artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

科学開講! 京大コレクションにみる教育事始

会期:2014/12/05~2015/02/17

LIXILギャラリー大阪[大阪府]

本展は、京都大学の前身である旧制第三高等学校(1894年創立)で使われていた物理学の実験機器や生物・鉱物の標本、教育掛図等、約80点を展示している。明治時代には、「science」という外来語の招来とともに近代的な「自然科学」がもたらされ、教育を通じて定着していく。会場では、力学・音響学・熱学・光学・電磁気学の分野で使われた実験機器を見ることができる。いまではあまり見ることのないものばかりだが、幾何学的な形をした部位で構成される器具は、ひとつのオブジェにも見える。これはもちろん、まず実用的な目的を満たした科学器具なのではあるが、そのこと自体が「美」をもたらしている。メタリックな輝きを放ちながら、幾何学性をもって形成される天体経緯儀なども例外ではない。展示品を通覧して驚くのは、当時の最高技術をもって精巧につくられた道具がもつこうした機能的な美しさである。これは現代の私たちが知る、工業製品のデザインの「機能美」に通じる。見る人に新しい見方を提示してくれる展覧会。[竹内有子]

2015/01/05(月)(SYNK)

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プレビュー:スイス・デザインの150年

会期:2015/01/17~2015/03/29

東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]

日本とスイスの国交樹立150年を記念して開催される展覧会。観光・交通といった地理的な要素をブランド化するデザインから、ビクトリノックスやネフ、スウォッチなどのものづくり企業のデザイン、デザインの巨匠マックス・ビル、スイス・タイポグラフィ、建築家ル・コルビュジエ、そしてスイスデザインの現在まで、その全貌を見せるという。スタイルとしては実用性と機能性、合理性というモダンデザインを好みつつ、ブランドの創出においては職人仕事、手仕事を重んじ、高い価値と優れたイメージを生み出しているスイスデザイン。その歴史と現在の姿は、日本のデザインのあり方にも大いに参考になるに違いない。[新川徳彦]

2015/01/05(月)(SYNK)

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トッド・マクレラン「THINGS COME APART」

会期:2014/11/22~2015/01/04

Paul Smith SPACE GALLERY[東京都]

カナダ・トロントをベースに活躍するフォトグラファー、トッド・マクレラン(Todd McLellan)の仕事から「Disassembly Series(分解シリーズ)」と呼ばれる写真作品が紹介されている。黒電話、タイプライター、カメラ、PC、時計等々、道端に捨てられていたガジェットを拾ってきてばらばらに分解し、白い背景の上にならべて撮影した写真シリーズ。言葉にしてしまうと至極簡単なのだが、露わにされたガジェットの機構の面白さと、それぞれがきちんと機能を持った部品によるコンポジションの美しさには驚かされる。これは当然かも知れないが、アナログで可動部が多い機械ほど構造は複雑で部品数が多い。タイプライターやアコーディオンの写真には膨大な数の部品が並んでいる。対して、DVDプレーヤはとても単純に見える。PCの構造は単純に思われるが、キーボードのキーなど意外に部品の数が多い。部品を並べて撮影した写真ばかりではなくそれらが宙を舞っている写真があるが、マクレランのウェブサイトを見ると実際に部品を落下させてストロボ撮影しているようだ。展覧会を企画したポール・スミスとは3種類の腕時計でコラボレーションしている。メカ好きにはたまらない作品。[新川徳彦]


Disassembly behind the scenes from Todd McLellan Motion/Stills Inc. on Vimeo.

2015/01/03(土)(SYNK)

ミュシャ・スタイル

会期:2014/07/12~2014/11/09

堺市立文化館 アルフォンス・ミュシャ館[大阪府]

パリのアール・ヌーボーの代名詞ともなった「ミュシャ・スタイル」であるが、アルフォンス・ミュシャがポスター画家としてそのスタイルを生み出し活躍したのは、サラ・ベルナールのポスター《ジスモンダ》(1894)から最初に渡米する1904年頃までのわずか10年間のことにすぎない。ミュシャがどのようにしてそのスタイルを生み出したのかはいまだに謎であるが、それ以降多くの追随者、模倣者を生み、いまだにその人気は衰えることがない。ではミュシャ・スタイルとはなんなのか。スタイルの構成要素には裾の長い布をまとった神秘的な女性や、植物、淡い色彩、曲線、装飾文様の多用があげられる。一見するとそれは様式化されたパターンの繰り返しに見えるが、実際には一つひとつの作品で異なる様相が見られ、ミュシャが作品のテーマごとに入念にモチーフを選択していたことが解説されている。また、ミュシャ・スタイルの前後の時代に描かれた作品と比較することで、表現の特徴と差異を提示している。[新川徳彦]

2014/8/20(水)(SYNK)

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活動のデザイン展

会期:2014/10/24~2015/02/01

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

社会的、アート的、SFのテイストなど、今後の世界を考えるさまざまデザインを紹介するものだが、幾つか興味深い作品に出会う。時計の群が文字を形成するア・ミリオン・タイムズ、タクラムによる身体化された百年後の水筒、風で転がりながら地雷を除去する装置マイン・カフォン、ホンマタカシのカメラ・オブスキュラとしての建築、大西麻貴+百田有希の望遠鏡のおばけ、ドローンの巣などである。


左:ヒューマンズ シンス 1982 《ア・ミリオン・タイムズ》(2014)
右:大西麻貴+百田有希/o + h 《望遠鏡のおばけ》(2014)


2014/12/15(月)(五十嵐太郎)

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