artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

Arup Japan 設立20周年記念展覧会

会期:2009/04/17~2009/04/26

ニコラス・G・ハイエックセンター 14階 イベントホール「シテ・ドゥ・タンギンザ」[東京都]

アラップ・ジャパン設立20周年を記念した展覧会。坂茂設計、アラップ・ジャパン構造設計による銀座のニコラス・G・ハイエックセンターの最上階で開かれた。企画・展示ディレクターはオープンAの馬場正尊氏。オブ・アラップは、構造設計で有名だが、実際には、設備設計、ファサード・エンジニアリング、プロジェクト・マネジメント(PM)も含めた総合的なエンジニアリング・コンサルタントである。ヨーロッパではファサードの重要性が高い。意匠、構造、設備に加えてファサードという分野が独立していて、ファサードの専門家もいる。アラップ・ジャパンは、ガラスメーカーやサッシュメーカー以外の側面から、日本にファサード・エンジニアリングを持ち込んだといえるのではないだろうか。アラップ・ジャパンの構造部門だけではなく、設備、ファサード、プロジェクト・マネジメントの各分野の成果と、その関連なども見ることができ、インテグレート(統合)されるエンジニアリングの状況がわかるよい展覧会だと思った。会期が短かったのが大変惜しい。展覧会に合わせ、『Arup Japan 建築のトータル・ソリューションをめざして』(誠文堂新光社)という本が出ており、そちらも必見であろう。

2009/04/17(金)(松田達)

流政之 展──建築と彫刻──

会期:2009/03/26~2009/05/15

GALLERY A4[東京都]

「割れ肌」で知られる彫刻家・流政之の個展。石彫刻やその写真、関連資料などを展示した。なかでも見応えがあったのが、四国にあるというスタジオを紹介する短い映像作品。瀬戸内海を一望する丘にそびえ立つ大きな建物は、一見すると要塞のようだが、室内に展示された数々の作品を見ると、それ自体がすでに美術館のようにも見える。

2009/03/31(火)(福住廉)

李祖原《宏国大樓》

[台北(台湾)]

竣工:1989年

台湾では、李祖原の作品を多く見た。台湾の建築家で世界的に知られている人物は少ない。近代建築は日本統治時代のものである。I.M.ペイは、台湾にも建築をつくったが、中国系アメリカ人建築家である。20世紀後半の台湾を代表する建築家は、間違いなく李祖原だといえる。李祖原のなかでも、ポストモダン・ヒストリシズム建築の代表作とも言えるのがこの宏国ビルであり、形態からはマイケル・グレイブスや磯崎新の建築も彷彿とさせる。建築的要素のスケールをところどころ極端に変えたようなデザインが特徴的であり、なぜか超合金ロボットを見ているようでもあった。同日、彼のハイテク風、ルシアン・クロール風などの別の建築も見たのだが、さまざまなポストモダン建築を一人で体現しているのはすごい。

関連URL:http://tenplusone.inax.co.jp/archive/taiwan/taiwan-002.html

2009/03/28(土)(松田達)

李祖原《TAIPEI 101》

[台北(台湾)]

竣工:2004年

高さ508m、階数101。2004年以降、2007年にドバイのブルジュ・ドバイに抜かれるまで、世界一の超高層建築物であった。完成した建物としては、2009年4月現在も世界一の高さである。設計は李祖原建築事務所、施工は熊谷組が中心で、逆四角錐台を8つ重ねたような形をしているため、斜めの柱の扱いが大変だったという。
ところで、この建築を取り上げたのは、李祖原という台湾におけるポストモダンをリードした建築家の重要性もさることながら、結果として、グローバル化されていない(といえる)デザインの超高層ができていたからである。2000年以降のさまざまな超高層と見比べたとき、実は超高層としてこれほどかっこ悪い建築はないだろうと思っていた。にもかかわらず、台北で見たときには不思議と自然に見え、現地の状況にあっている気がした。グローバル化する世界においては、超高層のデザインもグローバル化する傾向にあると思っていたけれども、こちらはデザインにおいてその波に抵抗している。李祖原は、台湾南部の高雄の《高雄85》という超高層建築も設計しており、こちらも足が二つ、頭部が一つの、ほかになかなか見ない超高層デザインであり特徴的だった。

2009/03/28(土)(松田達)

UNスタジオ《Star Place》

[高雄(台湾)]

竣工:2008年

ロータリーの一角に建てられた高級デパート。ファサードに取り付けられたフィンによって、凹面のファサードに、さらに何かうねるような別のレイヤーが重ねられる。夜になるとフィンがLED照明で光り、より効果がはっきりするはずだったが、夕方でも十分見応えがあった。ファサードだけを操作したファサード建築かなと思ったら、内部空間も面白かった。中央の細長い吹き抜け空間にまとわりつくエレベーター、エスカレーターなどの滑らかに連続するデザインによって、ファサードともシンクロしながら流動性という彼らのコンセプトが明確に示されていた。

2009/03/27(金)(松田達)