artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

プレビュー:Installing of the Exhibition “BNF” & Artist

会期:2015/02/28~2015/03/29

ARTZONE[京都府]

「これまでARTZONEで展覧会をやってきて思うことは、完成した展覧会そのものよりも、それに向けた搬入の方が実はおもしろいのではないか? ということです」とDM。なるほど。この会期の後の2015年4月4日からの展覧会「Before Night Falls 夜になるまえに」(出品は荒木優光、小栢健太、神馬啓佑、谷中佑輔、村田宗一郎、冬木遼太郎、山下拓也、YAP。こちらも楽しそう)の搬入作業の公開に加えて、ゲストとして香川裕樹、前谷開の作品が展示されるが、会期が進行するにつれて、後者の2人の作品はなくなっていくという内容。気になるから、何度も見てみようと思う。キュレーターは堤拓也 & 山田卓矢。

2015/02/04(水)(松永大地)

第18回 文化庁メディア芸術祭

会期:2015/02/04~2015/02/15

国立新美術館[東京都]

21世紀の文展、とは謳ってないけど、まあそんな感じ。コンテンツは新しいのに、それを受け入れる枠組みが古い。だからこんなところで受賞したりすると、最先端の作品もダサく見えてしまう。いい例が、アート部門で優秀賞を取った坂本龍一/真鍋大度の《センシング・ストリームズ》だ。むしろここではダサい作品のほうが本領を発揮する。たとえばアート部門のEmilio Vavarella《THE CAPCHA PROJECT》。解説によれば「ウェブサイト上でスパム防止に用いられるキャプチャコードを、中国人画家がキャンバスに模写し」たもの。ようするにウェブ上の記号を模写専門の中国人画家にコピーさせた絵で、制作費と売り上げはVavarellaと中国人で折半する契約まで交わしてるという。ダサおもろいわ。もうひとつ、エンターテインメント部門で優秀賞を受賞した下浜臨太郎/西村斉輝/若岡伸也の《のらもじ発見プロジェクト》。商店の看板などで見かける独特の(つまりダサダサの)文字を「のらもじ」と命名し、その形状を分析してコンピュータでフォントを制作、ウェブサイトからダウンロードして使用できるようにした。「タイポグラフィにおける民藝運動」だという。半分笑えるが、フォントの使用料を文字の持ち主に還元するなど、ちょっと優等生的でもある。ところで、キャプションやカタログを見て疑問に思ったのは、外国人の名前と作品名がすべてアルファベット表記になってること。いっそ日本人名も解説もすべてアルファベットにするならまだしも、部分的にアルファベットが使われると読みにくいことこのうえない。タイトルは無理に和訳することはないけど、東欧など人名の読み方がわからない地域もあるから、ダサくてもカタカナ表記するべきではないか。たとえば、エミリオ・ヴァヴァレッラ《キャプチャ・プロジェクト》みたいに。韓国人は別にハングル表記じゃないし。

2015/02/03(火)(村田真)

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TWSエマージング2014

会期:2015/01/10~2015/02/01

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

3人の展示だが、炭田紗季の作品が目を引く。窓から富士山の見える旅館の壁にウォーホルの絵が飾ってあったり、檜風呂の向こうに教会の尖塔と富士山に似た火山が見えたり、山車にリオのカーニバルの半裸娘が乗っていたり、山車からサンタさんがプレゼントを配ったり……。とにかく日本の伝統的なるものと欧米的なるものを強引に共存させた絵。これは日本の現代美術のひとつの典型をカリカチュアライズしたものともいえる。「私は日本人である自分が嫌いで、好きだ」という作者のコメントを借りれば、私はこういう作品が嫌いで、好きだ。

2015/01/31(土)(村田真)

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切符を持たない旅

会期:2015/01/23~2015/02/01

ボーダレス・アートミュージアムNO-MA[滋賀県]

滋賀のアール・ブリュット・コレクションを美術家の木藤純子、演出家の桑折現が演出するという試み。昭和初期の町屋を改装したボーダレス・アートミュージアムNO-MAでは、これまでにさまざまにアール・ブリュット作品が展示されてきた場所であり、展示内容も馴染みの光景ではあったはず。私も何度か見ているが、展示の手法自体はオーソドックスなものとなっていたが、そこに、その場所のもつ特性や個性を二割増にして、体験自体の表面をほんのりと上塗りするのが、策士・木藤純子のテイストなのだ。旅へ誘う船や電車、バスといったモチーフの作品の配置や、アニメーション+サウンド(ともに今回のための制作)など。加えて窓に薄い布をはって光量を調整。柔らかい光を室内に回していたが、この日の天気は雪。降る雪の景色がまたささやかな彩りを加えていた。
奥にある蔵では、小さな照明を時間でON/OFF、鑑賞者の意図とは別に作品の可視時間を調節されていたが、一日の時間的な移ろいや、自然界での光の変化のよう。10分ぐらいでは暗がりに目が慣れず、絵自体をしっかりととらえることは出来なかったが。
作品自体の特徴に焦点が当てられることの多い、アール・ブリュット作品への過度な演出をしないことで浮き上がる、よりニュートラルな目線への試みだったと思う。

2015/01/31(土)(松永大地)

高松次郎ミステリーズ

会期:2014/12/02~2015/03/01

東京国立近代美術館 企画展ギャラリー[東京都]

体験、実感できる楽しい影ラボを導入としながら、彼の作品を回顧する試みだ。一連の流れを見ると、あまり深く関係を考えていなかった、影の作品と透視図法の作品のつながりがよくわかる。その後、高松はモノの関係性の時期を経て、晩年は絵画にシフトする。彼の絵を建築の図面として見ると興味深い。段差をのぼって、会場を一望できる展示のデザインは、トラフが担当しており、これも良い。


影ラボ風景

2015/01/31(土)(五十嵐太郎)

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