artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

石田尚志──渦まく光

会期:2015/03/28~2015/05/31

横浜美術館[神奈川県]

いつだったか忘れたけれど、最初に石田尚志の作品を見たとき(たぶん7、8年前)、絵巻とアニメの時間表現を見事に止揚させてるなあと感心したものだ。だがもっと感心したのは、次に見たとき、部屋の壁を移りゆく光を捉えようとして作品がサイトスペシフィック化していたことだ。もちろん刻々と移り変わる光を捉えきることはできないので、そのつど決断しなければならず、そのいらだちと思いきりのよさが彼の表現主義的な図像に表われているように思えた。モネの連作における筆触と同じく、石田の即興的な筆触も時間によって決定づけられており、それゆえに根拠のない抽象画よりはるかに美しいのかもしれない。しかもとどまることを知らず、まだまだ展開し続けている。これは必見。

2015/03/27(金)(村田真)

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眼と心とかたち 「学芸員N」が出会った大阪府20世紀美術コレクション

会期:2015/03/20~2015/04/04

大阪府立江之子島文化芸術創造センター[大阪府]

大阪府が所蔵する20世紀美術コレクションのうち、長年それらを見つめ続けてきた学芸員N(中塚宏行主任研究員)がセレクトした作品を展示した。その構成は、展示室1で1950~70年代を中心とした関西の戦後美術作家と大阪トリエンナーレのコレクション、展示室2で森口宏一の特集、展示室3は写真で、岩宮武二の佐渡シリーズとリチャード・ミズラックの作品を対比するというもの。なかでも展示室1は、吉原治良、嶋本昭三、松谷武判、津高和一、三尾公三、須田剋太といった面々の作品がひしめき合い、もう少し広い会場でゆったり見せられたら良かったのに、と思うほど贅沢なものであった。この四半世紀、大阪府の美術行政は不安定な歩みを続けているが(市も同様)、コレクション自体は優れたものであり、それらを死蔵させるのはもったいない限りだ。本展の会場以外にも公開の場を広げて、コレクションの有効活用(=企画展の増加)を検討してほしい。

2015/03/26(木)(小吹隆文)

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試写『だれも知らない建築のはなし』

会期:2015/05

ユーロライブ試写室[東京都]

もう30年以上も前に開かれた国際会議に参加した建築家たちが、当時のことを振り返ったインタビュー映画。そんなもん建築に興味ないヤツにはおもしろくもなんともないが、少しでも興味あればこの30年の建築界の盛衰や裏話が聞けてけっこう楽しめる。ことの発端は、1982年にアメリカで開かれた「P3会議」に、磯崎新がふたりの若手建築家を伴って参加したこと。このふたりは後に世界的な建築家として脚光を浴びることになる安藤忠雄と伊東豊雄だが、当時まだ小住宅しか手がけたことがなかった。インタビューはこの3人に加え、ピーター・アイゼンマン、チャールズ・ジェンクス、レム・コールハースといったスター建築家のほか、日本から世界へ建築情報を発信した『a+u』『GA』などの編集者たち。インタビューは個々に行なわれたが、互いの話をつなげてまるで議論を交わしてるように構成されているため、立場の違いや建築観の違いが浮き彫りになっておもしろい。いちばん印象的だったのは、レム・コールハースが日本の建築家はしゃべらない(言葉を重視しない)と批判的に述べていること。理論家として知られる磯崎でさえ、日本の特殊事情を述べることであらかじめ批判を回避しているというのだ。これはもちろん建築に限った話ではないだろう。


映画『だれも知らない建築のはなし』予告編

2015/03/26(木)(村田真)

3331アートフェア2015

会期:2015/03/21~2015/03/29

3331アーツ千代田メインギャラリー[東京都]

アートフェアといえば、画廊が集まってそれぞれ扱い作家の作品を出展する形式だが、これは主催者側がアーティストを選んで出品してもらい、作品を売ることで作家を支援すると同時に「新しいコレクター像」も確立しようというシステム。出品は五木田智央、三沢厚彦、オル太ら名を知られてるアーティストも含めて86組で、アートフェアというよりグループ展、いや個展の集合に近いかもしれない。ちょっとほしいなと思ったのは、「道頓堀」「パチンコ」などネオンサインの部分だけをプリントした藤倉翼、透明アクリルでヤドカリのシェルターをつくるAKI INOMATA、日本の近代絵画に擬態した菊谷達史、人体の一部を彫刻にする今野健太、セルフヌード写真に洞窟壁画のイメージを刺繍した宮川ひかる、CDケースや段ボール箱をタブロー化した末永史尚らの作品。ほしくはないけど、壁に穴をあける小川真生樹の作品(@5万円)は売れたんだろうか、心配になる。余談だが、このアートフェアが毎年ずっと続いたら、そして3331がなくならなければ、1316年後には「3331アートフェア3331」になるだろう。そこまで続けてほしいなあ。

2015/03/26(木)(村田真)

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さいたまトリエンナーレ2016 開催計画発表会

会期:2015/03/25

国際交流基金JFICホール[東京都]

来年秋(2016/9/24-12/11)さいたま市内数カ所で「さいたまトリエンナーレ2016」が開かれる。ディレクターは別府の「混浴温泉世界」などを手がけた芹沢高志、テーマは「未来の発見!」というもの。なにをいまさらトリエンナーレだが、目指すところは「ソフト・アーバニズム(柔らかな都市計画)」。国際展という打ち上げ花火を上げて観客を呼び込むのではなく、街の営みに創造性を吹き込み、人々に開かれた祭典にするためにさまざまなアートプロジェクトを展開していこうというのだ。そのため内外からアーティストを招いて滞在制作してもらい、ここでしか実現できない作品をつくってもらうという。それは理想的だが、いうはやすし。さいたま市の予算が使われる以上(ほかの国際展と遜色ない額とのこと)それなりの観客動員が求められるはずだが、京都の「パラソフィア」がそうだったように、見て楽しめるアートプロジェクトなどほとんどないし、アートプロジェクトで人を集められるとは思えない。それを見越してか、総合アドバイザーの加藤種男氏は「動員目標は掲げず、むしろつくる側を増やしたい。10万人くらい」と発言。つくる側とはもちろんアーティストだけでなく協働する市民も含めてだが、ぜひ実現してもらいたい。

2015/03/25(水)(村田真)