artscapeレビュー

映像に関するレビュー/プレビュー

あなたの肖像─工藤哲巳 回顧展

会期:2013/11/02~2014/01/19

国立国際美術館[大阪府]

1994年以来、約20年ぶりとなる工藤哲巳の大回顧展。前回も大規模だったが、今回は総点数約200点と一層のスケールアップを果たしている。その主因は、前回はフォローし切れなかった1950年代・60年代の作品が数多く出品されたことだ。また、20年の歳月が工藤の再評価を進め、国内外の美術館で彼のコレクションが形成されるようになったのも大きい。帰国作品のなかには、《インポ分布図とその飽和点における保護ドームの発生》(ウォーカー・アート・センター蔵)のように、半世紀ぶりに国内公開されたものもあった。このように充実した内容のおかげで、本展では、反芸術から滞欧時代を経て1980年代以降に至る彼の業績をほぼ概観できる。同時に、工藤流ニヒリズムとでも言うべき思想の変遷を窺えるのも見どころだ。他には、大著となった図録の充実ぶりも特筆しておきたい。

2013/11/01(金)(小吹隆文)

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palla/河原和彦 作品展「Natures─PALLALINKの10年」

会期:2013/10/22~2013/11/10

海岸通ギャラリー・CASO[大阪府]

pallaこと河原和彦と、彼を中心とするアーティスト・ユニットPALLLINKの、活動10年を記念した大規模展。河原の作品の特徴は、1枚の写真を幾重にも反転し重ねることにある。シンプルな反復作業から生まれるイメージは、驚くほど幻惑的で豊穣だ。当初は都市をモチーフにしていたが、その後、緑や海などの自然環境にまで範囲を拡張し、多様な作品を発表している。本展では、広大な3つの展示室を使用し、河原とPALLALINKの活動を網羅的に紹介していた。また、2点の新作のうち映像インスタレーション《運ぶ人/引き摺る男》(画像)は、ストーリーがある映画的な作品だった。この新機軸が今後どのように展開するのか楽しみだ。

2013/10/23(水)(小吹隆文)

ワラッテイイトモ、

「笑っていいとも」の放送終了のニュースを聞いて、ある作品を思い出した。実は10年前、キリンアートアワードの審査で、「ワラッテイイトモ、」という衝撃的な映像作品と出会って以来、この番組が気持ち悪くなり、一度も見ていない。このとき作品自体が公開されない恐れを感じ、『10+1』に「白昼の怪物」という文章を寄稿した。いまや「ワラッテイイトモ、」は、ネットでも簡単に見ることができるが、当時はyou tube前夜だった。このキリンアートアワード2003のとき、一緒に審査員として「ワラッテイイトモ、」に魅せられたひとりがヤノベケンジ。同時に受賞していたのが、ブレイク直前の名和晃平。問題を受けて、アワードがキリンアートプロジェクト2005に変わり、筆者が選んだのが石上純也。キリンのアーティストが、あいちトリエンナーレにつながっている。当時「ワラッテイイトモ、」は、肖像権と著作権の問題から、展覧会では修正版が公開されることになった。が、それがもうひとつの奇蹟を起す。拙稿「なぜ『ワラッテイイトモ、』のアラン・スミシー・ヴァージョンは、かくも猥褻で、美しく、そして笑えるのか」(『インターコミュニケーション』47号、2003)で論じたように、三種類の修正版があり、そのひとつは曜日ごとに異なる修正パターンを試み、それがあたかも近代美術史の歴史を想起させるものになっていたことだった。ぼかし、モザイク、スクラッチなど、こうした具象の修正=抽象化は、まさに近代美術が歩んだ道ではないか。

2013/10/22(火)(五十嵐太郎)

プレビュー:あなたの肖像 工藤哲巳 回顧展

会期:2013/11/02~2014/01/19

国立国際美術館[大阪府]

1994年以来、約20年ぶりに開催される工藤哲巳の大回顧展。日本初公開を含む代表作約200点が展示されるほか、1962年の「第14回読売アンデパンダン展」に出品された伝説的作品《インポ分布図とその飽和部分に於ける保護ドームの発生》(ウォーカー・アートセンター蔵)が50年ぶりに帰国、さらには多数の記録写真と関連資料、ハプニングの秘蔵映像(初公開)と話題満載の内容だ。規模的にも前回の1.5倍に拡大しており、工藤展の決定版となるだろう。

2013/10/20(日)(小吹隆文)

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あいちトリエンナーレ2013 ビル・モリソン 映像プログラム「トリビュート・パルス」

会期:2013/10/13

愛知芸術文化センター12階 アートスペースA[愛知県]

映像プログラムのビル・モリソン「トリビュート・パルス」は、劣化した古い映画フィルムをデジタル技術で復活させ、画像の乱れをそのまま見せる。志賀理江子の写真にも通じる、どこか恐ろしげな、生々しいメディアのモノ性を強く感じさせる、めくるめく映像体験だった。だが、最終パートは、それまでとはまるで違うものとなり、水害に襲われた映像を見せるという、驚くべき展開だった。

2013/10/13(日)(五十嵐太郎)