artscapeレビュー
見えていた風景「コトバ」寺島みどり
2009年05月15日号
Neutron(京都)[京都府]
大阪、東京、京都の3会場で新作が発表された一連のシリーズ展。「見えていた風景」というタイトルに加え、大阪は「森」、東京は「空」、京都では「コトバ」というテーマがそれぞれ設定されていたが、最終会場(京都)の展示しか見ることができず心残りだ。展示は大きな作品が3点と、ドローイング作品が3点。これまでに見た、彼方を望むようなイメージの絵画とは印象がずいぶん違っていたので少し驚いた。育てている植物が主なモチーフなのだという。一見したときには、勢いのあるストロークから激しさも感じたが、至近距離でじっくりと見ると複雑な色層が確認できる。見れば見るほど、色が染み込んで画面の奥深くへと沈んでいくような印象に変わっていくから不思議。最近は目の前にある景色や日々の暮らしのなかで目にしているものにこそリアリティを感じるようになったと寺島は話してくれたが、穏やかに移り変わるイメージの作品にはその美しさと説得力が充分に表われていてこちらに響いてくるようだった。
来月には岡山県の奈義町現代美術館での個展も予定されている。6月21日(日)には館内のカフェにてアーティストトークも開催。旧作から最新作までを展観するというから見逃せない。
寺島みどり展「見えていた風景」
会期:6月21日(日)~7月26日(日)
会場:奈義町現代美術館
2009/04/28(火)(酒井千穂)