artscapeレビュー
その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー
辛酸なめ子 展「オーブの記憶」
会期:2010/05/31~2010/06/12
森岡書店[東京都]
辛酸なめ子の個展。写真に写りこむオーブ(玉響)がテーマで、オーブをとらえた写真やオーブについての漫画の生原稿、オーブのグッズなどを展示した。目に見えないものを見えるようにするのがアートの役割だとすれば、目に見えないものに特別な意味を与える心霊現象とアートはかなり近い。
2010/06/03(木)(福住廉)
浅田政志 写真展 Tsu Family Land
会期:2010/04/17~2010/05/30
三重県立美術館[三重県]
家族でコスプレしてさまざまな職業や状況の写真を制作する浅田政志が、故郷の美術館で大規模個展を開催した。館内をレジャーランドと仮定し、作品だけでなくアトラクション的要素やショップ、記念撮影コーナーまで設けたサービス精神たっぷりの内容で、もちろん展示室内の撮影もOK。溢れる家族愛に感化されるのか、地元への愛に満ちているからか、観客の誰もが優しい表情で展覧会を楽しんでいる。型破りな展示構成はもちろん、地元市民との距離を縮めるという意味でも、公立美術館の企画として出色と言えるだろう。
2010/05/03(月)(小吹隆文)
徳島LEDアートフェスティバル2010
会期:2010/04/17~2010/04/25
徳島市ひょうたん島一帯[徳島県]
JR徳島駅がある市内中心部の中州、通称「ひょうたん島」の河岸と周辺地区に、LEDを用いたアート作品が多数展示された。作品は、招待作家4人を含む27点。会期中はイベントも多数開催され、周遊船の就航やランドマークのライトアップもあって、市中の夜が華やかに演出されていた。正直、招待作家以外は玉石混交で、なかには稚拙な作品もあった。しかし、日が沈むにつれ河岸に市民が集い、思い思いに夜景を楽しむ様子を見ていると、市民のお祭りとしては上出来なのかなとも思う。今後も継続されるのか定かではないが、じっくり育てていけば市民に愛される風物詩的なアートイベントになるかもしれない。
2010/04/24(土)(小吹隆文)
SEXES
会期:2010/02/19~2010/02/21
素人の乱シランプリ[東京都]
ほんとうにおもしろい表現とは、何も言うことができなくなるのかもしれない。ということをまざまざと実感させられた展覧会。ことの経緯と詳細を詳しく知りたければ、アーティストのひさつねあゆみのブログへ。ただ、ひとつ確かにいえることは、ミラクルを呼び込み、それをしっかりと捕まえて、こちらにすぐさまポンと投げ返してくるスピードとコントロールに、同展会場の素人の乱シランプリ店主であり、同展をプロデュースした山下陽光の類稀な才覚があること。ほんとうに大切なものは、結局のところ、こういうところにしかないのではないだろうか。
→ひさつねあゆみのブログ
2010/02/21(日)(福住廉)
北尾博史 森の部品 元土御門の森
弘道館[京都府]
会期:2010/01/24~2010/01/25、2010/02/11~2010/02/21
瀟洒な住宅が点在する京都御所西側の一角に、「弘道館」という古い邸宅が存在する。見事な建築と苔庭からなり、江戸時代中期には学者の皆川淇園が学問所を開いていたという由緒ある場所だ(ただし、現在の建物は近代以降に建てられた別物)。今は老舗和菓子店「老松」が所有している。同館の新たな活用法として美術展が催された。北尾博司の彫刻が室内外に配置され、同時に同館ゆかりの器や掛軸、屏風なども展示。そして「老松」の菓子職人たちが、展示からインスピレーションを得た創作和菓子を添えている。会期中には茶会も催されたとのこと。なんとも贅沢な、京都でしかあり得ない展覧会。至福の空間に包まれて、しばしの間、時が経つのを忘れた。
2010/02/19(金)(小吹隆文)