artscapeレビュー

石上純也『石上純也──建築のあたらしい大きさ』

2011年01月15日号

発行所:青幻舎

発行日:2010年12月27日

豊田市美術館で開催された石上純也の個展のカタログである。巻頭のテキストにおいて、建築をシェルターとしてではなく、われわれを取り巻く環境そのものとしてとらえることを唱えるように、彼は雲や雨など、自然現象のメタファーを使う。ポストモダンの時代であれば、記号的な形態として扱ったと思われるが、石上はベタに考える。筆者も同書に長文の論考を寄稿したが、完成した実物が届けられて初めて、本の全体がわかった。ル・コルビュジエは新しいモダニズムのイメージを伝えるために、『建築をめざして』に機械や自動車の写真を混入させたが、石上は自身の作品と、大気の層、積乱雲の発達の様子、シュレーディンガーの電子雲、超伝導の磁場内の環など、さまざまな自然・物理現象のイメージを等価に並べていく。彼らしいブック・デザインである。2011年に刊行予定のテムズ・アンド・ハドソンの本にも通じるテイストだろう。

2010/12/31(金)(五十嵐太郎)

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