2020年07月01日号
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artscapeレビュー

プレビュー:よみがえりのレシピ

2012年10月01日号

会期:2012/10/20

ユーロスペース[東京都]

おいしいものを食べたい。できるだけ安全で、健康によい食べものを。人間にとって当たり前の欲求を、改めて見直す機運が昨今高まっている。この映画は、山形県内で細々と栽培されている「在来作物」についてのドキュメンタリー。「在来作物」とは、「ある地域で世代を超えて栽培者によって種苗の保存が続けられ、特定の用途に供されてきた作物」のこと。品種改良を繰り返して均質化された農作物が効率的に生産される現代社会では長らく忘れられていたが、大量生産・大量消費・大量廃棄という社会の仕組みが反省されるなか、地域資源のひとつとして注目が集まりつつある。本作は、山形在来作物研究会の会長で山形大学准教授の江頭宏昌と、山形イタリアンこと「アル・ケッツァーノ」のオーナーシェフ奥田政行の2人を中心に、さまざまな農家の人びとの実践例を紹介するもの。急峻な山の斜面の森林を伐採し、焼畑の後、栽培されるカブの美しさに圧倒されるが、それが奥田の手によって調理されると、ひときわ美味しく見えるからたまらない。いくぶん「在来作物」のポジティヴな面を強調しすぎるきらいがあるにはせよ、それでも観覧者の食欲を刺激しつつ、「在来作物」というオルタナティヴについて考えさせる、きわめて良質のドキュメンタリー映画である。

2012/09/20(木)(福住廉)

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