2024年02月15日号
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artscapeレビュー

都築響一 presents「妄想芸術劇場・ぴんから体操」

2012年06月01日号

会期:2012/04/30~2012/05/12

ヴァニラ画廊[東京都]

1990年代初めから現在まで、20年にわたって写真投稿雑誌のイラストページに自作を投稿し続けているアーチスト「ぴんから体操」氏。アイコラ、モノクロのペン画、色鉛筆によるカラーのイラストなど、長いあいだに表現のスタイルも、描かれるものも変化していますが、ジャンルとしては「春画」、テーマは「エロ」と「グロ」と「スカトロ」です。イラストばかりではなく、妄想の物語が付されているところは、ヘンリー・ダーガーを彷彿とさせます。どのような作品なのかは事前に知っていましたが、実物のインパクトは想像以上のもので、ヴァニラ画廊を出たあとクラクラと眩暈がしました。描かれたテーマのインパクトもありますが、作品から溢れ出る生々しいエネルギーにあてられた感じです。エロでもグロでもスカトロでも、数枚ならいいでしょう。しかし、すさまじいヴォリューム。編集部が保存していた膨大な作品が壁面いっぱいに貼りめぐらされ、両面にコラージュされた印刷物が天井から吊された透明なシートに展示されています。20年間、途中中断もあるものの、多いときには月産30点もの作品を投稿しているのだとか。趣味というレベルではありません。これらの作品、作品づくりはぴんから体操氏の日常生活そのものなのです。世間でアートといわれるものは、たとえ生理的な欲求が主題にあっても、それはなにか別のものの形をまとって表現され、それゆえに分析や批評が存在するのだと思うのですが、この空間ではまるでつくり手の脳みその中に飛び込んだかのよう。押し寄せてくる直接的なイメージの洪水に溺れそうになります。おどろいたことに、投稿雑誌界にはぴんから体操氏と同様に長期にわたって作品を送り続ける投稿者が他にも多数いるのだそうです。そうした「アーティスト」たちも「作品」も、「こちら側」に出てくることはなかなかありませんが、現実に社会を構成している文化のひとつであるという事実もまた無視することはできません。優れたアウトサイダーを掘り起こしてくる都築響一さんの情熱にも、いつもいつも驚嘆させられます。[新川徳彦]

2012/05/12(土)(SYNK)

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