artscapeレビュー
デザインに関するレビュー/プレビュー
ヘルシンキ空港
[フィンランド、ヘルシンキ]
ヘルシンキで感心したのは、空港や公共施設など、どこでもWi-Fiフリーの環境が当たり前のように存在していたこと。日本のWi-Fi環境も、これに見習って、もっと良くなって欲しい。またフィンランドの空港の什器も何気にインテリアがカッコいいし、待ち合いの座席に間仕切りもない。一方、乗り換えで滞在したモスクワの空港は、ほぼすべての椅子に間仕切りをつけ、長時間を過ごす乗り換え客は辛いだろう。
2014/09/23(火)(五十嵐太郎)
建築の皮膚と体温―イタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの世界―展
会期:2014/09/04~2014/11/22
LIXILギャラリー[東京都]
イタリアモダンデザインの父とも呼ばれたジオ・ポンティを紹介する展示。導入部に「建築は、外に対して厳しく、内に対して優しくなければならない」みたいなことが書かれていたが、この「堅牢」かつ「快適」という両立しにくい命題を、タイルという素材とデザインによって解決しようとしたのがジオ・ポンティだった。彼の建築に感じられる「皮膚感覚」は、モダニストでありながらモダニズムを超えたところに生まれてきたものだということがわかる。
2014/09/12(金)(村田真)
第4回産廃サミット─廃棄物を言い訳にしないデザイン展─
会期:2014/09/06~2014/09/14
プラス・ショールーム「+PLUS」[東京都]
日頃我々がゴミとして排出している“廃棄物”の素材性を活かしたアート、プロダクトなど、公募により選出された80名の作品を展示した展覧会イベント。廃棄物処理業者の株式会社ナカダイが主催する今展は、”素材=廃棄物”という見地からモノの価値や捨て方、現在の我々の生活のあり方、創造の可能性を見つめ直そうというものであった。捨てられたプラスチックの道具やおもちゃの部品など、様々な廃品から制作した派手な装飾のリヤカー《移動祭壇》を引き、街中を走るという活動を行っている石田真也が出品するというので見に行った。手芸から彫刻まで、廃品を用いたさまざまな作品とともに主催会社が扱う商品も陳列された会場は、全体には「何でもあり」の雑多な印象。興味を持つものは他にもあったが、石田の新作はだんとつに目を目を引いた。《石田延命所》という車輪付きのその作品は、これまで石田が発表してきた《移動祭壇》と同様のコンセプトで制作されたもの。しかし、主にその造形センスに注意が傾きがちだったこれまでとも異なり、今回は細部のマテリアルにもその使い方にも石田ならではのユニークな発想と工夫がうかがえて、作家の遊び心にもワクワクする興奮を覚えた。石田のアートワークは、素材集めにしろ制作物にしろ、実際に外に出ることで新たな出会いや交流を生み出すという魅力をもっている。作品自体がただ廃材を使った奇抜な「祭壇」というインパクトを超えて昇華した印象だったのが嬉しい。今後の発表活動がますます楽しみになった。
2014/09/06(土)(酒井千穂)
絵本づくりのマイスター3人展 西巻茅子・馬場のぼる・わかやまけん
会期:2014/07/04~2014/09/04
ギャラリーA4[東京都]
西巻茅子の『わたしのワンピース』、馬場のぼるの『11ぴきのねこ』、わかやまけんの『こぐまちゃん』。本展に取り上げられている三つの絵本シリーズにはいくつかの共通点がある。いずれも1960年代から70年代にかけての第一次絵本ブームに誕生し、現在まで売れ続けているロングセラー絵本であること。いずれも作家が書いたお話に絵が添えられているのではなく、絵も物語もオリジナルな絵本としてつくられていること。そしていずれのシリーズも「こぐま社」から出版されていること。つまり、これらのこの絵本づくりの中心には、1966年にこぐま社を創設した編集者・佐藤英和氏がいる。タイトルには明示されていないが、この展覧会は絵本のつくり手を見出し、名作を生み出していった佐藤英和氏の仕事を紹介する企画であるといってよい。馬場のぼるの『11ぴきのねこ』の誕生に果たした佐藤氏の役割については以前に調べたことがあったが、「こぐまちゃん」シリーズが4人の人物──デザイナー・若山憲、劇作家・和田義臣、歌人・森比佐志、編集・佐藤英和──による「集団制作」であることは今回初めて知った。絵本づくりに編集者がはたしてきた役割はとても大きいにもかかわらず、絵本の展覧会は子ども(と、その親)向けの企画が多く、作家やその創作活動、原画の展示が中心になってしまい、編集者にまでスポットライトが当てられることは稀である。夏休み中に開催されたこの展覧会は子どもが楽しめる構成になっていながらも、編集者と画家・作家の絵本づくりにかけた情熱をも伝える優れた企画であった。[新川徳彦]
関連レビュー
2014/09/02(火)(SYNK)
ノスタルジー&ファンタジー──現代美術の想像力とその源泉
会期:2014/05/27~2014/09/15
国立国際美術館[大阪府]
日本の現代美術家10組を「郷愁」と「空想」という二つのキーワードで紹介した展覧会。出品作家は、柄澤齊、北辻良央、小西紀行、小橋陽介、須藤由希子、棚田康司、橋爪彩、横尾忠則、山本桂輔、淀川テクニック。年代も違えばその作風もまったく異なる10人なので、「ファンタジー」はともかくとして「ノスタルジー」のキーワードでまとめられるのかと思いきや、過ぎ去った時間を懐かしむ気持ちという点で通覧すると、それぞれの個性がより際立ってくるから不思議だった。とりわけ魅入られたのは、木口木版画の第一人者としても知られる柄澤齊の非常に繊細で独特な世界・宇宙観を感じさせる作品群。そして橋爪彩による西洋絵画の古典的なモティーフを用いたスーパーリアルな現代女性のイメージ。アーティストたちがつくりだす迷宮に入り込んだように足を捉われ、惹きつけられた。[竹内有子]
2014/09/02(火)(SYNK)