artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
4人の絵画
会期:2014/11/14~2014/11/20
ツァイト・フォト・サロン[東京都]
日本橋から徐々に銀座寄りに移転しているツァイト・フォト・サロンのリニューアルオープン第2弾は、辰野登恵子、樋口佳絵、いとうまり、長沢郁美の女性画家4人展。フォト・サロンだからフォトリアリズムとかフォトコラージュを使った絵かと思いきや、写真とはほとんどなんの縁もない純粋絵画ばかり。この画廊は80年代から写真だけでなく、なぜか19世紀フランスのアカデミズム絵画も扱っていた(オーナーの石原さんによると古いレコードも扱ったという)。忘れられていたアカデミズム絵画が再評価されるのは、オルセー美術館の開館(1986)以後のことだから、先見の明あり。懐の深いギャラリーだ。4人の絵画のほうは、やはり辰野の骨太さが圧倒的。
2014/11/14(金)(村田真)
ザ・ミラー
会期:2014/10/16~2014/11/09
銀座4丁目ザ・ミラー館(名古屋商工会館)[東京都]
銀座4丁目の裏通りを歩いていたら客引きに呼び止められた。よく見ると、清水敏男アートオフィスの古参スタッフ。ああ、そういえば目の前のビル全体を使った展覧会を清水さんが企画したんだと思い出した。予約制だったからつい行きそびれてしまったが、会期を延長してまだやってる(11/14(金)15(土)16(日)の3日間は特別開館)というので見せてもらうことに。会場となったビルは1930年に竣工した名古屋商工会館で、築80年を越すこのビルも残念ながら建て替えられることになり、ファイナルショーとして全館を使った展覧会が企画されたのだ。ほぼ正方形のビルの中央にあるエレベータを囲むように配置された20室ほどの空間に、約30組のアーティストが作品を展示している。部屋を半周する長い紙に水平線を彩色したフランシス真悟、黒い部屋を白い線で装飾して「鏡の間」に変えたニコラ・ビュフ、木の椅子を天井から円環状に下げて「天上(天井)の会議」に見立てた土屋公雄、真っ暗な部屋をしつらえて目が慣れるまで待つと光が浮かんでくる堂本右美など。不可解なのは5階の展示で、壁にはタンカと呼ばれるチベットの仏教画、大正時代の若い画家の自画像、一筆書きのような李禹煥の絵画が掛けられ、床にはアニッシュ・カプーアの鏡面物体が置かれている。どういうつながりがあるのか、謎解きみたい。6階は西野達の写真の展示で、ちょっとがっかり。いや西野の写真は抜群におもしろいんだけど、どうせ取り壊すビルなんだから壁でも床でも天井でも突き破ってほしかったなあ。
2014/11/14(金)(村田真)
オープン・スペース2014
会期:2014/06/21~2015/03/08
NTTインターコミュニケーション・センター[ICC][東京都]
evala+鈴木昭男の音響を体験したが、闇の中で音が身体に侵入するような感覚だった。実際、音は視覚と違い、遠くからこちらを触ったり、ときには殴ることもできる空気の振動だ。小沢裕子の《無名の役者たち》は、ウェブ上の他者の楽曲などに対し、勝手にPVのような映像をつける試みである。
2014/11/14(金)(五十嵐太郎)
ジョルジョ・デ・キリコ ─ 変遷と回帰 ─
会期:2014/10/25~2014/12/26
パナソニック汐留ミュージアム[東京都]
初期の作品はあまりなかったが、素描や彫刻など、知らないタイプの作品も紹介しつつ、後期の自己模倣系が多い。いわばセルフカバーである。アーティストに求められる新しさの神話を拒否する後期の試みは、アンディ・ウォーホルも評価したように、なるほど興味深い。ただし、絵自体のクオリティは必ずしも良くなっていないのが、少し残念だった。
2014/11/14(金)(五十嵐太郎)
小松原智史 展 エノマノコノマノエ
会期:2014/11/01~2014/12/21
the three konohana[大阪府]
大阪芸術大学在学中の2013年に、「第16回岡本太郎現代芸術賞展」特別賞を受賞した小松原智史。筆者はこれまでに彼の展示を何度か見たことがあるが、いずれも会期中に公開制作を行なう形式だった。公開制作は、有機的フォルムを直感的に描き、増殖させる彼の作風に適している。しかし、本展は画廊空間で完成作品を見せるオーソドックスな個展だ。果たしてどれだけのものを見せてくれるのだろう。期待と不安半々で出かけたのだが、その結果はこちらの期待を軽く上回るものだった。作品は大小さまざまで、最大の作品は極端に横長の画面を天井から円環状に吊るし、円環の内部に入って鑑賞するパノラミックなものである。他には、絵がキャンバスからはみ出て壁面にまで侵食した作品、レリーフ状の作品、半ば立体化した変形画面の小品と、それらを組み合わせた立体作品、そして初挑戦の小品などであった。本展により、小松原は通常の個展でも十分勝負できることを実証した。彼の今後の活躍が非常に楽しみだ。
2014/11/14(金)(小吹隆文)