artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

プレビュー:「ロゴパグ~不思議なスパイス~」森田麻祐子・中村協子 2人展

カフェ&ギャラリー アトリエとも[京都府]

会期:2010/05/14~2010/05/30(金・土・日)
美術家のムラギしマナヴと中村協子、ライターの酒井千穂が「スコップ・プロジェクト」を結成。ハンディキャップを持つ青少年の社会的支援を目的とする作業所を舞台に、今後1年間で6つのアートプロジェクトを開催する。オープニングは森田麻祐子と中村協子の2人展。今後、中谷有紀展、小沢さかえ展などが予定されており、その動向が注目される。

2010/04/20(火)(小吹隆文)

プレビュー:アートフェア京都/超京都 現代美術@杉本家住宅

アートフェア京都
会期:2010/05/07~2010/05/09
ホテルモントレ京都4F客室[京都府]
超京都 現代美術@杉本家住宅
会期:2010/05/15~2010/05/16
杉本家住宅[京都府]

5月の京都で2つのアートフェアが2週連続で開催される。ひとつはホテルのワンフロアを貸し切って開催される「アートフェア京都」。もうひとつは文化財の伝統建築が舞台の「超京都」だ。関西のアートフェアといえば、大阪の堂島ホテルで開催されている「ART OSAKA」があり、昨年は神戸でも「アートマルシェ」が開催された。さらに京都で2つと聞くと、さすがに飽和感は否めない。アートフェア林立というこれまでになかった状況は、関西の美術業界にどのような影響を及ぼすのだろう。ともかく現場に出かけて、その次第を確認しておきたい。

2010/04/20(火)(小吹隆文)

周育正:レジデンシー・グッズ

会期:2010/04/17~2010/04/25

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

横浜市と台北市によるアーティスト交流プログラムで、3カ月間BankARTに滞在していた周さんの発表。作品は映像で、「わたしはTAV(Taipei Artist Village)の補助する10万台湾ドル、日本円で285,000円をもって横浜にきた」とか、「池田さんから暖かいお招きをいただき、とてもおいしい日本料理屋でご馳走になった」とか、「わたしもこの交流プログラムが未来に向けて発展する可能性と、その資金の出所について考えている」とか、英文が流れるばかり(卓上のパソコンの画面では日中両国語が見られる)で、画像が出てこない。いつ「本編」が始まるのかと思ったら文章だけで終わってしまった。その両脇には、「アーティスト」「アート・インスティテューション」「カルチュラル・デパートメント」の3者の関係がグラフで示されている。どうやら周さんは、レジデンスに招かれたこと自体を自己言及的に作品化しようとしたらしいのだが、そのわりにレジデンシープログラムの経済的仕組みに肉迫するわけでもないし、その政治的背景を暴露しようというつもりもないらしい。どこにも着地できない中途半端さが残る。それがねらいか? まさかね。

2010/04/17(土)(村田真)

2010年三影堂攝影奨作品展 交流 Confluence

会期:2010/04/17~2010/06/15

三影堂攝影芸術中心[中国・北京]

2007年に北京郊外の朝陽区草場地に設立された三影堂攝影芸術中心(Three Shadows Photography Art Centre)が主催して、昨年から始まった三影堂攝影奨。今年もおよそ210名(そのうち女性が4分の1)の写真家たちの力作が寄せられ、フランソワ・エベル(フランス)、エヴァ・レスピーニ(アメリカ)、カレン・スミス(イギリス、北京在住)、飯沢耕太郎(日本)、そして三影堂の創始者である榮榮(ロンロン)(中国)の審査によって、1981年生まれの張暁(ジアン・シアン)がグランプリにあたる三影堂攝影賞に選ばれた。柔らかな色調で現代中国の人物群像を描き出したシリーズで、その若者らしい躍動感のある被写体へのアプローチが高く評価された。ほかにもいい作品が多く、全体的には昨年よりもレベルが上がっているように感じた。ただ、作品の応募点数が去年より100点あまりも減っているのが気になる。広報活動がうまくいかなかったようだが、若い意欲的な写真家たちの活動の受け皿として機能させるためには、もう一工夫が必要なのだろう。見る者をワクワクさせるような作品が、もっと増えてきてよいと思う。
その今年の三影堂攝影奨作品展は、フランスのアルル国際写真フェスティバルと提携した「草場地春の写真祭2010」の一環として開催された。南仏のアルルで毎年7~9月に開かれるアルル国際写真フェスティバルは、1970年のスタートという長い歴史を誇る写真祭だが、それが中国の、まだ国際的にはほとんど知られていない写真センターの活動とリンクするというのは、ひとつの事件といえる。三影堂だけではなく、近年ギャラリーやアーティストのアトリエが急増して「芸術区」として注目されている草場地一帯で、30近い写真展が開催され、シンポジウム、ポートフォリオ・レビュー、スライド・ショー、コンサートなどの多彩な企画が展開されている。
ただこの催しが今後もうまく続くのかが心配だ。というのは、水面下できわめて深刻な事態が起こっているからだ。昨年あたりから、草場地一帯を再開発して、マンションやショッピングセンターを建設しようという動きがあり、「草場地春の写真祭2010」のオープニングの前々日に、三影堂にも正式に土地収用の通告が届いたのだ。つい最近も草場地に近い正陽芸術区で同じような問題が持ち上がり、当局が雇ったと思われる暴漢の襲撃で、日本人を含むアーティスト数名が負傷するという事件が起こったばかりだ。もちろん、表現の自由を求めて、時に政治的に過激な方向に走りがちなアーティストたちの存在は、政府や市当局にとって好ましいものとは言えないだろう。だが今回の事態はそのような「思想弾圧」というよりも、単純にここ10年あまりの不動産バブルによって、企業や住人たちのあいだに湧き上がってきている、手っ取り早くお金を儲けたいという気運に乗じたということのようだ。
だが、せっかく三影堂攝影芸術中心を立ち上げ、「草場地春の写真祭」をスタートさせたばかりの写真家たちにとってはまさに一大事だ。この「草場地問題」の推移は、写真に限らず、中国の現代文化、現代美術の将来を占う試金石になるだろう。草場地には三影堂の建物の設計者で、スケールの大きな美術作品でも知られる艾未未(アイ・ウェイウェイ)のアトリエもある。彼を含めて、アーティストたちがどのようにして自分たちの権利を主張し、活動を続けていくのか、注意深く見守るとともに、できる限りの支援をしていきたいと思っている。

2010/04/17(土)(飯沢耕太郎)

絵画の5つの部屋

会期:2010/03/27~2010/07/04

兵庫県立美術館[兵庫県]

兵庫県立美術館が所蔵する「山村コレクション」を中心に、現代絵画の名品を5部構成で展覧。なかでも白髪一雄の大作10点が並んだ第4部は見応えがあった。所蔵品をアレンジして常設展示に付加価値を与える試みは大歓迎。今後も工夫を凝らして美術館のポテンシャルをどんどん引き出してほしい。

2010/04/17(土)(小吹隆文)