artscapeレビュー
ダブル・インパクト──明治ニッポンの美
2015年06月15日号
会期:2015/04/04~2015/05/17
東京藝術大学大学美術館[東京都]
ダブル・インパクトとは、幕末に開国してから日本が受けた西洋からの衝撃と、逆に西洋が日本から受けた衝撃という双方向的な影響関係を指す。美術に限らず、こうした異文化が衝突・融合したときの表現にはしばしば目を見張るものがある。出品は東京藝大と、藝大の前身である東京美術学校の設立に尽力した岡倉天心も深く関わったボストン美術館から、河鍋暁斎、小林清親らの近代的浮世絵、ワーグマン、高橋由一、五姓田義松らの初期油絵、狩野芳崖、橋本雅邦らの初期日本画、西洋で人気を博した超絶技巧の工芸品など多彩。いちばんインパクトがあったのは、チラシやポスターにも使われた小林永濯の《菅原道真天拝山祈祷の図》。ヒゲおやじが雷に打たれて身体を硬直させているシーンだが、まるで劇画じゃねーか。永濯のもう1点《七福神》も布袋の肉感的描写が妙にエロっぽくて衝撃的。また、朦朧体の例として出ていた横山大観の《滝》《月下の海》は、それぞれ垂直・水平を強調したミニマル日本画。とくに《滝》は女性器そのものに見える。黎明期の日本画は好き放題やり放題だな。なんでこの奔放さを持続できなかったのか。
2015/05/04(月)(村田真)