artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

「神々のたそがれ」試写

会期:2015/01/30

シネマート六本木[東京都]

地球より800年ほど進化の遅れた人たち(?)の住む惑星に、地球人が派遣され……という「SF映画」。だと思って見に行ったら、期待は見事に裏切られたというか、予期せぬ映画として楽しめた。殺戮、糞尿、血、家禽、内臓、その他モノクロでなにがなんだか判別のつかないものが3時間にわたって画面にぶちまけられるのだ。もうストーリーなんてあってないようなもの。まあ、タルコフスキー監督『ストーカー』の原作者であるストルガツキー兄弟のSF小説が原作なので、あらかじめ覚悟はしていたが。登場人物が押せ押せで画面に入り込んだり、カメラ目線でこちらに微笑んだり、かなりセルフコンシャスな映画。

2015/01/30(金)(村田真)

Into your whirlpool

会期:2015/01/23~2015/02/06

Gallery G-77[京都府]

近年海外での発表などが続いていた山元ゆり子による、活動の拠点としている京都での久々の個展だ。アメリカで発表された作品の一部分だという《into your whirlpool》は、真っ暗な部屋を使ったインスタレーション。視界の方向や地形が識別不能となる、ホワイトアウト現象のような体験が光と音によって周囲に立ちあがる。一筋の手がかりのような、かすかな物語の存在を示唆させるところが、個性的で興味深かった。
2階には、影を使った彫刻作品ともいうべき小品があり、そこにも、SF小説にある心をつかむ冒頭の1行目のような、見落としてしまいそうな、物語の気配。

2015/01/30(金)(松永大地)

DJもしもし展

会期:2015/01/26~2015/02/01

momurag[京都府]

小麦粉を使った生地が焼かれて、さまざまな形に成って、飛び散っている、蟻にも食われている、いくつかはターンテーブルの上で回っている。薄暗い中、脚立はそのままだったり、コードは出しっ放しだったり散らかっていて、足の踏み場もない空間。ベージュ系の色合いの小麦粉の彫刻物は、ひょっとしたら、私たちの世界を形成している最小単位なのではないだろうか。汚いものにも崇高なものにも見えてくるような、そんな気も起こさせてくれる無言さで、終始ぐるぐるまわっていた。
この状態に至る制作者の思考を追体験できないかと、狭い部屋をうろうろしてみるが、あまりまとまらない。2階に展示されると張り紙にあった動画は見ることが出来ず。

2015/01/28(水)(松永大地)

新鋭選抜展

会期:2015/01/24~2015/02/08

京都文化博物館[京都府]

福山竜助の黒のような濃い茶色のような色合いのペインティングは、線一本一本が力強く、そしてゆがみやしなやかさも持ち合わせていて、そこには物語を含む気配がある。本や雑誌等でテキストの挿絵にもとてもよく合う気がする。ここではこの作品を見られただけで、とても満足した気分になった。いつか個展でまとまって見てみたい。

2015/01/28(水)(松永大地)

LUMIX MEETS/JAPANESE PHOTOGRAPHERS #2

会期:2015/01/21~2015/01/29

IMA CONCEPT STORE[東京都]

六本木アクシスの前に、加納俊輔の作品をポスターに使った展覧会の告知が出ていたので入ってみた。ここは写真季刊誌『IMA』と同じ母体で、フォトギャラリー、カフェ、ブックショップを備えたスペース。同展は日本の若手写真家を支援するもので、パナソニックが特別協賛している。出品は加納のほか、Kosuke、佐久間里美、水谷吉法、山崎雄策、山本渉の6人だが、加納以外は知らない(加納も作品を知ってるだけだが)。加納は、たとえば板に貼った写真を撮影し、それをまた板に貼って写真に撮り……といったトリッキーでありながらコンセプチュアルな作品をつくっているアーティストで、たしかに写真メディアを用いているけれど、支持体は木の板や大理石だったりするので、扱いとしては美術ジャンルだと思っていた。これまで画廊や美術館で何度か見かけたが、写真界でもこうした手の込んだコンセプチュアル写真が、ふつうのストレート写真と一緒に並ぶこともあるんだ。

2015/01/28(木)(村田真)