artscapeレビュー

アイヌの美──カムイと創造する世界

2010年02月15日号

会期:2009/11.23~2010/01/11

京都文化博物館[京都府]

ロシア民族学博物館が所蔵するアイヌ民族の資料から215点を展示。衣類や木製道具などの模様や図柄の「美」に焦点を当てた展覧会。衣服の刺繍や、小刀などの道具に彫られたさまざまな模様の美しさもさることながら、丁寧に時間をかけてつくられ、大切に扱われてきたことがうかがえる資料群には圧倒的な魅力と迫力がある。魔除けやお守り、儀式でシャーマンが用いるかぶり物などもあったが、トナカイの足、セイウチや鮭の皮など見たこともない素材にも目を見張った。厳しい自然の環境で暮らす人々の切実な祈りが込められた知恵と工夫の塊であることがどの資料からも伝わってきてとにかく凄い。日本初公開というアイヌ絵12点の展示も見応えがある。江戸時代から明治のはじめに活躍した絵師・平沢屏山の作品なのだが、《種痘図》《熊送り図》など、実際に蝦夷地に住みながら描いたというアイヌの生活は、なんとも生々しい臨場感だ。会場の解説は雑なものに感じられたが、かえって展示資料の用途や使用場面など詳細が知りたくなってカタログも購入。素晴らしい内容だった。

2010/01/06(水)

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