artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

千葉鉄也展

会期:2017/03/13~2017/03/25

クロスビューアーツ[東京都]

千葉が絵画を始めてもう20年以上になるが、その姿勢は一貫している。それはつまり「絵画」だ。絵画とはなにか、絵を描くとはどういうことか。それを絵を描くことで表現し続けている、といっていい。例えば《ミズウミ》。画面上から薄い青灰色、下から濃い青灰色の絵具をたっぷり塗っていき、徐々に混ぜてグラデーションにする。できた画面は波立つ湖面のようにも見えるが、それはあくまで絵具を塗り混ぜるという行為の結果にすぎないのだ。もうひとつ、タイトルは忘れたが、とても気に入った作品に、たしか正方形の画面に幅1センチほどの線がジグザグに交錯する絵があった。線は画面の縁まで来ると折り返し、また縁まで来ると折り返し……を繰り返して画面を埋め尽くしている。一見、絵具で線を延々と引き続けたように見えるが、じつはそうではなく、記憶に間違いがなければ、初めに1本のマスキングテープで画面をジグザグに覆い、そのテープをはがしながら余白に絵具を塗っていったのだという。だから絵具はつねにキャンバスの白い部分(とテープの上)に塗られ、絵具の上に重なることはない。絵画の原理・原点を見せられたようで、ハッとする。

2017/03/23(木)(村田真)

カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命

会期:2017/02/11~2017/03/26

埼玉県立近代美術館[埼玉県]

キュビスムやバウハウスの幾何学革命をセンスよく、ポピュラー化して大成功した商業的なグラフィック・デザイナーの軌跡をたどる。彼が途中からシュルレアリスムに傾倒し、混迷したあたりの作品をあまり知らなかったので興味深い。だが、逆にカッサンドルは、アーティストとしての自我が芽生え、悩み始めたことが、自殺という悲劇をもたらしたのだろう。

2017/03/22(水)(五十嵐太郎)

artscapeレビュー /relation/e_00038850.json s 10134674

ヨッちゃんビエンナーレ2017「コラージュ・キュビスム」

会期:2017/03/22~2017/03/31

オリエアート・ギャラリー[東京都]

加藤義夫氏が企画する世界最小かもしれないビエンナーレ。ヨッちゃんは年齢も身長も守備範囲もぼくとほぼ同じだが、違うのは彼がキュレーションもできること。その違いがこうして展覧会を企画する側と、それを書く側に分断するわけだ。それはともかく、同展は昨年秋に神戸で開かれたものの東京巡回になる。出品は、青木恵美子、植松琢磨、小野さおり、川口奈々子ら11人。多くの作家は、彼があっちこっちで審査員や推薦委員を務めていた展覧会から選ばれているが、ぼくも一緒に審査した展覧会もあるので、数名は知っている。大きな特徴は女性が8人、つまり大半を占めること。そのせいか全体に色があり、入念に描き込んだにぎやかな作品が多い。そんなに広くないスペースなので大きな作品は少なく、それがいっそう密度を濃くしている。

2017/03/22(水)(村田真)

周代焌 「Back To」

会期:2017/03/24~2017/04/02

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

台北市と横浜市のアーティスト交流プログラムで横浜に滞在し、BankARTのスタジオで制作していた周さんの成果発表展。福島の原発事故に触発されたという想像上の災害場面を、ロープや有刺鉄線といった具体的イメージと抽象的な色と線の組み合わせで描いている。目を引くのは支持体で、基本キャンバスなのだが、大きめの作品は枠に張らず、四隅にハトメを入れて天井から吊るしているのだ。しかも隅が引っぱられて尖ってるようにカットしたりしていて、支持体をイメージの単なる置き場にするだけでなく、それ自体でなにごとかを語らせようとしているのだ。逆に、小さめの作品は5センチほどの厚みを持たせたり、10×140センチという超横長の画面にしたり、ありきたりのキャンバス画に抵抗を試みている。

2017/03/22(水)(村田真)

プレビュー:ライアン・ガンダー─この翼は飛ぶためのものではない─

会期:2017/04/29~2017/07/02

国立国際美術館[大阪府]

ライアン・ガンダーといえば、昨年に岡山市で行なわれた「岡山芸術交流」の作品が思い浮かぶ。市街地の駐車場に展示されていた、墜落したUFOみたいなオブジェだ。また、2010年に大阪のサントリーミュージアム[天保山]で行なわれた「レゾナンス 共鳴」にも参加しており、展示室内にフェイクの壁をつくって、壁の割れ目から光と音を発するインスタレーションを発表していた記憶がある。筆者が彼について知っているのはこれぐらいだ。ガンダーは英国の作家で、新たなコンセプチュアル・アートの旗手と目されているらしいが、当方は彼について無知なので何とも言いようがない。GWから大阪の国立国際美術館で始まる個展では、彼の代表作と新作約60点が見られる。この機会に彼のことを正しく知りたい。また、同館のコレクション展もガンダーが企画するとのこと。むしろこちらのほうが彼の作家性を鮮明に示してくれるかもしれない。

2017/03/20(月)(小吹隆文)