artscapeレビュー

映像に関するレビュー/プレビュー

佐藤雅晴 Bye Bye Come On

会期:2010/05/08~2010/05/29

イムラアートギャラリー[京都府]

エスカレーターを昇り続ける女性の後ろ姿のアニメ、林の中でウサギとクマの着ぐるみが手招きをするアニメ、そしてスチール作品が5点と映像がもう1点出品された。実写映像をフォトショップ上でトレースし、ペンタブレットで描いた作品は、初期段階で実写データを消去し、イメージだけが画面に定着している。そのためだろうか、現実と非現実の中間を見せられているような不安定な感覚がぬぐえない。2008年に「液晶絵画」という展覧会があったが、佐藤の作品もまさにその一例だ。今後はこうした表現がどんどん増加するのであろう。

2010/05/11(火)(小吹隆文)

金沢健一 展

会期:2010/05/08~2010/06/12

CAS[大阪府]

決められたモジュールにしたがって鉄板を切断し、積み重ねて溶接した立方体のオブジェを多数出品。溶接の方法により、作品には二つの系統がある。いずれにせよ、硬質かつミニマルな立体のバリエーションを楽しんだ。また、鉄板にバーナーを当てて鉄が溶けていく様子を、バーナーの反対側から撮影した映像作品も出品。徐々に流動体化していく鉄の様子は、立体のハードエッジな作風と対照的だった。

2010/05/08(土)(小吹隆文)

Palla/河原和彦 作品展「イコノグラフィー2『銀河』」

会期:2010/05/07~2010/06/06

ギャラリーKai、銀杏菴[大阪府]

1点の写真を何度も折り返して重ねることで驚くべき世界を表出させる、Pallaこと河原和彦。本展では海岸の岩場や大阪の港湾を素材にした新作の写真作品を発表。モノクロを選択したことにより、まるで水墨画のように幽玄なビジュアルが表現された。別会場の銀杏菴(今年で築100年の長屋)では、床の間で映像作品を展覧。空間とのマッチングが良く、スチール作品以上にマジカルな作品に仕上がっていた。

2010/05/08(土)(小吹隆文)

明るい上映会

会期:2010/03/30~2010/04/11

企画ギャラリー・明るい部屋[東京都]

東京・四谷のギャラリー、明るい部屋の「一周年記念」ということで開催されたスライドショー企画。同ギャラリーのメンバーである秦雅則、遠矢美琴、三木義一、小野寺南のほか、「これまで当ギャラリーの展示やワークショップに参加してくださった若手作家」(エグチマサル、中島大輔、古田直人、元木みゆき、渡邊聖子など)24名の作品を、A、B、C、Dの4つのグループに分けて連続上映している。全部見ると2時間近くなるのだが、けっこう面白い作品が多かったのでつい最後まで見てしまった。映像を一コマずつ流していく純粋なスライドショーもあるが、動画と組み合わせたり、音を入れたり、画像処理をしたりと、けっこう手の込んだものが多い。パソコンでの入力、出力や、プロジェクターの精度も上がってきているので、このような企画が簡単に成立するようになってきたということだろう。
ただ、作りやすく、発表しやすくなっているということは、ただの映像の垂れ流しになる危険も増しているということだ。実際に退屈きわまりなく、見続けるのが苦痛になってしまう作品も少なくなかった。逆にきちんとコンセプトを立てて作り込んでいったり、奇想天外なアイディアを膨らませたりしていけば、かなり面白くなる可能性もある。前者の代表がスライドショーという枠組みを逆手にとって、10分間同じ岩の写真を上映し続けた渡邊聖子の「否定」、後者の代表があまりにも不穏当過ぎて、ここでは詳細を書くことができないほどの破天荒な魅力にあふれる古田直人の「SCOTCH Magnetic Tape」ということになるだろう。特に古田の作品には度肝を抜かれた。彼の秘められた才能が思いがけないかたちで爆発している。

2010/04/08(木)(飯沢耕太郎)

かなもりゆうこ展 物語─トショモノ

会期:2010/03/08~2010/03/27

ギャラリーほそかわ[大阪府]

親密な友人たちとの交流を撮影し、ドキュメントとフィクションの中間的な映像作品をつくってきたかなもりだが、新作はやや映画よりで、ストーリー性のある物語が綴られていた。映像は壁面と見開いた書籍に投影されており、作品中に登場する衣装や書籍が展示室に配置されている。また、作品の一部が本展会場で撮影されていることもあり、映像空間と現実空間の境界が曖昧なのだ。これまでの作品がドキュメントとリアルの境界を彷徨っていたとしたら、本作はスクリーンの向こう側と手前側の往還がテーマである。かなもりはまたひとつ新たな彼女独自の文法を獲得した。

2010/03/08(月)(小吹隆文)