artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
伊藤若冲 特別展「百花若冲繚乱」

会期:2010/03/19~2010/06/13
金刀比羅宮[香川県]
一昨年4月から京都国立博物館 文化財保存修理所にて修復作業が行なわれていた奥書院「上段の間」(通常は非公開)の伊藤若冲筆《花丸図》が、昨年8月に修復完了、特別公開されている。数年前の公開の際にも足を運んだのだが、この機会に再び訪れた。当然だが《花丸図》の前に立ってみても、どこがどのように修復されたのかはわからない。前回はとにかく花図鑑を拡げたようなその美しさに見とれた記憶があるのだが、あわせて公開された《燕五羽》もじっくりと見ていると、改めて若冲の観察眼と偏執的な視線がうかがえてその人物像の想像もまた楽しい。第二会場の高橋由一館には修復前と修復後の《花丸図》を比較した資料の展示もあった。比較してみると、蘇った色彩や特に大きな修復がされた箇所もよく解る。もしかしたら先にこちらの展示を見たほうがよかったのかも知れない?! 少し後悔にも似た気分だったが、やはり見に行ってよかった。
2010/04/04(日)(酒井千穂)
有賀慎吾 The Yellow Show
会期:2010/03/31~2010/04/11
Art Center Ongoing[東京都]
新進気鋭のアーティストとして注目を集めている有賀慎吾の新作展。有賀の代名詞ともいえる黒と黄色のデンジャラス・カラーはそのままに、これまでとは打って変わって観客参加型の作品を発表した。細長いパイプを自由に組み合わせることができる造形物を組み換えるように観客に促したり、怪しいお面をつけてビデオに写るように勧めたり、観客の感想を自由にノートに書きつけられるように設定したり、近年の観客参加型作品の傾向を強く意識した作品だ。だが、そこには観客参加型のアートの傾向に相乗りしようとする浅はかな戦略性というより、むしろ観客の参加をむやみに称揚しがちな昨今のアートそのものへの批評性がひそんでいる。いや、正確にいえば、それは批評性というより、底知れぬ悪意であり、それこそ現在の現代アートにもっとも欠落している精神である。有賀がすぐれているのは、作品の根本はそのままに、さまざまなアプローチによって、その重大な欠陥を補うことができるからだ。
2010/04/04(日)(福住廉)
きょう・せい

会期:2010/04/02~2010/04/25
京都市立芸術大学ギャラリー[京都府]
最近、美大が都心にサテライト・ギャラリーを設けるのが流行りだが、京都芸大も二条城前にギャラリーを開設した。その開館記念展の第1期に、アンテナ、苅谷昌江、若木くるみら13組が出品。といっても一人ひとりの作品が整然と並んでいるわけではなく、どれがだれの作品なのかよくわからないばかりか、いったいどこまでが作品なのかすら判然としない渾沌ぶりなのだ。もう、勝手にしなさい。
2010/04/03(土)(村田真)
たゆたう庭:山本基 個展

会期:2010/04/02~2010/04/30
eN arts[京都府]
北浜のサイギャラリーへ芳木麻里絵展を見に行ったら、肝心のギャラリーがもぬけの殻。どうやら移転しちゃったみたい。行く前にちゃんと調べましょうね。時間もないので、淀屋橋から京阪に乗って京都の祇園四条に出て、八坂神社脇のeN artsをめざす。が、今日は花見客で四条通は人であふれ、なかなか前に進まない。ようやく脇道に入ったものの、今度は茶屋や料亭が並ぶだけでギャラリーらしきものが見当たらない。と「村田さーん」との声が。ちょうど通りすぎようとしたとき、たまたま表に出ていた作者の山本氏が声をかけてくれたのだ。高級料亭みたいなたたずまいの建物がeN arts。というわけで、茶室や地下室まで設けたそのギャラリー空間にまずは驚く。床に塩で迷路のようなパターンを築いていく山本のインスタレーションは、空間そのものが重要なモチベーションになるから、今回はやりがいがあったに違いない。いつもの幾何学的な整った線ではなく、自由な線のように見えた。
2010/04/03(土)(村田真)
レゾナンス 共鳴──人と響き合うアート

会期:2010/04/03~2010/06/20
サントリーミュージアム[天保山][大阪府]
国立国際のついでに寄ってみました。ついでのわりに楽しめました。出品作家20人中、絵画が半数近くを占めるが、「絵画の庭」と重なるのは草間彌生(こっちの作品のほうがいい)と法貴信也のふたりだけ。あとはマーク・ロスコ、アンゼルム・キーファー、マルレーネ・デュマス、イケムラレイコらベテランが多い。絵画以外では、大理石の板に牛乳を満たしたヴォルフガング・ライプ、筋肉の標本みたいな人馬像を出した小谷元彦、40台のスピーカーから聖歌を流すジャネット・カーディフら、既知の「名作」に再見できた。いちばん気に入ったのは、暗い部屋の床に近い壁に穴を開け、のぞくと明るい光と緑の雑草が目に入る仕掛けのインスタレーション。作者はライアン・ガンダー。絵画でなければ、このくらいやらなくちゃ。
2010/04/03(土)(村田真)


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