artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
俺の湯

会期:2012/02/25~2012/03/04
art zone[京都府]
ガラス張りのギャラリー。外から見えるいつもの展示空間全体が、銭湯の浴槽のようになっていた。二階に上ってみて吃驚したのは、これまた銭湯さながらの空間だったから。木の札の鍵がついた下駄箱、脱衣籠のほか、籐筵が敷かれた床にはマッサージチェアが置かれ、牛乳を入れた冷蔵庫まである。これは企画した京都造形芸術大学の学生たちが、それぞれにテーマを設定し、日替わりの「湯」をしつらえるという展覧会。番台の受付で「今日は刺青湯です」と言われた。刺青のある人はお断りという場合が多い銭湯。この日は担当の学生がデザインし、制作した刺青シールを身体に貼って、足湯を楽しんでほしい、という日だったよう。その本人が丁寧に説明、案内してくれた。前日には、一階の浴槽の前の壁に金魚の絵を描くなど、ライブペインティングも行なっていたそう。小さな石けんやマッサージ器など今展に使われた銭湯グッズは、廃業した京都市内の銭湯を実際に訪ね、譲ってもらったのだという。いろいろな人とつながるためのポイントを準備から丁寧に考え、実践しているのも興味深かった。最終日は「大人湯」でスペシャルゲストにプロのストリッパーがショーをすると聞いていたのだが行けず残念。

26日の《刺青湯》会場風景
2012/02/26(日)(酒井千穂)
「望郷─TOKIORE(I)MIX」山口晃 展

会期:2012/02/11~2012/05/13
メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]
山口晃が、醜い景観の代表としてしばしば槍玉に挙げられる、電柱に注目し、それを和風のデザイン=「日本的なもの」に変えた絵画やインスタレーションを以前から発表していたことに興味をもっていたが、今回の展示ではなんと和風電柱が大きなサイズで立体化されている。メゾンエルメスの展示室に立つ柱を電柱に見立て、これに手を加えることで、インスタレーションに変えているのだ。こうした建築的なアイデアは実に愉快である。
2012/02/26(日)(五十嵐太郎)
鮫島ゆい展「Tangent point 0」

会期:2012/02/22~2012/03/11
ニュートロン東京[東京都]
青い空に黒い輪郭くっきりの白い雲が浮かんだようなフラットな絵と、絵具コテコテのペインタリーな抽象画の2パターン。大きなキャンヴァスにはこのふたつが同居していて、これはいいかも。ウェブサイトをのぞいたら京都出身で今年24歳という若さ。なんでこんな絵が描けちゃうんだろうってくらいイイ絵を描いてます。今後注目株。
2012/02/25(土)(村田真)
塩賀史子展「光の名残──明滅の庭」

会期:2012/02/22~2012/03/11
ニュートロン東京[東京都]
ウィンドーに藤の花の絵が飾ってあって、一瞬、松井冬子の《世界中の子と友達になれる》かと思った。もっとも松井の絵には藤の花の代わりにハチがびっしり描かれていたが。1階は池の蓮や森林など、2階は椿などの花の絵を展示。写実的だが細密ではなく、ペインタリーなタッチも残している。とくに森林風景は独特の世界観が表われていて薄気味悪いほど。人物を描かせたらどんなんだろう、ちょっと見てみたい気がする。
2012/02/25(土)(村田真)
アーツ・チャレンジ2012

会期:2012/02/14~2012/02/26
愛知芸術文化センター[愛知県]
続いて、愛知芸文センターにて、アーツチャレンジ2012を見る。地下2階に大量の安全ピンを並べた土田泰子、書籍の頁を折り、読み取ったイメージを造形化する益永梢子、名古屋の街でのささやかな出来事のニュースを配信するタニシK、屋外階段踊り場の空間に音を鳴らす彫刻を置く嶋田晃士など、さまざまな作品を楽しめる。すべてがホワイトキューブの外側に展示されているので、やはり、個人的には街や美術館の場所をうまく使うタイプの作品が興味深い。
写真:上から、土田泰子、益永梢子、タニシK、嶋田晃士
2012/02/25(土)(五十嵐太郎)


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