artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

阪本トクロウ「周縁」

会期:2014/10/31~2014/11/23

アートフロントギャラリー[東京都]

青い空に白い雲、波紋が揺らぐ水面、部屋の片隅、白い壁、地面と水面が入り組んだ地図など、ふつう絵の脇役である背景だけを描いた絵。というと主役を消したトリックアートみたいだが、主役がいなくなったのではなく、背景を主役にしたのだ。いわば地から図を除くのではなく、地が図になった状態。これはおもしろい。日本画出身、おもに高知麻紙にアクリルで描いている。

2014/11/16(日)(村田真)

《起雲閣》、「高須英輔展 ─ 輾てん轉 ─ in 起雲閣」

会期:2014/10/03~2014/11/25

起雲閣[静岡県]

熱海の《起雲閣》(1919)も、かつての豪邸であり、後に旅館に転用され、文学者に愛された。したがって、それぞれの文豪の展示が各部屋でなされている。とくに「玉姫」「玉渓」の部屋(1932)は、ステンドグラスも動員する、和洋亜の折衷ぶりが凄まじい。日向邸も、ある意味ではタウトというフィルターを媒介した折衷の建築だが、こちらはベタな併用で、一般の観光客にもわかりやすい。ちなみに、全然ローマ的ではないと思うが、「ローマ風浴室」も興味深い。増築部分では、ちょうど高須英輔展「輾てん轉」を開催しており、古材を再活用した構成の作品群が並ぶ。


起雲閣

記事左上:ローマ風浴室

その後、熱海銀座、中央町、清水町のあたりを散策する。今年、3月に混流温泉文化祭で訪れた際にもまわったが、昭和の建物が多く残っていたり、坂の地形と壁が隣接する小建築群がかもしだす風景は独特の雰囲気をもつ。いまは単に古いと思われるかもしれないが、今後残れば、貴重になるはずだ。

熱海

2014/11/15(土)(五十嵐太郎)

コスミック・ガールズ

会期:2014/11/27~2014/11/16

丸の内ハウス[東京都]

荒神明香、小林エリカ、スプツニ子!、力石咲の4人による「宇宙少女展」。まず出会うのは、大小の円形アクリルレンズを吊り下げた荒神の《コンタクトレンズ》。扁平なのに球体が浮いてるように見えて、そこだけ時空の変容を感じさせる。小林の《半減期カレンダー》は、ラジウム226の半減期である1600年のカレンダーをA1サイズの紙に印刷したもの。全部で1600枚刷り、お持ち帰り自由だ。スプツニ子!の《ムーンウォーク☆マシン、セレナの一歩》は、月面に女性の足跡を印すマシンをつくるというプロジェクト。実際にNASAなどの協力を得てつくっちゃうのはさすがだが、それをPVで見せられてもなあ。力石の《ニットインべーダー》は、会場の数カ所に置かれた椅子やテーブルに緑色のニットカバーを被せたもの。こういうの好きだけど、似たようなこと海外で街路樹やパーキングメータにやってる人いるよね。

2014/11/14(金)(村田真)

ウィレム・デ・クーニング展

会期:2014/12/08~2015/01/12

ブリヂストン美術館[東京都]

近代美術のイメージが強いブリヂストン美術館でウィレム・デ・クーニングというのも意外な気がするが、数年前にはザオ・ウー・キーの回顧展もやったし、ポロック、デュビュッフェ、スーラージュら抽象表現主義やアンフォルメルの画家たちの作品もコレクションしてる(今回も常設展に出ている)から、想定外というわけではなさそうだ。といっても今回のデ・クーニングは館蔵品ではなく、ジョン・アンド・キミコ・パワーズ・コレクション(リョービ財団に寄贈)から借りてきたもの。パワーズ・コレクションといえば昨年「アメリカン・ポップ・アート展」で紹介されたが、版画や素描が多くてがっかりした覚えがある。今回の出品は油彩と素描を中心とする女性像35点。比較的初期の1951年のものが2点あるが、あとの大半は60年代後半の制作で、なかでも65-66年の作品だけで20点を超す。初期の2点がいちばん緊張感があるように思うけど、そうじゃなくても特定の時期の同じテーマの作品を集中的に見られるのは貴重な機会だ。とくにこのころはポップアートが全盛を迎える時期なので、そんな背景を考えながら見るのもおもしろい。大規模な特別展ではないけれど、中規模のテーマ展としては満足。

2014/11/14(金)(村田真)

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ヴィック・ムニーズ“SMALL”

会期:2014/11/24~2014/11/29

nca[東京都]

すぐに消えてしまう液体や粉で絵を描いたり、ゴミを集積して人物画をつくったりしてきたヴィック・ムニーズ。新作ではミクロの世界に挑んでいる。1粒の砂の表面に城を描いた「サンドキャッスル」シリーズと、培養シャーレ内の細胞を幾何学パターンに配列した「コロニーズ」シリーズで、もちろん肉眼では見えないので、MITの協力を得てナノテクで制作・撮影したもの。砂上の楼閣ならぬ砂中の楼閣。そこまでやるか。以前の液体の作品にしろゴミの作品にしろ、実物ではなく写真でしか見られないし、残せない。てことは、彼の作品はすべて「証拠写真」ということだ。

2014/11/14(金)(村田真)