artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
茶碗の中の宇宙 樂家─子相伝の芸術
会期:2016/12/17~2017/02/12
京都国立近代美術館[京都府]
樂焼の茶碗で知られる樂家の歴史を、各代の茶碗でたどる展覧会。樂焼といえば初代長次郎の名は知っていたし、当代(15代)樂吉左衞門の作品は何度も見たことがある。しかし、ほかの代についてはまったくと言ってよいほど不勉強だった。本展を見て驚いたのは、代による作風の違いが思いのほか大きかったこと。樂家では初代や先代の踏襲を良しとせず、各代が独自の世界を追求してきた。本展ではそれを「不連続の連続」と呼んでいるが、なるほど確かにその通りだ。斬新な方向に振る代があったかと思えば、伝統に回帰する代もある。しかし、外見がいくら変化しようとも、核となる精神は微動だにしないのである。展示について述べると、照明の当て方が効果的で、小さな茶碗に気持ちを集中させることができた。会場全体に心地良い緊張感がみなぎっていたが、これも照明によるところが大である。展示構成は、全体の約2/3が歴代の作品、残る約1/3が当代の作品だった。筆者としては歴代の作品をもう少し多く見たかったが、このあたりは見る者によって評価が異なるだろう。
2016/12/24(土)(小吹隆文)
震災と暮らし ─震災遺産と人びとの記録からふりかえる─
会期:2016/12/20~2016/12/25
東京や海外にとって3.11は、やはりフクシマの原発事故のイメージが強いが、近くの被災地であり、津波被害が大きかった仙台では、これまで逆にあまり表出されなかった。この企画はふくしま震災遺産保全プロジェクトと連携し、全面的に福島の状況とその後を紹介している。写真、映像、壊れた被災物、デジタルのデータ、言葉、アート作品など、さまざまな手法であの出来事を伝承しようと試みる様子からは、すでに忘却されかねない危機意識も感じられた。これらの展示は、いずれつくられる3.11記念館の常設になるのだろう。
2016/12/22(木)(五十嵐太郎)
HITOTZUKI「ALTERRAIN」
会期:2016/12/16~2017/01/28
SNOW Contemporary[東京都]
青を貴重にしたシンメトリックな壁画で知られるHITOTZUKIの個展。キャンバスにデジタルな形態を青系のグラデーションで描いているが、よく見ると定規やコンパスを駆使した手描きであることがわかる。やっぱりキャンバスでは物足りないのか、壁にもツタがはうようにペインティングが延びている。ちなみにHITOTZUKI(ヒトツキ)とは男女のコラボレーションユニットで、「日と月」であり、男と女、陰と陽をも意味するそうだ。
2016/12/21(水)(村田真)
ヴァルダ・カイヴァーノ展
会期:2016/12/16~2017/02/04
小山登美夫ギャラリー[東京都]
鉛筆で描いたドローイングの上から薄く溶いた青系の絵具を塗った絵。塗り残しの余白も含めて受験生の油絵を思い出した。もちろん彼女の絵が受験生レベルってことじゃなくて、逆に受験生絵画をもう少し見直したらいいんじゃないかと。
2016/12/21(水)(村田真)
戸谷成雄 森X
会期:2016/12/16~2017/02/05
シュウゴアーツ[東京都]
角材をチェーンソーで彫り刻んだ「森」シリーズの展示。機械で彫り込んだとは思えないほど心をざわめかせる表面だ。パッと見、旧作かと思ったら10作目だという。初期のころは1作ごとに彫りが深く激しくなっていったように記憶するが、近年は安定してきたのだろうか。1987年にシリーズの第1作を発表したというから、ならせば3年に1作のペース。全部並べたら壮観だろうな。
2016/12/21(水)(村田真)