artscapeレビュー

画家たちの二十歳の原点

2011年06月01日号

会期:2011/04/16~2011/06/12

平塚市美術館[神奈川県]

日本近現代の画家たちが二十歳前後に描いた絵画を集めた展覧会。黒田清輝をはじめ青木繁、草間彌生、石田徹也など54人が油彩画を中心に発表した。誰もが若かりし日の日記を読み返すことを躊躇するように、二十歳の感性とはおおむね「無知と恥」と同義である。しかし日記とちがって、どうやら絵画の場合はそうでもないらしいことに、本展を見てはじめて気づかされた。村山槐多の《尿する裸僧》は、手をあせて拝みながら立ちションする裸僧を描いているが、おどろおどろしい色彩も相俟って、パンク的な暴力性を先取りしているように見えるし、会田誠や山口晃は青春期の反骨精神を、かたちを変えながらも、それぞれ今も持続させていることがよくわかる。とりわけ注目したのは、森村泰昌。鮮やかな青色を中心に構成された平面作品は、色彩とかたちによって対象を分解しながら再構成した立派な抽象画で、現在の著名人や芸術家に扮するポートレイトの作品とは似ても似つかない。これをあえて見せてくるところに、「青い時代」をためらうことなく振り返ることのできる芸術家の強さがある。もしかしたら、この強靭な精神こそ、芸術家の条件なのかもしれない。

2011/04/20(水)(福住廉)

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