artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
美しき挑発:レンピッカ展
会期:2010/03/06~2010/05/09
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
タマラ・ド・レンピッカといえば、1980年ごろパルコ出版から画集が出たのを覚えているが、それ以前もそれ以後もほとんど名前を聞いたことがない。たまたまその当時の「パルコ文化」と方向性が合致したのだろう。たしかに1920年代の彼女の作品を見ると、ファッショナブルなアールデコ様式でいかにも「時代と寝た」先端的な女性画家といった趣があり、それはそれで興味深い反面、あっさり消費されてしまいかねない薄さも感じてしまうのだ。いわば時代のイラストレーションに堕してしまったというか。そこが80年代的であったと、いまいえる。でも30年代以降(それが彼女の人生の大半を占める)の作品を見ると、時代におもねったり取り残されたり自己模倣を繰り返したりして、それが逆に時代とは隔絶したある種の壮絶さを生み出してもいる。2010年のいま彼女に注目するなら、30年代以降の作品だろう。
2010/04/22(木)(村田真)
大和田良「Log」
会期:2010/04/22~2010/04/28
キヤノンギャラリー銀座[東京都]
大和田良は1978年仙台生まれ。2004年に東京工芸大学大学院を修了して、フリーの写真家として活動しはじめた。このところ急速に力を付けつつある30歳前後の写真家たちの代表格ともいえるだろう。2006年にスイス・ローザンヌのエリゼ美術館で開催された「ReGeneration: 50 Photographers of Tomorrow」展に選出され、2007年には写真集『prism』(青幻舎)を刊行するなど、早くからその仕事が注目されてきた。ただセンスのよさは感じるものの、いまひとつ狙い所がはっきりわからず、評価がむずかしいと感じていた。
だが、今回の個展(大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台のキヤノンギャラリーに巡回)を見て、その知性と感性と技術とが絶妙なバランスを保った作品世界は、もっと大きく展開していく可能性を持っているのではないかと思った。ただし、いまのところ彼が中心的なテーマと考えている日々の「観察と記録」を、日誌(Log)のようにまとめていくシリーズは、より注意深く組織化していかないと、とめどなく拡散していく危険を感じる。個々の作品を結びつけていく「美しさ」という基準が、まだひ弱なものに感じられるのだ。それよりはむしろ、今回は展示されていなかったが、もっとコンセプチュアルな志向性の強い「Type」(数字とアルファベット)、「Banknotes」(紙幣)、「Wine Collection」(ワインの色味のコレクション)といった作品群の方に、彼らしい鋭敏な感覚と細やかな手わざの妙がよく発揮されていると思う。これらをさらに深化させていくか、「Log」シリーズとうまく合体させていくことで、新たな方向性を見出すことができるのではないだろうか。
2010/04/22(木)(飯沢耕太郎)
村林由貴 個展「溢れ出て止まない世界」
会期:2010/04/10~2010/04/25
GALLERY RAKU[京都府]
全紙サイズの紙を20枚ほど貼り合わせた巨大な絵画が天井と壁に3点。残りの壁には過去の代表的な作品が展示され、床では大作が公開制作でまさに進行中だった。画風は、具象的モチーフによる幻想的な世界からストロークを強調した抽象画へと移り、現在は花や触手を思わせる形態が無限増殖するスタイルに。大学生にして回顧展とは気が早いかもしれないが、アイデアとモチべーションが怒涛のように湧き出てくる状態であることはよくわかった。
2010/04/21(水)(小吹隆文)
ボストン美術館展
会期:2010/04/17~2010/06/20
森アーツセンターギャラリー[東京都]
レンブラント、ミレー、モネ、ゴッホなど、キラ星のような名前が並ぶ。でも、超高層ビルの52階で展示することが許されたくらいだから、国宝級には手が届かない作品が大半。とはいえ、モネの《ルーアン大聖堂》、ドガの《田舎の競馬場にて》、ゴッホの《オーヴェールの家々》は、それだけでも見に行く価値があった。このあと京都に巡回するそうだが、名古屋ボストン美術館へは行かないらしい。
2010/04/20(火)(村田真)
プレビュー:松井紫朗 展 Hundreds of Gardens
会期:2010/05/18~2010/06/12
アートコートギャラリー[大阪府]
“内側と外側”や“あちら側とこちら側”といった両極を連結させたり反転させることで斬新な空間概念を提示してきた松井紫朗。彼が一貫して追求してきた世界を、初期作品から近作までを通して展観。時系列の回顧展形式をとらず、さまざまな年代、形式の作品群を緊密に連携させることで、その造形思考を浮き彫りにする。
2010/04/20(火)(小吹隆文)