artscapeレビュー

6+│アントワープ・ファッション展

2009年06月01日号

会期:2009/04/11~2009/06/28

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

マルタン・マルジェラを筆頭に、アントワープシックスと呼ばれるデザイナーたち、さらにはその後の新世代までを含めて、アントワープ・ファッションの全貌に迫る野心的な企画。図録は写真資料とテキストともにたいへん充実しており、堅実な研究にもとづいていることがよくわかる。とくに言説分析の手法によって、当地の新聞記事からアントワープ・ファッションの変遷を丁寧に浮き彫りにするなど、すぐれた研究内容が反映されていたように思う。けれども、じっさいの展示は、まったくもって落第点。衣服、写真、解説パネル、映像などで構成していたが、空間の容量にたいして作品の点数が圧倒的に乏しいから、貧相で寒々しい展示になってしまっていた。ファッションショウを見せる映像も、壁に埋め込んだモニターを狭い通路にただ並べているだけだから、鑑賞しにくいことこの上ない。展覧会のプロフェッショナルが関与したとは到底思えない、じつに粗悪な展示だった。しかも、一部のデザイナーの日本語表記が一般的に流通している表記と異なっていた点も気になった。すでに「クリス・ヴァン・アッシュ」として定着している表記をわざわざ「クリス・ヴァン・アッス」と書き表わすことの意義がよくわからない。たえず微細な差異を捏造することで正統性を牛耳ろうとするアカデミズムのいちばん悪い部分が露呈してしまっていたのではないか。

2009/04/28(火)(福住廉)

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