artscapeレビュー
その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー
水都大阪2009
会期:2009/08/21~2009/10/12
大阪市・中之島周辺[大阪府]
大阪・中之島を主会場に、高度成長期を経ていったんは途切れかけた水辺と市民の関係を取り戻そうとする複合イベント。アーティストがかかわるものでは、ヤノベケンジによるアート船とアートツアー「トらやんの大冒険」、KOSUGE1-16、藤浩志、パラモデルら多数の作家が連日ワークショップを繰り広げる「水辺の文化座」、元永定正&中辻悦子、河口龍夫、今村源らが建築遺産を会場に行なう作品展示がある。全体のなかでワークショップが占める比率が高く、見るよりも積極的な参加が求められるのが特徴だ。
2009/07/15(水)(小吹隆文)
大友良英+青山泰知+伊藤隆之+YCAM Inter Lab+α「ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置」展
会期:2009/07/04~2009/08/09
VACANT[東京都]
大友良英らによる展覧会。およそ100台の古いポータブルレコードプレイヤーを並べた大規模なサウンドインスタレーション《without records》を発表した。さまざまな高さの台に置かれたポータブルプレイヤーが広い空間に林立し、その上にはランプが下がり、レコードの欠けたプレイヤーから発せられるノイズとは無関係に明滅する。インスタレーションとしての完成度に十分満足しつつも、機械の摩擦やサイレンを連想させる、いかにもノイズ的な音の質が旧態依然としているように思えてならない。ポータブルプレイヤーというレトロな再生装置をあえて利用しているように、懐古的な志向性をあえて狙っているのかもしれないが、すでに機械化された人間というモチーフが一般化している以上、その今後のありようを予見させる音の質こそ求められているように思う。「ノイズ」には回収しえない音は、ありえないのだろうか。
2009/07/11(土)(福住廉)
草月いけばな展[赤と黒]
会期:2009/06/04~2009/06/09
新宿橋高島屋11階[東京都]
草月流のいけばな展。会場は全体的に赤と黒で統一され、そのなかで家元である勅使河原茜をはじめ、数多くの作品が発表された。一般的な生け花の固定観念をいとも簡単に覆されるほど、いずれの作品も奇抜であり、ゴテゴテのバロックというべきか、キッチュのてんこ盛りというべきか、破天荒きわまるものばかりだった。そうしたなか、ひときわ際立っていたのが、黒い長靴にバンブーをいけた大久保春霞(後日訂正。長靴は、陶製の花器で、バンブーのように見えたのは砥草[とくさ]らしい)。周囲のように足し算ではなく、引き算の発想が潔い。
2009/06/8(月)(福住廉)
躍動する魂のきらめき─日本の表現主義
会期:2009/06/23~2009/08/16
兵庫県立美術館[兵庫県]
本展は、1910~20年代(主に大正時代)に起こった前衛的な美術運動を、内面の感情や生命感を表わしたとして“日本の表現主義”と位置付け、約350点の美術・工芸・建築・演劇・音楽作品等で明らかにしようとするもの。同様のテーマで思い出されるのは1988年に開催された「1920年代日本展」だ。実際、出品物にも重複が多々見られるが、“日本の表現主義”とカテゴライズして一歩踏み込んでいるのが今回の特徴である。そのため、萬鐡五郎、村山知義、神原泰といった代表的な作家だけでなく、黒田清輝、富本憲吉など従来の感覚では当てはまらない作家も、表現主義的傾向が見られる例として出品されている。それゆえ記者発表時に、「表現主義を名乗ることは妥当か?」「作家の選定に納得できない」といった議論が起こった。そうした疑問にどう応えていくかは研究者の今後の課題であろう。それはともかく、枷から解き放たれて激情が噴出したかのごとき作品群は、今なおキラキラと輝いて見える。前述の課題はあるものの、図録の出来栄えも含め、十二分に魅力的な展覧会であった。
2009/06/23(火)(小吹隆文)
足立智美による「新国誠一」パフォーマンス
会期:2009/06/22
武蔵野美術大学12号館1階ビデオアトリエ[東京都]
パフォーマー/作曲家の足立智美によるパフォーマンス公演。同大学で催されていた「新国誠一の《具体詩》」展の関連企画として催された。新国の視覚詩と音声詩をそのまま忠実に再現するのではなく、それらをベースにしながらも、積極的に読み替え、エレクトロニクスを多用しながら、詩と音楽のあいだを切り開こうとした。そのため、新国の音読といえば、囁くようなウィスパーヴォイスと、耽美的かつエロティックな声質が特徴的だが、足立は声の抑揚からスピードの高低、ヴォリュームの大小まで大胆にメリハリを利かせ、新国の詩の攻撃的・暴力的な一面を引き出そうとしていたようだ。新国の代表作「雨」(1966)では、雨の中の点点をいちいち一つずつ音読して、「え、あれを全部読むつもり?」と観客を一時的に不安にさせたが、中盤になっておもむろにシャツを脱ぎ捨て、白いTシャツの正面にプリントされた「雨」の文字を指差しながら「あめ」と口にして、観客を唸らせた。
2009/06/22(月)(福住廉)