artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

森下泰輔「藝術資本論」

会期:2010/03/27~2010/04/10

サテライツ・アートラボ[東京都]

神保町の裏通りにできた銀座芸術研究所のサテライト。森下は、レンブラントの《水浴の女》をはじめ、クールベ《世界の起源》、マネ《草上の昼食》、ピカソ《赤い椅子にすわる裸婦》など名作の模写の横に、バーコードを描いた同サイズのタブローを併置した。模写した名作は、どれも女性を性的欲望の対象として描いたものばかり。そうした描く側(男)と描かれる側(女)の関係は、「他者の欲望」を「象徴交換」する「資本主義」の本質に近いと森下はいうのだが、そんな理屈より、まずはその模写の技術に目を奪われてしまう。笑えるのは、スターツヴァントの《L.H.O.O.Q.》の模写。スターツヴァントはシミュレーショニズムのアーティストで、《L.H.O.O.Q.》といえばデュシャンが《モナ・リザ》にヒゲを描き加えたパロディ作品。つまりこれ、レオナルドを引用したデュシャンをパクったスターツヴァントを模写した森下のオリジナル作品なのだ。

2010/04/01(木)(村田真)

井崎聖子展 共振-resonance-

会期:2010/03/29~2010/04/03

藍画廊[東京都]

一見サラッと円を描いているように見せかけて、じつはなんども重ね塗りをして構築した画面だそうだ。そうは見えないところが奥ゆかしいというか、徒労というか。

2010/04/01(木)(村田真)

田中千智「輝く夜に」

会期:2010/03/29~2010/04/03

ギャラリー現[東京都]

黒い背景に人物。建物を描いた絵もある。なかなか達者な筆づかい。黄金町では肖像画家として名をあげたから、こんどは遺影画家をやったらどうだろう。葬式のときに飾るやつ。写真じゃものたりないって人、けっこういると思う。これはもうかるぞ。

2010/04/01(木)(村田真)

アートフェア東京2010

会期:2010/04/02~2010/04/04

東京国際フォーラム[東京都]

今年も現代美術系の若手画商たちは展示ホール内ではなく、ロビーに仮設壁を立てて展示していた。そんな差別せずに、展示ホールの半分しか使ってないんだから入れてやれよと思うのだが、ひょっとしてバーゼルのような活気あふれるフリンジをねらっているのか(そのわりに規模がケタ違いに小さいが)、それとも彼ら自身がホール内に出展するのを望んでないのか(古美術と一緒じゃイヤだとか、外のほうが安いとか)。ま、どうでもいいけど、なんか今年は現代美術より古美術系が目についたなあ。

2010/04/01(木)(村田真)

永原トミヒロ展

会期:2010/03/29~2010/04/10

コバヤシ画廊[東京都]

人影のない街並みを青白く描いた平面作品。三叉路や電柱などモチーフは日常的なものだけれど、場所が特定できないばかりか、朝もやなのか夕暮れなのか、時間も定かではない、不思議な絵だ。おのずと死の光景を連想させるが、たとえば正木隆と似て非なるのは、正木隆の絵には重力から解き放たれたかのような浮遊感があるのにたいし、永原の絵にはむしろ地面がしっかりと描かれ、その重力の圏内で水平的に見た死の光景だからこそ、とてつもないリアリティを感じるのかもしれない。

2010/04/01(木)(福住廉)