artscapeレビュー
その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー
青木淳 夏休みの植物群
会期:2009/08/01~2009/09/05
TARO NASU[東京都]
建築家・青木淳の個展。建築家の展覧会といえば、真っ白い建築模型が定番だが、青木淳はあくまでも現代美術としての作品を発表したようだ。会場の床にはサッカーボールを生やした植木鉢や白いリングを組み合わせたユニット、壁には茫漠とした平面作品。現代美術の定番どおり、いささか素っ気ない空間に仕上がっていたが、これは鑑賞者に思わせぶりな謎掛けをしておいて煙に巻くだけの旧来のアートのルールにのっとったというより、むしろ分析的・分解的な傾向を強調するための工夫なのだろう。青木淳といえば、4つの円を組み合わせたリングユニットを積み上げて建造物を支えるリング構造体で知られるが、それらを六角形の集積によって成り立つサッカーボールと並置することで、空間を構成する最小限の単位を意識させようとしていたからだ。それが現代美術のミニマルな傾向と共振していることはまちがいないが、同展が示唆していたのは建築から現代美術への飛躍にとどまらない。植木鉢は、そうした最小単位を人工的な自然として社会に定着させようとする野望の現われのように見えた。
2009/08/29(土)(福住廉)
アーバン/グラフィティ・アート展
会期:2009/08/14~2009/08/25
Bunkamura Gallery[東京都]
UKのグラフィティ・アートを集めた展覧会。セックス・ピストルズのジャケットで知られるジェイミー・リードの《Union Jack God Save the Queen》をはじめ、バンクシーやニック・ウォーカーなどによるシルクスクリーン、およそ100点が展示された。ステンシルの導入以来、グラフィティはヴィジュアル・イメージの度合いが増すとともに、商業的な価値も高めていったが、同展に展示されたグラフィティ・アートはまさしく「アート」に比重を置いたグラフィティだった。逆にいえば、そこに「ストリート」の野蛮な香りを求めることがかなわないほど、今日のアーバンはアート化されているということなのだろう。
2009/08/25(火)(福住廉)
勝手に観光ポスター展
会期:2009/07/28~2009/08/16
LAPNET SHIP[東京都]
みうらじゅんと安斎肇による「勝手に観光協会」の個展。文字どおり勝手に作成した、47都道府県の観光ポスターを一挙に公開した。全体を一貫しているのはゆるい空気感で、それはそれでひとつのありうる立場だとはいえ、47枚も同じようなテイストが続くと、さすがに辟易させられる。もう少し緩急をつけたほうが、持ち味の「ゆるさ」が生きて、もう少し笑えるのではないかと、勝手に、思った。
2009/08/13(木)(福住廉)
スタジオジブリ・レイアウト展
会期:2009/07/25~0009/10/12
サントリーミュージアム[天保山][大阪府]
昨年東京都現代美術館で開催され、大きな話題を集めた展覧会が、約1年の時を経て大阪でも開催。改めて実感したのは、その膨大なレイアウト(アニメの設計図となる原画のようなもの)の量。1本のアニメを作るのにどれだけ沢山の絵を描かねばならないことか。上手さ以上に量が天才の証であることを、現物をもって見せつけられた。会場は人、人、人で息もつけない盛況ぶり。なかなか前に進めないので、途中から最前列で見るのを放棄した。ジブリのブランド力はやっぱりすごい。観客の多くは作品を前にストーリーやキャラの魅力、そこから発展して思い出話に花を咲かせていたが、そういう展覧会だっけ? いや、だからこそアニメは強いのか。思い入れのない身には観客を観察する楽しみも残されていた。
2009/08/02(日)(小吹隆文)
山下洋輔トリオ復活祭
会期:2009/07/19
日比谷野外音楽堂[東京都]
山下洋輔のトリオ結成40周年を記念したライブ。ピアノの山下を縦軸に、ドラムの小山彰太、森山威男、テナーサックスの中村誠一、菊地成孔、アルトサックスの坂田明、林栄一、ベースの國仲勝男が、司会の相倉久人の進行のもと、入れ代わり立ち代わり登場する構成。彼らの協演に、大半が中高年で占められた観客は大いに盛り上がったが、なかでも突出して会場を沸かせたのが坂田明と森山威男。坂田はサックスの途中で突如として「ハナモゲラ語」による絶叫節を歌い上げ、観客一人ひとりの心底を鋭く突くほどの力強いドラムを見せた森山は、会場の気分が最高潮に達する直前、まさかのエアードラムを入れて、みんなを「あっ」といわせた。演者と観客が相互に向き合うことで場の空気を盛り上げていくという、フリージャズの醍醐味を「これでもか!」とばかりに実感させる、じつに幸福感に満ちたライブだった。
2009/07/19(日)(福住廉)