artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

プレビュー:開館10周年特別企画展 快走老人録 II─老ヒテマスマス過激ニナル─

会期:2014/08/09~2014/11/24

ボーダレス・アートミュージアムNO-MA[滋賀県]

芸術と老いをテーマにしたユニークな企画展。2006年に第1回展が開催され、大好評を博した。8年ぶり2回目の今回は、美術家の折元立身(画像)、花人の中川幸夫と、自らの欲求にしたがって制作を続けてきた白井貞夫、西之原清香、福田増男、小西節雄が参加する。前回は痛快の一言で、副題の「老ヒテマスマス過激ニナル」を地で行く出来栄えだった。この第2回展が更なるパワーアップを果たすとともに、目前に迫ってきた超高齢化社会に対して示唆的な機会となることを期待する。

2014/07/20(日)(小吹隆文)

ALL NIGHT HAPS「MIDNIGHT SUMMER THEATER fujitama」

会期:2014/07/12~2014/07/25

HAPS[京都府]

祇園の南にある、HAPS(東山 アーティスツ・プレイスメント・サーヴィス)の夜だけの映像を中心とした展示シリーズ。この時流れていたのは、フジタマ(fujitama)の映像作品。哀愁漂うカラオケムーヴィー風の字幕が乗ることで映像の見え方が変化してしまうもの。工事中のデジタル旗ふりおじさんも、いわずもがな哀愁おじさんに。カラオケっていつまでもあの見た目から変わらない、そしてこれからもこのままなんだろうな。
加えて、特筆すべきはウインドウのみのギャラリースペースなんだけど、けっこう居心地がいいということ。夜にやっているというのもプラス要素であるけれど、この斜めに傾いたセルフ改修された家屋、不思議な停留所感がある。こんな場所の前にバス停があったらいいのに。いや、逆か。バス停をこんなふうにアレンジしたものがあってもいいのに。

2014/07/19(日)(松永大地)

美術の中のかたち 手で見る造形 横山裕一 展 これがそれだがふれてみよ

会期:2014/07/19~2014/11/09

兵庫県立美術館[兵庫県]

手で彫刻作品に触れることができるユニークな企画展。その背景には、視覚障害者にも美術館に来てほしいという思いと、視覚に偏重しがちな美術鑑賞のあり方を問い直そうとの意図がある。本展は毎年開催されているが、今年はネオ漫画で知られる横山裕一を招き、横山自身の作品と、彼が選んだ、ジョアン・ミロ、アルベルト・ジャコメッティ、ジム・ダイン、井田照一、森口宏一、菅井汲の作品が展示された。会場構成は、展示室の壁面を横山の作品が埋め、展示台に置いた彫刻作品を室内に並べるというもの。また、ジム・ダインと横山の作品に共通する扇風機が数台、首を振って風を送っていた。横山の大作が壁面を覆うことで、本展は視覚的にダイナミックな空間づくりに成功したと言えるだろう。一方、横山の作品は平面なので触覚だけでは理解することができない。過去の同展と比べても、今回は触覚の占める割合が低めであり、そこが評価の分かれ目になると思う。

2014/07/19(土)(小吹隆文)

APP ARTS STUDIO vol.9「手工の住家」

会期:2014/07/19

APP ARTS STUDIO[京都府]

芸術家の余技というテーマで、林洋子氏による自分の家を造ってしまう画家・藤田嗣治のお話と、伊達伸明氏のお話を伺った。伊達伸明氏は、作品づくりの原点はアレクサンダー・カルダーだったというお話や、初期作品の話など、珍しい内容。さまざまなペットボトルのパッケージのお茶という文字を甲虫の模様として、標本になっている作品や、最近まで小冊子の連載だったというナミイタ写真のコレクションなんてのもある。すべてを余技であり本技でもあり、邪道であり王道であり……。まずは自分の頭や体の動きとか、くせみたいなものを肯定するところからはじまっているような感覚だろうか。それが人間くささとか正直さみたいなものになってにじみ出るというか、親しみをわかせるというか。取り壊しになってしまう個人宅や建築物から受注し、廃品などからつくる建築物ウクレレ化計画の作品のことを描いたカルタより一句、「手垢に勝る塗料なし」。

2014/07/19(土)(松永大地)

「楽園としての芸術」展

会期:2014/07/26~2014/10/08

東京都美術館[東京都]

三重と東京に拠点をもつアトリエ・エレマン・プレザンと鹿児島のしょうぶ学園で制作された、おもに知的障害者による作品展。こうしたいわゆるアウトサイダーアートには、たとえば人や車や数字などひとつのかたちを執拗なまでに繰り返し描いたり、終わりのない物語を延々と何十年も描き続けたり、こちらの拠って立つ「コモンセンス」を足下から揺るがしかねない恐るべき表現がしばしば混じってるものだが、今回は比較的穏健な作品が多く、肩すかしを食らった。多いのはペインタリーな抽象で、具象表現がほとんどないのも特徴だ。施設の指導方針もあるんだろうか。だいたいこの程度の抽象だったらよく見かけるし、東京オペラシティでやってる「絵画の在りか」と比べても見劣りする。比べるもんでもないが、しかし比ぶべくもないアウトサイダーアートというのも存在する。

2014/07/19(土)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00027080.json s 10101593