artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
マティスとルオー展 ─手紙が明かす二人の秘密─
会期:2017/01/14~2017/03/26
パナソニック 汐留ミュージアム[東京都]
近刊の『マティスとルオー 友情の手紙』(みすず書房)でも示されたように、ともにギュスタブ・モローの弟子であり、生涯交流を続けた2人の軌跡をパラレルに紹介した企画。一見作風がだいぶ違う画家だが、意外な接点を持っていたことを知る。ただ、やはり若き日のルオーは象徴主義、マティスは印象派の影響を受け、その後に各自の個性を存分に発揮している。
2017/03/13(月)(五十嵐太郎)
第9回絹谷幸二賞贈呈式
会期:2017/03/13
学士会館[東京都]
具象系の若手画家を支援する絹谷幸二賞も今年で9回目。ぼくはいつから推薦委員をやってるのか忘れたけど、だいたい毎年交互に直球と変化球を投げ分けている。直球はど真ん中の賞狙い、変化球は「これでも具象画?」「これでも絵画?」と問う問題提起型だ。そしたら一昨年の直球(久松知子だ)がストライクの奨励賞を獲ったのに続き、今年の直球も同じく奨励賞に輝いた。推薦したのはサブリナ・ホーラク、この春東京藝大の博士を修了するオーストリア生まれのハーフだ。といってもぼくは過去2回作品を見ただけで、ご本人にお会いしたことがなかったので、ごあいさつがてら贈呈式に出席した次第。
彼女の作品はユニークで、ベニヤ板を人体のかたち(モデルは本人らしい)に切り抜いて着色し、さまざまに組み合わせたレリーフ状の絵画。人体のポーズも色使いもポップでキッチュな香りがする。どっちかというと直球でなくて変化球だったかも。ちなみに絹谷幸二賞は、あっさりした風景画を描く西村有。悪くはないけど、サブリナに比べると明らかに弱いなあ。ところでこの賞、知名度が低いのは展覧会をやらずに賞(と賞金)を授けるだけだからだろう。受賞作家もせっかくだから作品をお披露目したいだろうし、こっちだって見たいのに。
2017/03/13(月)(村田真)
春日大社 千年の至宝
会期:2017/01/17~2017/03/12
東京国立博物館 平成館[東京都]
ここの建物はひどいけど、さすがに国立だけあって、展示はお金もかけたよい内容である。まだ数百年の歴史の審判を経てない現代アートにはこの重みは出せないし、こんなに多くの来場者を動員できないだろう。ただ、本殿を再現した建築は微妙にラインが違うためにヘンだった。これならば、抽象的なフレームで建築のヴォリュームだけ示し、壁画を入れたら、よかったのでは。
2017/03/12(日)(五十嵐太郎)
ティツィアーノとヴェネツィア派展
会期:2017/01/21~2017/04/02
東京都美術館[東京都]
2016年度は日本イタリア国交150周年でさまざまな展覧会が開催されたが、その最後くらいの企画になるだろうか。フィレンツェの画家と対比しつつ、ベッリーニ→ティツィアーノ→ティントレット/ヴェロネーゼというヴェネツィアの画家の系譜をたどるが、目玉の作品である「ダナエ」と「フローラ」は官能的で傑出しているものの、それ以外はあまりぱっとしない作品ばかり日本に持ってきたように思えた。
2017/03/12(日)(五十嵐太郎)
VOCA展2017 現代美術の展望─新しい平面の作家たち
会期:2017/03/11~2017/03/30
上野の森美術館[東京都]
ネット上でディスられていたVOCA展2017へ。実際に訪れると、作品はそれほど悪いものではなく、むしろそれぞれの評価にあたって、緊張感を伴った言説が構築されなかったことがまずかったのかもしれない。例えば、建築のコンペと同様、公開審査をやるとよいのでは。VOCA賞の幸田千依は、コンピュータで見る小さい画像ではわからないが、実物の巨大なサイズで見ると、日常の視界のズレがじわじわ伝わる。興味を持ったのは、佳作賞の村上華子の《ANTICAMERA(OF THE EYE)》。アナログな題材と手法により、時間をとらえ、表象の限界を触るようなセンスがよい作品。なお、名古屋のアーツチャレンジ2016の審査で選んでいた作家が2人(照沼敦朗と高松明日香)入っており、活躍していた。
2017/03/12(日)(五十嵐太郎)