artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
第4回展覧会企画公募

会期:2010/03/06~2010/04/25
トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]
キュレーターの支援育成を目的とする「展覧会企画」の公募展で、今回は入選したオル太、土橋素子と仲島香、菊地容作の3組が1フロアずつ展覧会を実現。オル太は大量の素材を持ち込んで部屋全体を田舎の風景に変え、土橋と仲島はウォールペインティングの上に、ドイツで知り合ったアーティストらの作品も交えて展示、菊地は肉屋の店頭と、その舞台裏を暴き出すようなインスタレーションを発表した。3つとも選ばれるほどのおもしろさは感じるが、どれも展覧会としてもう一歩の感は否めない。パンフレットの審査員講評を読むと、珍しく会田誠がアカデミズムに対して静かな怒りをぶつけていた。会田をマジにさせてはいけない。
2010/04/13(火)(村田真)
レゾナンス 共鳴──人と響き合うアート

会期:2010/04/03~2010/06/20
サントリーミュージアム[天保山][大阪府]
昨年春開催の「インシデンタル・アフェアーズ」展に続く、第二弾の美術展。「レゾナンス(共鳴)」をテーマに、人が生きるうえで必然的に抱く思い、「生と死」「喜び」「悲しみ」「愛」「憎しみ」「笑い」などを20名のアーティストのさまざまな作品によって紹介する。作品ではなく、観る者と作品の関係を指し示している今展のテーマ自体も興味深く、有名なアーティストから若手の作品まで、表現手法も多岐にわたる作家の展示構成も前回に増して見応えがある。ただ、この館特有の空間のつくりや照明の影響のせいだが、作品自体の味わい深さを充分に堪能するまでには至らなかったものもあったのが惜しい。しかしながら、丁寧に工夫、熟考されたものであるのが良く解るし、それぞれの意味や視覚的な対比から作品を楽しめる点も面白い。美術に日頃あまり馴染みのない人にこそ足を運んでほしい展覧会だと思った。
2010/04/09(金)(酒井千穂)
木村恒久「キムラ・グラフィック《ルビ》展」

会期:2010/03/29~2010/04/10
ヴァニラ画廊[東京都]
普段はフェティッシュ/エロティシズム系の写真やイラストを中心に展示している東京・銀座6丁目のヴァニラ画廊で、やや珍しい展覧会が開催された。木村恒久は1960~64年に日本デザインセンターに所属するなど、戦後の日本のグラフィック・デザインの高揚期を担ったひとりだが、同時に「国家」「戦争」「イデオロギー」「都市」などをテーマにした、近代文明を痛烈に批判するフォト・コラージュ作品でも知られていた。今回の「キムラ・グラフィック《ルビ》展」では、まさに1930年代のジョン・ハートフィールドらの政治的、批評的なコラージュの流れを汲む、70~80年代の切り貼りによるフォト・コラージュ作品に加えて、60年代のクールでポップなグラフィック、ポスターなども展示されており、2008年に亡くなったこの過激なデザイナーの全体像が浮かび上がってくるように構成されていた。
だが、木村の真骨頂といえるのは、理知的な文明批判というだけではなく、どこか土俗的、魔術的な「情念」の世界にもきちんと目配りしていたことではないだろうか。1984年の舞踏集団「白虎社」のポスターの、どろどろとした百鬼夜行的なイメージの乱舞から見えてくるのは、彼が地の底から湧き上がってくるような土着の神々(俗神)のエネルギーの噴出に、大きな共感を寄せていたということだ。木村のユニークな仕事は、日本の写真・デザインの沈滞ムードを吹き払うひとつの手がかりになっていくかもしれない。
2010/04/09(金)(飯沢耕太郎)
レゾナンス 共鳴 人と響き合うアート

会期:2010/04/03~2010/06/20
サントリーミュージアム[天保山][大阪府]
生と死、喜び、悲しみ、笑いなど、人間の根源的な感情を刺激する作品ばかりを集めた展覧会。国内外の20作家が出品しているが、海外組がキーファーやロスコなど大御所が多いのに対し、国内作家は小泉明郎や金氏徹平など若手が中心だった。これには年内で休館するサントリーミュージアム[天保山]から日本の若手作家に贈るエールの意味があるという。テーマ主義で作品を駒として扱うのではなく、個々の作品との対話を重視しているのも本展の特徴。まるでミュージシャンがアルバムの曲順に工夫を凝らすように、本展では作家の配置にこだわりが感じられた。特に前半の流れは秀逸で、イケムラレイコとマルレーネ・デュマスで静かに始まり、ポール・マッカーシーで転調した後、ラキブ・ショウと小谷元彦でスピリチュアルな空気感を作り出し、伊藤彩で一息ついてからジャネット・カーディフの《40声のモテット》で一気に高揚の頂点へと持って行かれた。後半は線的な流れではなく、テイストの違う作品を散りばめられた万華鏡的な世界が広がっていた。ビートルズの『アビィ・ロード』のA面とB面が逆になった感じとでも言えばご理解いただけるだろうか。こんな見方が果たして正しいのか自信はないが、1枚のアルバムを聞く感覚で展覧会を体験するのも悪くないものだ。
2010/04/09(金)(小吹隆文)
明るい上映会

会期:2010/03/30~2010/04/11
企画ギャラリー・明るい部屋[東京都]
東京・四谷のギャラリー、明るい部屋の「一周年記念」ということで開催されたスライドショー企画。同ギャラリーのメンバーである秦雅則、遠矢美琴、三木義一、小野寺南のほか、「これまで当ギャラリーの展示やワークショップに参加してくださった若手作家」(エグチマサル、中島大輔、古田直人、元木みゆき、渡邊聖子など)24名の作品を、A、B、C、Dの4つのグループに分けて連続上映している。全部見ると2時間近くなるのだが、けっこう面白い作品が多かったのでつい最後まで見てしまった。映像を一コマずつ流していく純粋なスライドショーもあるが、動画と組み合わせたり、音を入れたり、画像処理をしたりと、けっこう手の込んだものが多い。パソコンでの入力、出力や、プロジェクターの精度も上がってきているので、このような企画が簡単に成立するようになってきたということだろう。
ただ、作りやすく、発表しやすくなっているということは、ただの映像の垂れ流しになる危険も増しているということだ。実際に退屈きわまりなく、見続けるのが苦痛になってしまう作品も少なくなかった。逆にきちんとコンセプトを立てて作り込んでいったり、奇想天外なアイディアを膨らませたりしていけば、かなり面白くなる可能性もある。前者の代表がスライドショーという枠組みを逆手にとって、10分間同じ岩の写真を上映し続けた渡邊聖子の「否定」、後者の代表があまりにも不穏当過ぎて、ここでは詳細を書くことができないほどの破天荒な魅力にあふれる古田直人の「SCOTCH Magnetic Tape」ということになるだろう。特に古田の作品には度肝を抜かれた。彼の秘められた才能が思いがけないかたちで爆発している。
2010/04/08(木)(飯沢耕太郎)


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