artscapeレビュー

御厨貴先生退職記念シンポジウム─権力の館をめぐって─

2012年02月15日号

会期:2012/01/18

東京大学[東京都]

御厨貴の『権力の館を歩く』をテーマとした最終講義と座談会が行なわれたが、同書は各節がそれぞれ論文に発展しそうな一大鉱脈を発掘した本である。一般的に政治と権力の結びつきが弱いとされる日本において、どのような現場で空間と政治が結びつくかを読み込む。かといってフーコーのようなアノニマスな権力でもない。例えば、由比ケ浜の鎌倉文学館はかつて佐藤栄作首相の鎌倉別邸に使われた。三島由紀夫「春の雪」にも描かれた折衷的な洋館ではあるが、欧米の基準から見ると、これは超豪邸とは言えない。日本建築の権力表象は興味深いテーマだ。

2012/01/18(水)(五十嵐太郎)

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