artscapeレビュー

映像に関するレビュー/プレビュー

KYOTO EXPERIMENT 2012 公式プログラム ビリー・カウィー「Tango de Soledad/The Revery/In the Flesh」

会期:2012/09/22~2012/10/28

京都芸術センター[京都府]

イギリスを拠点に国際的に活動するビリー・カウィーによるビデオ・インスタレーション。自ら振付・作詞・作曲・演奏を手掛けたダンス作品を、3D映像で上映している。3つの作品は、映像に対して、水平、見下ろす、見上げる視点で見るよう構成されており、それらはどれもダンサーの細かな表情や息遣いまで感じられるリアルなものだった。ダンサーが手を差し伸べてきた時は、3Dと知っているにもかかわらず、つい手が伸びそうになったほどだ。バーチャルではあるが、舞台公演ではありえないほど間近でパフォーマンスが見られるのは、確かに魅力的である。テクノロジーにより身体感覚を増幅させるその手法に、大きな可能性を感じた。なお、ビリー・カウィーは3Dと生身のダンサーが共演するプログラムを模索中で、京都滞在中に日本人ダンサーと3D映像を制作、帰国後にイギリスで撮影した他のセクションを加えて編集し、来年再び京都に戻って数人の生身のダンサーとのコラボレーション作品を発表する予定である。

2012/09/25(火)(小吹隆文)

桐島、部活やめるってよ

映画『桐島、部活やめるってよ』を見る。緻密に構築されたスクールカーストが、トップに位置する桐島が姿をくらますことで、パズルのピースが崩れだし、関係性のネットワークに些細な変化がもたらされる。そして『ゾンビ』を伏線として、最後の屋上ですべてが交錯するさまを、多視点手法によって、丁寧に丁寧に描く。学校という閉ざされた空間は、まぎれもなく世界そのものである。そして映画部のメンバーたちの愛おしいこと!

2012/09/21(金)(五十嵐太郎)

プレビュー:よみがえりのレシピ

会期:2012/10/20

ユーロスペース[東京都]

おいしいものを食べたい。できるだけ安全で、健康によい食べものを。人間にとって当たり前の欲求を、改めて見直す機運が昨今高まっている。この映画は、山形県内で細々と栽培されている「在来作物」についてのドキュメンタリー。「在来作物」とは、「ある地域で世代を超えて栽培者によって種苗の保存が続けられ、特定の用途に供されてきた作物」のこと。品種改良を繰り返して均質化された農作物が効率的に生産される現代社会では長らく忘れられていたが、大量生産・大量消費・大量廃棄という社会の仕組みが反省されるなか、地域資源のひとつとして注目が集まりつつある。本作は、山形在来作物研究会の会長で山形大学准教授の江頭宏昌と、山形イタリアンこと「アル・ケッツァーノ」のオーナーシェフ奥田政行の2人を中心に、さまざまな農家の人びとの実践例を紹介するもの。急峻な山の斜面の森林を伐採し、焼畑の後、栽培されるカブの美しさに圧倒されるが、それが奥田の手によって調理されると、ひときわ美味しく見えるからたまらない。いくぶん「在来作物」のポジティヴな面を強調しすぎるきらいがあるにはせよ、それでも観覧者の食欲を刺激しつつ、「在来作物」というオルタナティヴについて考えさせる、きわめて良質のドキュメンタリー映画である。

2012/09/20(木)(福住廉)

建築学概論

帰りの機内、韓国で大ヒットした映画『建築学概論』を見ることができた。建築学生の初恋から10年。彼がつとめる事務所にその女性が再び訪れ、家の設計を依頼し、物語が始まる。現在と過去が交互に進行し、それぞれのエンディングを迎える平行した時間の構造は韓国で話題になった『サニー 永遠の仲間たち』と似ている。それにしても韓国は建築家を主人公とする映画やドラマが多い。自由に恋愛できるロマンティックな職業と思われているのだろうか。

2012/09/06(木)(五十嵐太郎)

アメイジング・スパイダーマン

会期:2012/06/30

『アメイジング・スパイダーマン』を見る。高層ビルの隙間を軽やかに飛びまわるアクションはもはや定番。これも技術的な表現の進化が安定期に入ったのか、スペクタクル的な絵はやり尽くした感があるので、ドラマの部分がよりつくり込まれていた。さすが『500日のサマー』の監督らしい、ハイスクールにおける男女の物語を巧みに描く。が、それにしてもエンディングに日本語の主題歌が流れるのは酷い。これで動員が増えることはないだろうし、本来の映画ファンもがっかりだ。一体、誰が喜ぶ、広報的な仕掛けなのだろう?

2012/08/23(木)(五十嵐太郎)