artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
路上から世界を変えていく 日本の新進作家 vol.12
会期:2013/12/07~2014/01/26
東京都写真美術館 2階展示室[東京都]
東京都写真美術館の「路上から世界を変えていく」展へ。糸崎公朗は、街の風景を撮影し、その写真群を立体的に再構成する懐かしい旧作のフォトモも出しつつ、路上の虫や動物の新シリーズを出品していた。これは普段見過ごすドキリとさせる内容だったが、彼のエリアは作品の情報量が多く、人が一番溜まっていた。また津田隆志による排除系ベンチやテントで各地を宿泊のシリーズは、拙著『過防備都市』に通じるテーマだった。
2014/01/13(月)(五十嵐太郎)
天機:富春山居圖(監督:スン・ジェンジュン)
帰りの機内、映画『天機:富春山居圖』を見る。有名な水墨画を盗むスパイ、アクションもので、アンディ・ラウやリン・チーリンらが出演する豪華作だった。ただし、つくりはやや荒削りである。劇中に登場する日本人たちは、ヤクザ、コスプレ、相撲、兵隊というステレオタイプのイメージだ。こうした映画は日本未公開なので、日本ではなかなか認識されにくいが、中国文化圏における日本兵の悪い印象はやはり視覚言語として共有されている。
2014/01/04(土)(五十嵐太郎)
未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展
会期:2013/12/14~2014/01/26
国立新美術館 企画展示室2E[東京都]
国立新美術館の「未来を担う美術家たち DOMANI 建築×アート」展へ。文化庁芸術家在外研修を扱う同シリーズとしては、初めて建築家をまとめて紹介した。総勢で約40名だが、部屋を細分化して並べる(アーティストは大空間を使えるのだが)。さすがに知っている人が多い展示で、いろいろと近況を知る。DOMANIのアートでは、大栗恵、小笠原美環、川上りえ、吉本直子のアートは、建築的、空間的で好みの作品だった。
2013/12/21(土)(五十嵐太郎)
酒井耕・濱口竜介監督「なみのこえ 気仙沼」上映終了後トークショー
アップリンク[東京都]
渋谷のアップリンクにて、『なみのこえ 気仙沼』の上映後、酒井耕監督とトークショーを行なう。筆者は建物、酒井は人の語りを通じ、未来への記憶に関心をもつ。映像技術の出現後、口承は異なる可能性を獲得するが、現在の被災者の語りも、遠い未来においては死者の語りとしてそのまま残っていく。2013年の『なみのこえ 気仙沼』と『なみのこえ 新地町』は、被災者が自ら語る『なみのおと』(2011)の手法を踏襲しつつ、岩手から福島へ南下した前作と違い、それぞれに街を限定し、一組につき約15分程度のリズムで語らせる。前作から時間を経たことで、今度は商売や住宅など、将来のことが話題に上がるようになったことが違いか。トークショーで、酒井監督が述べたように、被災の証言者もわれわれもみな死んでいるであろう100年後を意識した考え方が必要だろう。被災体験も震災遺構も、今生きているわれわれだけが所有するものではなく、今は主張できない未来の他者のものでもあるべきだ。
2013/12/21(土)(五十嵐太郎)
対話の可能性 LOVERS 永遠の恋人たち
会期:2013/11/07~2014/01/12
せんだいメディアテーク 6Fギャラリー[宮城県]
せんだいメディアテークにて、故・古橋悌二が参加していたダムタイプの展示を見る。「LOVERS 永遠の恋人たち」の静謐なインスタレーションほか、「S/N」が上映されていた。両方とも懐かしい。メディア・アートもそう感じる時代を迎えた。ダムタイプは、西洋人とは異なる、日本人の身体をうまく使い、映像と身体表現のパラダイムをつくり出したと思う。
2013/12/18(水)(五十嵐太郎)