artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
MBS東日本大震災報道特別番組「受け継ぐ~南三陸町 立ち上がる若き漁師たち~」
ちょうど同じ日に、MBSのテレビ放送で、ドキュメンタリー「生き抜く」の続編「受け継ぐ~南三陸町 立ち上がる若き漁師たち~」を見る。今回も人を中心に追うのだが、特に次世代の漁師たちに焦点を当て、震災後二年目の新しい始まりの状況を描く。また被災者の語りを通じて、巨大な堤防建設や南三陸町の防災庁舎の保存への疑問にも触れている。しかし、個人的にはそれでも被災遺構はできるだけ残すべきだと思う。
2013/03/03(日)(五十嵐太郎)
生き抜く 南三陸町 人々の一年
『生き抜く 南三陸町 人々の一年』を見る。生き残った命とていねいに寄り添い、3.11からの日々を描くドキュメンタリー。テレビ局にもこうした良心的な作品が、いや、多くのスタッフやカメラをまわせるからこそ可能な内容でもある。僕自身、あのときからの映像を見ながら、3月下旬、5月、8月……と訪れた南三陸の風景をフラッシュバックのように思いだす。確かに現場に存在していたあの匂いは伝わってこないが。
2013/03/03(日)(五十嵐太郎)
空を拓く~建築家・郭茂林という男
会期:2013/02/02~2013/03/15
僕も協力でクレジットされたドキュメンタリー映画『空を拓く』を見る。霞ヶ関ビルや新宿副都心、台北の高層建築をとりまとめた台湾出身の建築家、郭茂林の生涯を追いかけたものである。彼は日本統治時代の台湾で末っ子として生まれ、普通の学校から東大助手を経て、日本の高度経済成長に伴い、人のネットワークを生かし、大型プロジェクトのフィクサーとして頭角を現わす。特に前半は、人を成長させていく、教育の力を思い知らされる。映画では、台湾の建築批評家、謝宗哲さんもコメントしていた。
2013/03/01(金)(五十嵐太郎)
so long! The Movie
大林宣彦監督によるAKB48の『so long! The Movie』の映像を見た。AKB48の楽曲は保守的なウェルメイドだが、彼女らをめぐるシステムは破壊的な前衛である。この映像は明らかに後者だ。3.11以後のもっとも重要な作品のひとつ、大林の映画『この空の花ー長岡花火物語』の続編と言うべき内容であり、もっと福島に寄りそうものだ。わざとらしい表現や演出などの手法もほぼ踏襲している。この文脈を前提とさせられるファンにとっては嫌いな作品だろうが、大林にこの「映画」をつくることを許した度量がすごい。
2013/02/26(火)(五十嵐太郎)
カタログ&ブックス│2013年2月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
会田誠作品集 天才でごめんなさい
2012年11月17日(土)〜2013年3月31日(日)まで、森美術館で開催中の「会田誠 天才でごめんなさい」展カタログ。「デビュー以来一貫して自らが生きる社会を凝視し続け、批評、風刺あふれるセンセーショナルな作品を発表し続ける会田誠。そのタブーに挑む表現から真の評価が遅れてきた会田の全貌を検証する」[青幻舎サイトより]
SUPER RAT
芸術実行犯Chim↑Pomの全貌! 2005年結成からパルコミュージアムでの個展「Chim↑Pom」までの代表作をすべて網羅。さらに国内外の評論家やキュレーターによるさまざまな論考を併載し、話題沸騰のアーティスト集団に迫る。[パルコ出版サイトより]
アシュラブック
興福寺 阿修羅像から東大寺 不空羂索観音像へ
興福寺の阿修羅像が美少年になった理由とは? 興福寺の阿修羅像は、日本の仏像の中でナンバーワンの「美少年」です。ですが、阿修羅のルーツをたどっていくと、ある疑問にぶつかります。阿修羅はそもそも鬼の神。インドや中国など各地でつくられた像の多くは、すさまじい形相をしているものが多々あり、美少年のイメージから遠くかけはなれています。では、なぜ興福寺の阿修羅像が生まれたのでしょうか? 本書では、美少年が生まれるヒストリーの裏に隠された、人間のさまざまなドラマに迫ります。また、最近の研究により新事実の発覚した、東大寺不空羂索観音像との関係もクローズアップ。さらに、奈良の美仏も多数収録。奈良の仏像の「美しさ」を徹底的に解説。仏像好き必見の一冊です。[美術出版社サイトより]
写真画報
荒木経惟「淫夢」×佐内正史「撮っている」
ふたりの写真家を選出し、それぞれの作品をほぼ同じページ数で掲載する新しい表現スタイルの写真雑誌です。写真表現を拡張する可能性を探りつつ、写真家の本質を対比によって表出させます。特集ではインポッシブルのインスタントフィルムで撮影した新作を発表する荒木経惟と、ストレートで純粋な表現で挑む佐内正史のふたりを取り上げます。それぞれ60 ページに渡るボリューム満点の撮り下ろしの作品ページとインタビューは、見応え十分です。他に最新写真ニュースやブックレビューなどのコラムを掲載しています。
[玄光社サイトより]
地域を変えるソフトパワー
アートプロジェクトがつなぐ人の知恵、まちの経験
東日本大震災が起きる以前から、地域社会の疲弊に対して多くの振興策が実施されてきた。しかし、それらはじゅうぶんな成果を上げられなかった。公共事業による箱モノ行政や、大規模商業施設の誘致がいっときのカンフル剤として機能したとしても、高度成長期より徐々に進んできた地方の過疎化と大都市への一極集中は食い止められず、地域社会は疲弊したままである。そうしたなか、新たな地域再生の試みが少しずつ成果を上げ始めている。多様な地域資源を再活用し、人々のコミュニケーションを応援し、2000年以降地域コミュニティ再生に不可欠な存在として浮かび上がってきたのが、アートプロジェクトである。このアートを社会に開く活動は、地域における小さな拠点開発に長けており、大規模の施設を必要とせず、最小の投資を最大限に活かすことができる。私たちは、全国の様々なアートプロジェクトが備えているそんな機能を、「ソフトパワー」と名付けてみたいと思う。地域に暮らす、あるいは関わる人々の「もやもやとした思い」を受け止め、様々な実践へと展開していくこと。着実に成果を生んでいる各地の取り組みを取材し、一つひとつ紐解いてみたい。柔軟な社会変革、だからソフトパワーなのである。[地域を変えるソフトパワー特設サイトより]
建築映画 マテリアル・サスペンス
建築家・鈴木了二は、建築・都市があたかも主役であるかのようにスクリーンに現れる映画を「建築映画」と定義します。「アクション映画」、「SF映画」や「恋愛映画」といった映画ジャンルとしての「建築映画」。この「建築映画」の出現により、映画は物語から解き放たれ生き生きと語りだし、一方建築は、眠っていた建築性を目覚めさせます。鈴木は近年の作品のなかに「建築映画」の気配を強く感じると語ります。現在という時間・空間における可能性のありかを考察するために欠かすことができないもの、それが「建築映画」なのです。ヴァルター・ベンヤミン、ロラン・バルト、アーウィン・パノフスキーやマーク・ロスコの言葉にも導かれながら発見される、建築と映画のまったく新しい語り方。本書で語られる7人の映画作家たち:ジョン・カサヴェテス、黒沢清、青山真治、ペドロ・コスタ、ブライアン・デ・パルマ、二人のジャック(ジャック・ターナー、ジャック・ロジエ)。黒沢清、ペドロ・コスタとの対話も収録。[LIXIL出版サイトより]
2013/02/15(金)(artscape編集部)