artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
陸にあがった海軍──連合艦隊司令部日吉地下壕からみた太平洋戦争
会期:2015/01/31~2015/03/22
神奈川県立歴史博物館[神奈川県]
副題にあるように、慶応大学日吉校舎の丘の下に地下壕が掘られ、海軍司令部が使っていたという。ぜんぜん知らなかった。その地下壕から発掘・発見された司令部の備品や遺品を中心に、戦前の日吉周辺の地図や航空写真、地下壕の平面図、神風特攻隊の写真や零戦の部品、遺書、戦艦大和の模型、横浜大空襲の資料など200点近くを展示。日吉の地下壕はそそられるテーマだが、それだけでは地味な展示になってしまいそうだからか、本題から外れたものまで集めて第2次大戦全般を振り返っている。ちょうど敗戦70年でもあるし。連合艦隊司令長官の東郷平八郎を型どおり三笠艦上に描いた東城鉦太郎の《三笠艦橋の図》や、特攻隊出撃前らしからぬのどかな風景の御厨純一《神風特別攻撃隊「敷島隊」出撃の図》など、戦争画も何点か出ていた。ぼくが行ったのは最終日で、おまけに学芸員による展示解説と重なったためずいぶん混んでいて、珍しくカタログも売り切れていた。
2015/03/22(日)(村田真)
鎌田友介「半径7kmのダイアグラム」
会期:2015/03/20~2015/03/22
エリスマン邸[神奈川県]
横浜のエリスマン邸にて、鎌田友介の展示「半径7kmのダイアグラム」を見る。神奈川県にある作家の家から半径7km圏内にある歴史的な事象を幾何学的な星座のようなダイアグラムにマッピングする。その結果、家系と関わる石油産業、エリスマン邸とその設計者アントニン・レーモンド、そして戦争と焼夷弾がつながっていく。石油採掘―焼夷弾のミニュチュアを使う墨壺も制作していた。
2015/03/22(日)(五十嵐太郎)
第三回 景聴園「景聴園×旧木下家住宅」
会期:2015/03/15~2015/03/28
旧木下家住宅[兵庫県]
京都市立芸術大学で学んだ20代の日本画家のグループ「景聴園」が、3回目の展覧会を開催。会場は神戸の舞子。明石海峡大橋に程近い旧木下家住宅である。この住宅は昭和16年に竣工した数寄屋造近代和風住宅で、阪神・淡路大震災以降姿を消しつつある阪神間の和風住宅のなかでも創建時の構えをほぼ完全に残す貴重な例として、平成13年に国の登録有形文化財に指定されている。景聴園の5人の作家(上坂秀明、合田徹郎、服部しほり、松平莉奈、三橋卓)は事前にこの邸宅を綿密に取材し、あらかじめ展示場所を決めた上でジャストサイズの新作を持ち込んだ。それだけに作品と会場の相性が抜群に良く、この場所、この機会でなければ味わえない贅沢な展覧会が成立したのである。特に、中室から西室、待合と続く3室での、上坂秀明、服部しほり、合田徹郎の展示は見応えがあった。今後も彼らの活動をフォローしたいと思う。なお、本展の企画は古田理子が担当している。
2015/03/21(土)(小吹隆文)
澤田知子 展──FACIAL SIGNATURE
会期:2015/03/14~2015/04/19
MEM[東京都]
写真集『澤田知子 FACIAL SIGNATURE』全300点のなかから108点を選んで展示している。服も背景も黒なのでポッチャリ顔がズラリと並んで壮観。どれも無表情に近く、化粧も薄めで似たり寄ったりだが、目のメイキャップとヘアスタイルは異なっている。ひょっとして違う人も紛れてるんじゃないかと注意深く見てみたが、どれも鼻が同じなので全部セルフポートレートだとわかる。このシリーズはニューヨークに滞在したときの体験に基づいており、すべて東アジア人に見えるように扮装したもの。彼女の場合「元顔」にインパクトがあるので、いかに変われるかより、いかに変わろうとしても変わらないかが見どころかもしれない。
2015/03/21(土)(村田真)
福士朋子「The Lucky☆Lucky Show」
会期:2015/02/11~2015/03/29
ナディッフウィンドーギャラリー[東京都]
『元祖FAXマンガ お絵描き少女☆ラッキーちゃん』の出版記念展。福士はもともと線描による抽象画を描いていたが、20年ほど前からファクスでマンガ「ラッキー☆ラッキー」を送りつけるようになり、やがてマンガもタブローとして制作、抽象画と並行して発表していた。最近はマンガの人気が高まったせいか、すっかり抽象画のほうは見かけなくなった(まだ描いてたらゴメン)。今回はホワイトボードにマジックインキで描いた美術ネタのマンガ5点の展示。内容はともかく、このホワイトボードという支持体はテンポラリーなタブローの素材として使い勝手がありそうだ。
2015/03/21(土)(村田真)