artscapeレビュー

その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー

休符だらけの音楽装置

会期:2009/10/10~2009/11/03

旧千代田区立練成中学校[東京都]

旧中学校の屋上運動場で催された展覧会。大友良英をはじめ、伊東篤宏、梅田哲也、Sachiko M、堀尾寛太、毛利悠子、山川冬樹が広い会場に作品を点在させた。キャプションもハンドアウトもなかったので、どれが誰の作品かは判別しなかったけれど、全体的に共通していたのは、ひそやかな佇まい。オブジェをわずかに運動させたり、光を時折明滅させたり、小さな音を発したり、巨大な装置を派手に動かすスペクタクルなアートとは対照的に、大切な宝物を手のひらでそっと包み込むような、ナイーヴな感性が通底していたようだ。美術にかぎらず、音楽や映像など文化全般に及ぶ、ゼロ年代の大きな潮流のひとつである「ひそやか系」が一堂に会した展覧会だった。

2009/11/2(福住廉)

水都大阪2009

会期:2009/08/22~2009/10/12

大阪市一帯[大阪府]

世界的にも珍しいロの字型の水の回廊が大阪に存在すること、大阪が水の都であることをシンボライズする2カ月にわたる大規模なイベント。プロデューサーは北川フラムと橋爪伸也、総合アドバイザーは安藤忠雄。この2カ月間、水辺に関連する膨大なプログラムが行なわれた。筆者は最終日だけを見学したが、中之島周辺では、その盛り上がりのクライマックスを迎えていた。水や河川という視点から都市を見直したときに、従来認識していた都市構造が劇的に変化するという体験は極めて興味深い。実際、川口遊里図屏風などを見ると、都市が河川上にまで連続的に広がっていた様子がよく分かる。東京も江戸時代は、らせん上に掘割が切られ、豊かな河川・運河空間を持っていたが、現在そのことはあまり知られていない。この水都大阪のイベントは、過去により豊かな河川空間を持っていた他の都市にとっても、都市再生のモデルの一つとなりうるのではないだろうか。筆者は大阪に立ち寄ることがそれほど多くないのだが、今回ですっかり水のイメージが大阪に焼き付いた。

2009/10/12(月)(松田達)

水都大阪2009

会期:2009/08/22~2009/10/12

中之島公園・水辺会場、八軒家浜会場、水の回廊・まちなか会場[大阪府]

大阪・中之島エリアを中心に、約7週間にわたって多数のワークショップ、展覧会、各種イベントが開催された「水都大阪2009」。しかし、終了後に改めて思ったのは、果たしてこの催しにアートは必須だったのかという疑問だ。もちろん、ヤノベケンジは奮闘したし、今村源が適塾で行なった展示は見応えがあった。ワークショップのなかにもきっと素晴らしいものがあったのだろう。でも、私が何度か会場を訪れて感じたのは、アートと言うよりも文化祭的な狂騒ばかりだ。いや、最初からアートは脇役で、私が勘違いしていただけなのかもしれない。結局、最後まで意図を理解できないまま「水都大阪」は終わってしまった。

2009/10/12(月)(小吹隆文)

神戸ビエンナーレ2009

会期:2009/10/03~2009/11/23

メリケンパーク、兵庫県立美術館、神戸港海上、ほか[兵庫県]

2回目を迎えた神戸ビエンナーレ。今回はメイン会場のメリケンパークに加え、兵庫県立美術館と神戸港海上でも作品展を開催。3会場を船で繋ぐという港町・神戸らしい演出も導入された。また。メリケンパーク会場で文化庁メディア芸術祭の入賞・入選作品の上映が行なわれたり、三宮・元町商店街では地元と大学生の協同プロジェクトが行なわれるなど、バラエティの豊かさも実感できた。結論から言うと、その方向性は正解。招待作家を県立美術館に集めることで質の高い展覧会が見られたし、船に乗るのは単純に楽しい。メリケンパークにコンテナを並べて行なわれた展示も前回より進歩が感じられた。また、全会場に入場でき、船にも乗れる一番高額なチケットが1,500円という価格設定は、良心的と言ってよいだろう。あえて苦言を呈すると、コンテナ展示の一部は進歩が感じられなかった。児童絵画展と障害者作品展はともかく、陶芸展といけばな展はもっとやりようがあるはずだ。この点は第3回の課題として改善を希望する。

2009/10/02(金)(小吹隆文)

神戸ビエンナーレ2009

会期:2009/10/03~2009/11/23

メリケンパーク、神戸港会場、兵庫県立美術館、三宮・元町商店街[兵庫県]

2007年に第1回が開催された神戸ビエンナーレ。その売りは、貨物コンテナを大量に持ち込んで展示会場に流用するという、港町・神戸を意識したプランだった。しかし、引きが取れず照明設備が劣るコンテナでは、インスタレーションや映像ならともかく、絵画や立体をまともに見ることは難しい。そうした設備面での悪条件と、さまざまなレベルの作品が混在した配置もあって、多くの課題を残す結果となった。今秋の第2回では、招待作家を兵庫県立美術館に集中させ、主会場のメリケンパークと連絡船で結ぶ方式を採用。さらに海上でも作品展示を行ない、スケールとグレードの向上を図っている。メリケンパーク会場で昨年同様コンテナが用いられるのは、筆者としては残念。しかし、兵庫県立美術館と海上で質の高い展示が行なわれるなら、前回以上の成果が期待できる。また、街中の三宮・元町商店街と美大生・専門学生による共同企画も予定されており、地元との密着が強く意識されている点にも好感が持てる。主催者の構想が額面通りに機能して、見応えのある催しになることを期待する。

2009/09/20(日)(小吹隆文)