象的だ。ところで、通常の見学会と違っていたのは、杉戸洋、青木野枝、米田知子ら、あいちトリエンナーレにも参加した現代美術家が参加していたこと。やはり、アーティストとの親交が深い青木淳ならではだろう。
2014/03/29(土)(五十嵐太郎)