artscapeレビュー

Trouble in Paradise 生存のエシックス

2010年08月01日号

会期:2010/07/09~2010/08/22

京都国立近代美術館[京都府]

京都市立芸術大学の創立130周年記念事業に協賛して開催された企画展。アートと生命、医療、環境、宇宙などの諸学問が交流する12のプロジェクトを通して、脱領域的な表現(=未来の芸術?)の可能性を問うた。実際、展示物を見ると、光と音の変化が脳の血流に与え、その数値がフィードバックして光と音が変化していくシステムや、二重軸回転する巨大な円盤で身体の感覚を撹乱する装置、切り立った山脈のようなインスタレーション、JAXAとの協働で無重力空間における庭のあり方を探ったプロジェクトなど、およそ美術展らしくない造形物が並んでいる。同時に、多数の講演会、シンポジウム、ワークショップなどが組まれており、展示と同等の比重がかけられているのも本展の特徴である。こういう挑戦心に満ちた企画は、画廊ビジネスでは不可能だし、アートセンターの手にも余る。まさに美術館以外では行なえない先進的な挑戦として評価されるべきであろう。正直に言うと若干アカデミズム臭が気になったのだが、それは筆者の偏見かもしれない。

2010/07/08(木)(小吹隆文)

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