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建築に関するレビュー/プレビュー

2011年度京都造形芸術大学卒業制作関連イベント シンポジウム「万博へ、万博から」

会期:2012/03/04

京都造形芸術大学 京都芸術劇場 春秋座[京都府]

京都造形芸術大学の卒業制作展を訪れた。美術、建築、デザインだけではなく、テキスタイル、日本画など、いろいろなジャンルがある。1円玉を集めて103万円をかたどる作品、クリムト的な絵画がある和風の空間インスタレーション、壁が絵になった作品などが印象に残る。旅館の増築のように、傾斜に沿って、奥まで複雑に建物が続いていたことを初めて知った。坂茂による構築物も建設中だった。今回の卒制展のテーマ、万博にあわせて、浅田彰、五十嵐、ヤノベケンジ、岡崎乾二郎のトークイベントが開催された(当初、磯崎新も来る予定だったが、欠席)。五十嵐は建築、ヤノベは自作から大阪万博を中心に語り、岡崎は大阪万博と対極的な構造をもつ1967年のモントリオール万博を論じた。すなわち、丹下健三が全体計画を担当した大阪万博の未来都市がツリー構造だとすれば、モントリオールは逆に一枚一枚の葉がそれぞれの幹をもつ思想だという。

2012/03/04(日)(五十嵐太郎)

国際交流基金巡回展「3.11─東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」

会期:2012/03/02~2012/03/18

東北大学 都市・建築学専攻仮設校舎 KATAHIRA10[宮城県]

筆者が監修した「3.11─東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」の仙台展がスタートした。50組以上のプロジェクトを紹介するパネル、ドローイングや多くの模型、ダンボール家具などの実物のほか、地元枠の追加展示も入り、全体としてはかなりのヴォリュームに膨んだ。会場は、震災を受けてつくられた東北大学の仮設校舎の1階である。記者会見は、仙台駅からの交通の便が悪いところなので、プレスが集まるか心配だったが、おかげで会議室はいっぱいになった。半分以上は東京から来ていたようで、メディアの注目が高いことがうかがえる。こうした世界巡回展の最初は、東京で開催するのが普通だが、あえて被災地である仙台で行なったことは有意義だろう。遠くからこの展示に訪れた人も、さらに足をのばせば、実際に津波の被害を受けた仙台平野を直接見ることができるからだ。

2012/03/02(金)(五十嵐太郎)

ぺちゃくちゃないと2012 クリエイティブ・デザインシティなごや 20images×20seconds

会期:2012/02/23

青少年文化センター アートピアホール[愛知県]

ぺちゃくちゃないと2012クリエイティブ・デザインシティなごやに参加した。遅れて到着したこともあり、トリだった。ぺちゃくちゃナイトは、海外で一度体験していたが、国内では初めて。会場が変わると、全然雰囲気も変わる。だが、20枚のスライドを20秒ずつ映しながらしゃべるという形式は同じ。明快なシステムだからこそ、今や世界各地で開催されているのだが、同時に場所の差異も浮き彫りになるのが興味深い。

2012/02/23(木)(五十嵐太郎)

真下慶治記念美術館

真下慶治記念美術館[山形県]

山形県にて、高宮眞介が設計した真下慶治記念美術館を見学した。画家の愛した最上川を見下ろす、ほとんど最高のロケーションに位置する。それゆえ、絵のなかの構図と同じような風景を建物から見ることができる。川沿いの画家のアトリエも視界に入る。張弦梁の同じ天井の構造が連続するシンプルな断面ながら、奥にいくにつれ、横に、あるいは縦に膨らみ、最後は川が眼下に広がり、どんどん空間が変化する構成が絶妙である。

2012/02/22(水)(五十嵐太郎)

プレビュー:宮本佳明 展 福島第一原発神社~荒ぶる神を鎮める~

会期:2012/03/05~2012/03/24

橘画廊[大阪府]

兵庫県在住の建築家で、阪神淡路大震災の翌年(1996)に行なわれたヴェネチア・ビエンナーレ建築展に被災地の瓦礫を持ち込んで金獅子賞を獲得した(磯崎新らと共同受賞)宮本佳明が、東日本大震災から1年という区切りの時期に大胆な提案を行なう。それは、福島第一原発の原子炉建屋に桧皮葺の屋根を設けて神社あるいは廟とし、放射能が低線量になる1万年後まで祀るというものだ。たとえ廃炉に成功しても、大量に発生する高レベル放射性廃棄物の移設方法や移設先を決めるのは難しい。ならばいっそ被災地をアイコン化し、メンテナンスを続けていく方が記憶を正しく伝承できるのではないか。このプロジェクトにはそんな思いが込められている。工学的な裏付けや日本人の宗教観との整合性も考慮されており、真面目な提案として検討に値する。

2012/02/20(月)(小吹隆文)