artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

ベ サンスン展「Over & Over」

会期:2014/07/05~2014/07/26

イムラアートギャラリー京都[京都府]

漆黒のベルベット地に面相筆で白い線を無数に描き重ねた絵画作品。その画面では、描かれた白い部分よりも余白の黒に目が行き、視線が無限に吸い込まれていくような視覚体験を味わえる。特に壁一面を覆う大作はその効果が顕著で、隣接する壁面に掛けられた小品群との対比も鮮やかであった。彼女が京都で個展を行なうのは約5年ぶりのこと。その間に作風が変化し、私生活でも子を授かるという大きな節目があったが、彼女のバイタリティはまったく衰えていないようだ。本人とも久々に再会し、作品について直接話を聞けたのも収穫だった。

2014/07/09(水)(小吹隆文)

倉谷拓朴「Last Portrait Project」

会期:2014/06/28~2014/07/21

川崎市市民ミュージアム 1階 逍遥展示空間[神奈川県]

倉谷拓朴は2003年に東京綜合写真専門学校卒業後、横浜・黄金町にアートスペースmujikoboを開設したり、越後妻有アートトリエンナーレで「Last Portrait Project」や「名ヶ山写真館」といった企画を立ち上げたりするなど、意欲的な活動を行なってきた。今回川崎市市民ミュージアムで開催されたのは、2006年からさまざまな場所で展開されてきた、遺影写真の撮影・展示のプロジェクトである。
葬儀の席や仏壇などに掲げられる故人のポートレート(遺影写真)は、死者の記憶を共有し、後世に伝えるために重要な役目を果たしてきた。ただ、アルバムなどに貼られていた写真を複写して使うこともあり、クオリティ的には問題が多い。倉谷は、あえて生前に思いを込めてポートレートを撮影してもらうことで、遺影写真の新たな形式を模索しようとしている。これまで撮影された「Last Portrait」は、既に1000枚以上に達しているという。
倉谷はその撮影のために独自のマニュアルを作成した。カメラのレンズを見て静かに目を閉じ、気持ちが落ち着いた所で目を開ける。その瞬間にシャッターを切るというものである。目をつぶることで内省的な気分が生じ、その人物の「原型」とでもいうべき存在のあり方が滲み出てくるということだろう。たしかに、会場に展示されていた作品には、長く遺していくべき「Last Portrait」にふさわしい、威厳のある表情や身振りが写り込んでいるように思える。また、今回はモデルを募集し、7月6日、20日、21日の3回にわたって、実際に8×10インチの大判カメラでポートレートを撮影するというイベントも行なわれた(毎回10人)。このプロジェクトは、これから先も厚みを増しつつ、続いていくのだろう。それが最終的にどんな形をとっていくのかが楽しみだ。

2014/07/08(火)(飯沢耕太郎)

「みずのすがた わが山河 Part V」展

会期:2014/07/12~2014/09/21

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

こってり油っぽかったメインディッシュの後は、水々しい日本画のデザート。3分で出たわ。

2014/07/08(火)(村田真)

絵画の在りか the way of PAINTING

会期:2014/07/12~2014/09/21

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

相変わらず展覧会で絵画はよく見かけるけど、「絵画の現在」を特集した企画展は意外なほど少ない。ほとんどないといってもいい。記憶にあるのは、06年の「エッセンシャル・ペインティング」と10年の「絵画の庭──ゼロ年代日本の地平から」くらい。どちらも大阪の国立国際美術館の企画で、しかも前者は欧米の作家のみだったため、日本人のもやれという声に押されて後者を企画したと勝手に解釈しているのだが、とにかくそれほど日本では絵画の展覧会が成立しにくいようなのだ。なぜか? それは本展のカタログのなかで堀元彰氏も書いてるように、絵画があまりに多様化してもはやひとつの基準では計れず、展覧会としてまとまらないからだ。だからこの展覧会も明確なテーマを打ち出すことなく、「絵画の在りか」といういささか投げやりなタイトルをつけるしかなかったのだ、たぶん。でもぜんぜん方向性が見出せないわけでもなく、わずかながら示してはいる。それは絵具や支持体など物質性の強調であり、その結果としての表象性から抽象性への傾きだ。これはよくわかる。ここに出ている24作家による約110点の作品の大半は具体的イメージを伴っているものの、いわゆる具象画とは呼べるものは少ない。たとえば小西紀行は家族の肖像を描いてるらしいが、われわれの目はなにより大胆なストロークに引きつけられる。今井俊介の絵画は幾重にも重なった旗のようにも見えるし、抽象パターンの組み合わせにも見える。五月女哲平と高木大地の作品も同じく具象的イメージと抽象パターンを行ったり来たりする。どうやら具象とか抽象とか、ポップとかミニマルとか、なんとか主義やなんとかイズムに染まらずに絵を描くことができる、いや、絵を描き続けなければならない時代なのだ、いまは。

2014/07/08(火)(村田真)

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大塚泰子 展「空間色 space color」

会期:2014/07/08~2014/08/02

ケンジタキギャラリー[東京都]

太さ1センチほど、長さ90センチはあろうかという細長い角材に布を張り、片面だけ赤く塗って壁に取りつけている。一見ただの角材だが、絵画としての条件は備えている。ほかにも、生の綿キャンバスの半分だけ壁と同じ白色に塗ったり、縁の部分だけ白く塗ったり。絵画の形式を内容にした絵画、といえばいいのか。

2014/07/08(火)(村田真)