artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

南川祐樹建築設計事務所《透明な地形》

[愛知県]

竣工:2007年11月

岡崎にて、南川祐輝が設計した住宅「透明な地形」を見学した。9分割された矩形の屋外作品である佐久島のおひるねハウスを見て依頼があったらしく、その空間コンセプトを住宅に展開したものである。線路沿いで、くの字型に屈曲するヴォリュームに4つのキューブが貫通するような形式をもつ。1つがくり抜かれたテラス、2つが個室、残りの1つが浴室である。地形を反映した大階段や高い天井など、空間を使う楽しさが感じられる家だった。

2012/03/31(土)(五十嵐太郎)

国際芸術祭 あいちトリエンナーレ2013 記者発表

会期:2012/03/29

愛知芸術文化センター 12階アートスペースA[愛知県]

朝からあいちトリエンナーレ2013の有識者懇談会、昼から知事が座長となって運営会議、そして記者会見という長い一日だった。今回の発表では、少し展示の枠組みが見えてきたこともあり、プレスから具体的な質問が多く寄せられた。建築に絡む開催概要のポイントは、以下のとおり。名古屋の美術館や長者町以外に岡崎も会場になったこと。キュレータチーム(リバプール・ビエンナーレの監督を長くつとめたルイス・ビッグス、住友文彦、飯田志保子、拝戸雅彦ほか)やパフォーミングアーツのプロデューサー陣(全体統括の小崎哲哉ほか)が決定したこと。現代美術の作家では、前回発表された石上純也らの四人に加え、新しく青木淳、打開連合設計事務所(台湾)、建築的な作品を手がけるリチャード・ウィルソン(イギリス)やウィット・ピムカンチャナポン(タイ)、ヤノベケンジなど、8組が紹介された。オペラの演出家は、東京大学の建築学科出身の若手、田尾下哲がつとめ、『蝶々夫人』を上演する。また建物公開を行なうオープンアーキテクチャー、建築マップの作成、各地にアートを届けるトリエンナーレ・トラックなどの新しい試みも行なう。

2012/03/29(木)(五十嵐太郎)

「つくるが生きること」東日本大震災復興支援プロジェクト展

会期:2012/03/11~2012/03/25

3331 Arts Chiyoda 1Fメインギャラリー[東京都]

3331アーツ千代田の「つくることが生きること」展の最終日、トークイベントのために訪れた。これは東日本大震災復興支援プロジェクト展であり、陶器浩一研究室+高橋工業が気仙沼に建設した竹による集会所や椿昇のクリーンエネルギーを提案する作品など、約70組の建築家、アーティスト、デザイナー、企業、NPOの活動を紹介する。建築に関しては、「311ー東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展とかぶる事例も多いが、むしろ建築以外のプロジェクトが混ざっていることが特徴だろう。危機的な状況に対して、多様な主体がそれぞれの特性を生かしたユニークなプロジェクトを展開したことがうかがえる。

2012/03/25(日)(五十嵐太郎)

東洋大学工学部建築学科2011年度卒業設計展

会期:2012/03/24~2012/03/31

LIXIL:GINZA 7Fクリエイティブスペース[東京都]

東洋大学の卒業・修士設計の展覧会とあわせて開催された講評会に、末廣香織とともにゲストで参加した。選抜された作品を見ながら、全体として明快な特徴があることに気づく。個人的な風景やこだわりからスタートしつつも、ごりごりのパラメトリック・デザイン、フォルマリズムが展開しているのだ。ちなみに、五十嵐賞としては、学内受賞した人以外を対象とし、建物には手をつけず、内外の境界線となる塀のあり方のさまざまな可能性を示唆した塩原和記の「ガク都の牢」と、古典的な身体=建築論の系譜を踏まえつつ、アニメ絵少女の身体を建築化して秋葉原に挿入する嶋田裕紀の「美少女建築」を選んだ。

2012/03/24(土)(五十嵐太郎)

「鉄川与助の教会建築─五島列島を訪ねて─」展

会期:2012/03/08~2012/05/26

LIXILギャラリー[東京都]

LIXILギャラリーの「鉄川与助の教会建築」展は、近代日本におけるキリスト教受容とその変形として出現する教会の事例を紹介したものだ。以前、筆者が結婚式教会を論じていたときに、いわゆるウェディング・チャペルと鉄川の教会を比較したが、本物の教会かどうかで分けず、様式の変容としてこれらを検証すると、さらに興味深いだろう。

2012/03/24(土)(五十嵐太郎)

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