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美術に関するレビュー/プレビュー

モダン百花繚乱「大分世界美術館」──大分が世界に出会う、世界が大分に驚く「傑作名品200選」

会期:2015/04/24~2015/07/20

大分県立美術館[大分県]

オープニング展は、モダン百花繚乱「大分世界美術館」である。子どもを大量に招待しているらしく、にぎやかな館内だった。キュレーター総出で、それぞれの得意分野に焦点をあてつつ、近代からの歴史を振り返りながら、大分の作家、作品とつなぐ企画である。近現代美術以外に、工芸、デザイン、日本画も幅広く含むが、ただ全体としてちょっと散漫な印象も受けた。

2015/05/07(木)(五十嵐太郎)

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フランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵 マスク展

会期:2015/04/25~2015/06/30

東京都庭園美術館[東京都]

ケ・ブランリが所蔵する仮面を一堂に集めた展覧会。改装された東京都庭園美術館の本館と新館でそれぞれ作品が展示された。昨年、国立民族学博物館が所蔵する民俗資料を国立新美術館で展示した「イメージの力」は改めて人類による造形の魅力を深く印象づけたが、それに比べると本展はいかにも中庸な展示で、じつに退屈だった。だが問題は、そうした印象論を超えて、ことのほか根深い。
もっとも大きな問題点は、本展の展示方法が、取り立てて工夫の見られない、凡庸だった点。さまざまな仮面は、ガラスケースの中に収められていたため、鑑賞者はそれらについての解説文を読みながら、一つひとつの造形を鑑賞することになる。美術館においては王道の鑑賞法であるが、本展のような文化人類学的な民俗資料を展示する場合、必ずしも王道として考えることはできない。なぜなら、それらの民俗資料は本来的に美術館から遠く離れた異郷の地に存在していたものである以上、美術館でそれらを造形として鑑賞する視線には、その土地に根づいていたものを引き剥がしたという暴力の痕跡を打ち消してしまいかねないからだ。1990年代以降のポストモダン人類学やポストコロニアリズムの功績は、そのような展示する側と展示される側の不均衡な権力関係を問題化してきたが、本展の展示構成はそのような学術的な蓄積を前提として踏まえているようにはまったく見えなかった。問題を問題として認識していない無邪気な素振りが、問題である。
例えば、前述した「イメージの力」展は、まさしく古今東西の仮面を凝集的に展示することで、仮面の造形に隠された妖力を引き出すことに成功していた。それが、展示する側の権力性を免罪することには必ずしも直結しないにせよ、少なくとも本来の文脈を、テキストによって解説するという安易な方法ではなく、あくまでも展示という方法のなかで伝えようとしていた点は高く評価するべきである。言い換えれば、展示という方法の芸術性を存分に引き出していたのだ。だが、本展のそれは、そのような芸術性はまったく見受けられなかった。むしろ逆に、(そのような意図が含まれていたわけではないにせよ、結果的には)この美術館の歴史性が帝国主義的ないしは植民地主義的な視線をより一層上書きしてしまっていたようにすら思える。
その「イメージの力」展の関連イベントとして、2014年4月12日、国立新美術館で「アートと人類学:いまアートの普遍性を問う」というシンポジウムが催された。新進気鋭の3人の人類学者による基調講演に、同美術館館長の青木保や写真家の港千尋がコメントするという構成だったが、何より驚かされたのは、いずれの発表にも「普遍性」という言葉が、あまりにも無邪気に用いられていた点である。人類学は、その「普遍性」を徹底的に再検証してみせたポストコロニアリズムやカルチュラル・スタディーズの経験を忘却して、かつての古きよき人類学に回帰してしまったのだろうか。本展の中庸な展示が、そのような「普遍性」の無批判な称揚と同じ地平にあるとすれば、他者への不寛容と攻撃性が増している昨今の社会状況にあっては、十分警戒しなければならない。

2015/05/07(木)(福住廉)

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大原美術館展 名画への旅

会期:2015/04/18~2015/05/31

静岡市美術館[静岡県]

静岡市美術館の大原美術館展へ。コレクションの紹介だけでなく、美術館の歴史を振り返る内容が興味深い。事業家の大原孫三郎が、画家の児島虎次郎のパトロンとなって、同時代のヨーロッパ絵画の収集が始まり、1930年に日本初の西洋美術館が誕生した経緯から、近年の現代アートへのサポートまでをたどる。昨年、久しぶりに倉敷の大原美術館を訪れたが、誇るべきコレクションと街並みだったことを思い出す。

2015/05/05(火)(五十嵐太郎)

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松山賢 個展「ハーイプシィ」

会期:2015/04/28~2015/05/17

みうらじろうギャラリー[東京都]

女の子、土偶、絵具などさまざまなモチーフを行ったり来たりしてる松山の、今回はエロばかりを集めた個展。チンコマンコを合体させた97年の彫刻「きもちいいからだ」から、女体の部分に花柄模様を被せた「ボディ」「ハーイプシィ」シリーズまで、エロエロあります。圧巻はS0号(18×18センチ)の画面に女性器を描いた連作。あっさりとした水彩もあれば、バーネット・ニューマン風の崇高な縦一線もあるし、克明な描写に装飾模様を重ねた油彩もある。値段を見ると、それぞれ2万、5万、8万円(消費税抜き)と3段階に分かれている。これはかかったテマヒマに比例しているんだろうが、買う側にとっては悩ましい価格設定だ。買いたいけど買えないけど。

2015/05/04(月)(村田真)

ダブル・インパクト──明治ニッポンの美

会期:2015/04/04~2015/05/17

東京藝術大学大学美術館[東京都]

ダブル・インパクトとは、幕末に開国してから日本が受けた西洋からの衝撃と、逆に西洋が日本から受けた衝撃という双方向的な影響関係を指す。美術に限らず、こうした異文化が衝突・融合したときの表現にはしばしば目を見張るものがある。出品は東京藝大と、藝大の前身である東京美術学校の設立に尽力した岡倉天心も深く関わったボストン美術館から、河鍋暁斎、小林清親らの近代的浮世絵、ワーグマン、高橋由一、五姓田義松らの初期油絵、狩野芳崖、橋本雅邦らの初期日本画、西洋で人気を博した超絶技巧の工芸品など多彩。いちばんインパクトがあったのは、チラシやポスターにも使われた小林永濯の《菅原道真天拝山祈祷の図》。ヒゲおやじが雷に打たれて身体を硬直させているシーンだが、まるで劇画じゃねーか。永濯のもう1点《七福神》も布袋の肉感的描写が妙にエロっぽくて衝撃的。また、朦朧体の例として出ていた横山大観の《滝》《月下の海》は、それぞれ垂直・水平を強調したミニマル日本画。とくに《滝》は女性器そのものに見える。黎明期の日本画は好き放題やり放題だな。なんでこの奔放さを持続できなかったのか。

2015/05/04(月)(村田真)

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